【せりふ三題噺】どこまで本当だと思う?|963字
照明の下で鍋の湯気が上がる。
鍋のそばには熱の上がったひとりと、熱の冷めたひとりがいた。
″しょう″という一人の男。
彼はどうも掴みどころがない。
何を考えているか、彼の何が真実なのか誰にも分からない。
でも何故か、女はこの男を追いたくなる。
可愛らしく、憎たらしく、危うさがある。
悔しいが私もその一人だ。
「しょうくん、ちゃんと言って。」
「何が?」
「だから、あの人は職場の人って言ってたけど、説明が曖昧。本当のこと言って。」
「…どこまで本当だと思う?」
優しくて、少し冷たい言い方。
ずるい…。
それだから離れられなくなる。
顔をしかめた私に、少し目元を緩ます。
「なんてね、冗談だって。あの人は本当に職場の人だよ。でもいいんだよ、君がそれで納得しないなら無理しなくても。それは前から言ってるし。」
ずるい。
私がもういいと言えば、恐らくその場で幕が降りる。幕のロープを握るのは私だが、幕が降りなくても終わらせてしまえるのは彼だ。
でも私はこの男が好き。
どうしたら私だけに、心ごと全てを向けてくれるのだろう。彼の心が欲しい。
繋ぎ止めているものが何かが分からない。
そして、いつも綱を渡ってるのは私だけだ。
私が息を堪えていると、彼が言った。
「ひとつアドバイスを言おうか?」
え、アドバイス?
彼は内側を見せることはあまりない。
とても興味を惹かれた。
「追わないことだよ。ほら、つるんとした肉団子。必死に掴もうとすると鬼ごっこのように逃げて捕まえられない。そんなもんさ。」
生姜と蓮根を入れて欲しい。
そう言われ、好かれたい一心で不慣れな料理と肉団子を必死に仕上げたことを思い出した。
「…じゃあ、優しく捕まえればいいの?」
私の問いに、彼は「んー」と唸った。
「優しすぎても掴めないよね?」
「じゃあどうすればいいの?分からないよ。」
私は口を尖らせる。
「そうだなー。大きめなお玉でゆっくりと優しくすくうことかな。」
そういうと彼は、頃合いのよい白菜をぽん酢につけ頬張る。
大きめなお玉ーーか。
これ以上大きくしないとダメなのかな。
合間に彼の携帯が光った。
胸がピリッとした。
鍋の具材はそれぞれ良いところを出し合い、温かい一つの鍋を作り出している。
それなのに、私たちはいつまでも上手く交わらず、鍋からだだ暖を取っているかのよう。
彼が携帯を持つ。
私はお玉を持って掬うが、なぜか白菜ばかり。
963文字
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今回は、はらとけいさんのお題に参加させていただきましたー・:*+。
今回で2回目です!
今週のお題
■せりふ
「どこまで本当だと思う?」
■三題
・アドバイス
・鬼ごっこ
・白菜
一回くらいずるい人になってみたいです。
でもなれないから、心境がうまく書けたか分からないんですよねー。うむー
ただ、相手に苦しい思いをさせるなら、なりたくないかもって思ったりもします🧐
誰かずるい人、評価してください!
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