【風まかせ文芸部】真っ白キャンバス|900字
「えっちゃん、キャンバス真っ白!?なんも描いてないやん。提出明日よ?」
同じ部活のみかが心配し、えちかを覗き込む。
「じ・つ・は、これ仕上がっとるんよ。」
「え?……なんも描いとらんやん?」
「ちっちっち。みかぴー甘か〜。」
えちかは真っ白に指を差す。
「《何も描いていない》こそ美しい。今回はこのテーマで出すっちゃん。」
「…間に合わんやったけん、苦し紛れとか?」
「ちがーう。みかぴー分かっとらね〜。」
また変なこと言ってと思い、はぁ〜とみかは溜め息をつく。
得意げにえちかは続ける。
「タイトルは《美しいもの》。このタイトルでほぼ決まりやけど、見た人は「え…どこに美しいもの?」とか、「なんが描いとるん?」って皆探してる間に、絶対思い思いの美しいを頭に浮かべる。それが「絵」になるってこと!」
みかは、えちかを覗きつぶやく。
「大丈夫?」
「なんが?」
「頭打ったとか…。宇宙人に攫われたとか。」
「なんなーん!私やし。えちかちゃんで〜す。宇宙人に攫われた話は、何話か前にあったけどね。」
「あとさ、根本問題…」
ガラッと戸が開いた。
「おーお前ら。出来たか〜?」
顧問の富田先生。生徒の間では密かにトミーと呼ばれる。だがバレている。
「せんせー、えっちゃんのテーマがでかいんです。」
「ふんふん、なるほど…って。お前らな、今回のお題は『音のするもの』だぞ。」
「お前ら?私まで怒られるん?」
「静寂があるから音が際立つ、ってね。」
えちかはえへへと言う。
「えちか、さっき《美しいもの》って別んことば言いよったろーが。まーたお前、色々考えとる途中で『良い事思いついた!』って、本来のお題を忘れてから突き進んだんやろうもん?」
えちかは再び、えへへと言う。
「毎度楽しんで自由発想するんはよかけど、音のするもんで、明後日までには描いてこいよ〜。」
先生はえちかの頭をぐりっと撫でて、他の作品を見て回る。
「えっちゃん、明後日までに描けるん?」
「んー。まっ、頑張る。」
次の日、えちかが仕上げてきたのは白紙のキャンバス…。
かと思いきや、白紙のキャンバスに白い絵の具でちらちら降る雪を描いていた。
タイトル《しんしんの音》
白は譲れなかったんだなと、みかが頷いた。
900文字
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風まかせ文芸部に参加させていただきました!
2回目の投稿です。
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