異世界ミートリア 【第5話】⑨ニクの呪文と、はじまりの光
【前回のあらすじ】
肉神モツによって創られた国、異世界ミートリア。魔王ムダニクスによって王国中の肉が封印され、人々の笑顔は失われてしまった。肉と笑顔を取り戻すため立ち上がったのは、救国パーティー《タカーズ》。
「ひとりで背負わないでください」というタカーズの言葉に、肉神モツはふわりと降りてきた。
もう、ひとりで世界を見守る神ではなく、みんなと共に生きる神として。
王国に笑い声が戻り始め、肉神モツはふるふると楽しそうに揺れていました。
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第5話
⑨ニクの呪文と、はじまりの光
パンツの妖精のように小さくなった肉神モツが、ふわりと浮かんでいます。
世界を終わらせようとしていた神様には、
とても見えませんでした。

肉神モツは、
どこか照れくさそうに、みんなを見つめます。
そして、ぽつりと言いました。
「……ニク、ジュウハチ」
通りが、ぴたりと静まり返りました。

「え、……九九?」
右近さんが、
少しだけ考えるように目を細めました。
「おそらくですが、仲間になり……さっそく、ユーモアを出されたのではないかと」
「神様のユーモア、わかりにくいよ!」
まきマネが叫んだ、その瞬間。
肉神モツは、小さな手を空へ向け
もう一度、今度は、はっきりといいました。
「ニク、18!」
その瞬間、
黄金色の光の粒が、ふわっと放たれました。
右近さんも思わず手をかざします。

光は商店通りを抜け、
屋根を越え、王国中へ広がっていきます。
遠くの市場で、
閉ざされていた倉庫の扉が、きいっと開き、
空っぽだった肉屋の木箱が、ことんと音を立てました。

みーちゃんPが、双眼鏡で通りの向こうを見渡したあと、
嬉しそうに振り返りました。
「王国に、どんどん肉が戻ってる!!」

たかっち社長も、嬉しそうにうなずきます。
「ユーモアと見せかけた、
肉解放の呪文でしたね。
間違ったものを解放しなくて良かったです」
「わかりにくい!って言ってごめんなさい」
まきマネは、
ニクの妖精モツ様に謝りました。
「おおぉーー!……肉が戻ったーー!!」
ヒロパンダは、鼻をヒクヒクさせました。
けれど、すぐに真剣な顔になります。
「だが、忘れてはならない。ここからが大事だ」

「さすが、肉賢者ね!
ニクの妖精モツ様と、ひろさんがいたら王国は安心ね」
まきマネが、嬉しそうに言います。
その時です。
しんりん商店の奥から、力強い声がしました。
「おーーい!」
みんなが一斉に振り向きました。
「この声っ!TETSUさん!!」
TETSUさんが、目をきらきら輝かせ、
裏食堂から飛び出してきました。

「いったい、どーなってんだ?
厨房に、羊の肉がたくさんあるぞ?!」
TETSUさんの声に、
みんなが顔を見合わせて笑いました。
ヒロパンダは、胸を張ってうなずきます。
「肉友よ!
すべての肉が、解放されたのだ!」
その言葉を聞いたTETSUさんの目が、
ぱあっと輝きました。
「ミートリア王国……肉復活ーー!!」
そして、
しんりんさんのほうへ勢いよく振り返ります。
「マスター!!
ジンギスカンにしましょう!」
しんりんさんは、ふふっと笑いました。
「いいねぇ。
いただく命に感謝をして、作ろうか」

「マスター、感謝の心は当然ですよー!
今日もこの腕で、肉を最高に仕上げます!」
二人のやり取りに
モツ神様も嬉しそうに浮かんでいます。
「今日は焼き方に一切の妥協なしだ!
余すところなく使い切ってくれ」

「あったりまえよー!
骨も煮込んで、スープも作るぞー!」
「……もうこれは宴の流れだね」

みーちゃんPとまきマネが言うと、
たかっち社長が、まじめな顔で言いました。
「肉と笑いが戻ったなら、
次に必要なのは、宴とパンツですね」
けれど
まきマネは、すかさず首を横に振ります。

