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異世界ミートリア 【第4話】②ほどける言葉と、動かない石の蓋




【前回のあらすじ】

肉神モツによって創られた国、異世界ミートリア。魔王ムダニクスによって王国中の肉が封印され、人々の笑顔は失われてしまった。肉と笑顔を取り戻すため立ち上がったのは、救国パーティー《タカーズ》。

ヒトちゃんに導かれたタカーズが、眠れない森の奥の丸太小屋「コトノハ」を訪ねた。そこにいたのは、右近尊次郎。
小屋には言葉が出てこない人々が集まっており、森鹿の干し肉を守る石の蓋には、ムダニクスの黒いもやがまとわりついていた。

「言葉になれなかった想いの重さが、この蓋を重くしている」

右近さんが言葉をほどく間に、
タカーズは石の蓋を開ける。
ふたつの任務が、同時に始まった。

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第4話②
ほどける言葉と、動かない石の蓋



そのころ。


ミートリア王国の広場に、
一羽のダチョウが、すごい勢いで走り込んできました。

その背中には、
もんやーみがしっかりとつかまっています。


「タカーズー! 来たよー!」

もんやーみの声が、広場に響きました。



けれど、そこにタカーズの姿はありません。



広場にいたのは、
人々の様子を見守るうめこさんと、
温かい生姜湯を飲んでいるもちちゃんでした。

「あれ? みんなは?」

もんやーみが首をかしげます。


ダチョウも、
きょろきょろとあたりを見回しました。

「クワッ?」


うめこさんは、
落ち着いた声で言います。

「タカーズの4人は、
王国のはずれにある眠れない森へ向かいましたよ」

「眠れない森……?」

もちちゃんが、小さくうなずきました。

「森には、眠れない人たちがいるみたい。
ヒトちゃんが、あたたかいお粥を食べさせてあげたいって言ってた」

「でも、森にはお米がないみたいなの」


うめこさんも、静かにうなずきます。

「ええ。森鹿の干し肉はあるそうですが…」


その言葉を聞いた瞬間、
もんやーみはダチョウを見ました。


ダチョウも、
力強くうなずいたように見えます。

「ワケアイ村には、みんなで分け合うって決めた食べものがある。
お米だって、きっと少しなら分けてもらえる」


そのとき、広場の空でフクロウが鳴きました。

「ホゥ」

もんやーみは、ぎゅっと拳を握ります。

うめこさんは、うふふと微笑みました。

「お願いします。眠れない森の人たちのために」


「行こう、相棒!」

ダチョウが、くちばしを上げます。



「待って」

そのとき、
もちちゃんが包みを差し出しました。

「これ、生姜。お粥に少し入れたら、
体がぽかぽかすると思うの」


もんやーみは、その包みを大切そうに受け取ります。

「うん。預かっておくね」


ダチョウが、くちばしを高く上げました。

「クワァァァッ!!」


ダチョウは勢いよく地面を蹴り、
再びワケアイ村へ向かって走り出しました。


眠れない森へ、お米を届けるために。




一方、眠れない森の小さな丸太小屋「コトノハ」では――。

静かな時間が流れていました。


小屋の中では、右近さんが、
言葉になれない想いを抱えた人たちのそばに座っています。

ヒトちゃんは、その少し後ろで、
じっと耳を澄ませていました。

耳に届くのは、森の葉の音。

さらさら。

ざわざわ。

でも、その中にまぎれている小さな気配を、
ヒトちゃんは見逃しません。


「……右近さん」


ヒトちゃんが、小さく呼びました。


右近さんは、静かにうなずきます。


うつむいたまま座っている男の人のそばへ、
右近さんはゆっくりと近づきました。

男の人の手元には、
使い込まれた小さなノートがあります。

言葉を書きためてきたような、そんなノートです。

「声に出さなくても、大丈夫です」


右近さんの声は、
森の奥に落ちる雫のように静かでした。


男の人は何も言いません。

けれど、手元のノートをぎゅっと握りました。


ヒトちゃんの耳が、ぴくりと動きます。

「……苦しいって、感じる」


右近さんは、男の人の方を見ました。

「違っていたら、首を横に振ってください」


男の人は、しばらく黙っていました。


やがて、ほんの少しだけ頷き、ぽつりと言います。

「……苦しい」

その一言がこぼれた瞬間、
小屋の床を漂っていた黒いもやに、
小さな隙間が生まれました。

男の人は、ノートを見つめたまま続けます。

「言葉は……力になる。
誰かをしあわせにすることもできる。
けれど、誰かを傷つけることもできる」

右近さんは、やさしく寄り添いました。

「言葉を大切にしてきたからこそ、苦しくなったのですね」


男の人は、もう一度、ほんの少しだけうなずきました。



同時刻、小屋の裏では、
タカーズが巨木の洞の前に立っていました。


石の蓋にまとわりついていた黒いもやが、
ほんの一瞬だけゆるみます。


「今だ!」

ヒロパンダが叫びました。

たかっち社長とヒロパンダは、
同時に石の蓋に手をかけます。

「ぬおおおお!」

「ほぅ……少し、動きますね」

ぎ……。

石の蓋が、ほんのわずかに音を立てました。


けれど、次の瞬間。

黒いもやがまた石の蓋にまとわりつき、
重さを取り戻してしまいます。

「くっ……また重くなった!」

ヒロパンダが
悔しそうに歯を食いしばりました。

『言っても、また苦しくなるだけ…
…しまっておけばよい……』


まきマネは、石の蓋を見つめます。

「右近さんが言ってたとおりね。
小屋の中で想いが言葉になる瞬間だけ、もやが薄くなるってことね」 

みーちゃんPは、双眼鏡を握りしめたまま、
静かにうなずきました。

「うん。そうみたい」


小屋の中で、言葉がひとつほどけるたびに。
小屋の裏で、石の蓋のもやも少しだけ薄くなる。

ヒロパンダが、ぐぬぬとうなります。

「あと少しだったのに……!」


たかっち社長は、
石の蓋から手を離し、静かに息を吐きました。

「言葉がほどけるのを、待つしかないですね」

森鹿の干し肉は、まだ取り出せません。




小屋の中では、右近さんとヒトちゃんが、
次の言葉を静かに待っています。

眠れない森の任務は、まだ始まったばかりです。


✨第4話③へつづく✨


現在の物語:18,277字

📋️まきマネの覚書

4話②:2,009字
現在の物語:20,286字

創作大賞 エンタメ原作部門
〆切まであと⏰20日!


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