「今日は脱がなくてもいいかな。
社長、ギャップも大切よ??」
まきマネは、
宴でのパンイチをしっかり回避しました。
しんりんさんが、灯ちゃんへ声をかけます。
「灯ちゃん、今夜は忙しくなるよー」
「はいっ!」

灯ちゃんが、嬉しそうに返事をすると、
チャラ兄も張り切って手を上げました。
「灯ちゃんのためなら、手伝います!」
チャラ兄は、にやっと笑い、
灯ちゃんに向かってウィンクしました。
「灯ちゃん、ファンサやでぇ」

「チャラ兄さんのほうが、灯ちゃんファンなんだよね?」
みーちゃんPがすかさず言うと、
通りに、また大きな笑いが広がりました。
まきマネは、
ヒトちゃんをこっそり呼びました。
「ヒトちゃん、お願いがあるの」
ヒトちゃんは、こくんとうなずきます。
「……うん!まかせてください」
ヒトちゃんが空を見上げて手招きすると、
フクロウが飛んできてくれました。

「フクロウさん。みんなに伝えてほしいの」
まきマネは、ノートに挟んでいた小さなメモに、宴のお知らせを書きました。

ヒトちゃんが、そのメモをフクロウに渡します。
「これなら、声がわからない人にも届くね」
ホゥ。
フクロウの声は、通りにやさしく響き、夕暮れの南の空へ飛び立っていきました。

しんりん商店の奥では、
もう宴の準備が始まっています。
TETSUさんの声。
灯ちゃんの足音。
チャラ兄の軽い声。
しんりんさんの笑い声。
ヒロパンダの真剣な肉語り。
その隣には、
小さなニクの妖精になった肉神モツが浮かんでいます。

肉が戻ったことを、ただ喜ぶだけではありません。
いただく命に、ありがとうを伝えるために。
いろいろな音が混ざり合って、
王国は少しずつにぎやかになっていきました。
たかっち社長と、みーちゃんP、まきマネも、
広場へ続く道を歩きながら、人々を見渡しました。

怖いと泣いていた人も。
肉を待っていた人も。
言葉を出せなかった人も。
今は、みんなが笑っています。
たかっち社長は、
手のひらに小さなパンツの妖精を乗せて、静かに言いました。
「感謝。それを忘れない世界にしましょう」

パンツの妖精は、うれしそうにくるりと回ります。
みーちゃんPは、
双眼鏡をそっと握りしめました。
「……見つけた」
「なにを?」
みーちゃんPは、広場を見つめたまま、にっこり笑いました。
「ミートリア王国の、いいところ」
まきマネは、少しだけ目を丸くしました。
みーちゃんPは続けます。
「ここは、だれでも仲間になれる。
それに、笑いあうことができる世界」

まきマネは、うなずきました。
「うん。どこにいても、みんな仲間だね。
ワケアイ村も、眠れない森も、MTLandも。
宿屋も、市場も、商店通りも。
どこに行っても仲間がいるって、嬉しい!!」
まきマネは、ノートを開きました。

『ミートリア王国のいいところ。
だれでも仲間になれること。
どこにいても、誰かとつながっていること。
感謝と笑いであふれた、楽しい世界!!』
まきマネは、
最後の一行を、ていねいに書き足しました。
――異世界ミートリア、記録完了。

異世界ミートリアの世界を創った肉神モツは、
もう、ひとりで世界を見下ろす神ではありません。
たまには、
ムダニクスの姿になることもあるかもしれません。
けれど、
その姿も、なかったことにはしません。
恐れも。
悲しみも。
願いも。
ぜんぶ抱えたまま、
ミートリア王国は続いていきます。
ここは、
どんな想いも受け止める世界。
そして、
だれでも仲間になれる肉と感謝、笑いがたえない世界です。
広場に、優しいあたたかな風が吹きました。

✨第5話 おわり✨



フクロウさん!ありがとう☺️
みんな、今夜、王国の広場でまってるね!!
📋️まきマネの覚書
5話⑨:2,402字
現在の物語:59,187字
📝〆切は7月8日⏰️

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