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私の現在地に輪郭を与えてくれた3冊

京都暮らしの編集室 江角悠子さんのオンラインサロン企画
noteチャレンジに参加しています。
4月のテーマは
【本】私という人間を定義した3冊。
今の自分の価値観の土台になっている本。
2026年度のはじまりに、自分の現在地を確認する。

毎月、テーマに沿って書いていきます。ここから↓

年間150~200冊くらいは本を読んでいる。
推理小説、自己啓発系、哲学、翻訳もの、古典文学と、その時々によってはまるものは変化する。
そんな乱読の私が、選んだ3冊はこちら。


この3冊、一見すると何の関連もないように思える。
やくざと社会学と生活エッセイ
不思議な組み合わせのようにも思えるのだが、
なぜこの3冊なのか、よく考えると見えてきたことがある。

まずは、1冊ずつ、本の魅力を紹介しよう。

1、虎狼の血 (柚月裕子著)

 この作品は、映画化された。役所広司さん、松坂桃李さん等人気俳優がずらり勢ぞろいするので、ご存じの方も多いと思う。
 物語は、広島の架空の都市「呉原市」を舞台に、暴力団と警察の間で繰り広げられる抗争を描いている。主人公の日岡秀一(松坂桃李)は、呉原東署の暴力団係に配属された新米刑事。彼は、強引な捜査を行う敏腕刑事・大上章吾(役所広司)の下で働くことになる。大上の暴力的な捜査方法に疑問を持ちながらも、彼の捜査に協力する中で、次第に絆を深めていく。
 表向きはやくざと警察の攻防のようで、全編に流れるのは、暴力と忠誠、裏切りや正義というテーマが至る所にちりばめられ、登場人物たちの葛藤が描かれていると思う。

 私は、この作品に限らず、やくざものが好きらしい。
なぜ、人はやくざになるのだろう。最近では、反社という言い方もするように、人の道からはずれている生き方と言ってもいいだろう。
だが、そこにあるのは、幼少期の虐待や恵まれない家庭環境に端を発していることが多いと思う。自分が望んだわけではないのに、必死で生き方を模索する内にやくざになったというところだろうか。誰からも必要とされない育ち方をした人が、やくざという組織の中では受け入れてもらえる。過酷な環境の中で、必死で生きる道を探し、たどり着いただけなのかもしれない。

 私が強く惹かれるのは、
「望んだわけではないのに、なぜかこうなってしまう」
という抗えない運命の気配なのかもしれない。

2、断片的なものの社会学 (岸政彦著)

がらりと空気が変わり、こちらは社会学の世界。
この本は、無印良品の書籍コーナーで出会った。無印の選書は好みだ。
この本を読んで、「語り」「生活史」ということを初めて知った。

社会学者、岸政彦氏のエッセイ。
路上のギター弾きや風俗嬢、元ヤクザなど、さまざまな人の語りを通して、「解釈しきれない出来事」に触れていく。
どの人生も、どこかで道を選んできたはずなのに、その積み重ねが「なぜかこうなっている」としか言いようのない形をしている。
その感覚は、他人事ではないものとして、静かにこちら側へにじんでくる。

人生は常に「断片」である。
断片を繋げて物語にしたり、解釈や分析をすることを著者は嫌う。
人が自分の人生を「語る」と、どれも断片的で、どこかつかみどころがない。
けれど、その「わからなさ」こそが、人の生の輪郭なのかもしれない。

又、この「人の人生のわからなさ」に通じることとして、以下の箇所が妙に心に響いた。

不思議なことにこの社会では、ひとを尊重することと、ひとと距離を置くということが一緒になっています。だれか他の人を大切にしようと思った時に、私たちはまず何をするかというと、そっとしておく、ほっておく、距離をとるということをしてしまいます。このことはとても奇妙なことです。ひとを理解することも自分が理解されることもあきらめる、ということがお互いを尊重することであるかのように言われているのです。

『断片的なものの社会学』

3、家事か地獄か (稲垣えみこ著)

アフロヘアの稲垣えみこさんによるエッセイ。
電気や消費に頼らない暮らしを実践し、
家事を極限まで引き受けるという方法で、「自分で生きる」ということを徹底的に考え抜いた一冊だ。
便利さや効率に支えられた暮らしの中で、私たちは知らず知らずのうちに多くを見失ってきたのかもしれない。
けれど著者は、あえて便利な生活の恩恵を手放し、自分の手で生活を選び直していく。冷蔵庫も洗濯機も電子レンジもない暮らしの中で、著者は豊かな自分時間を過ごしている。

その姿は、「どう生きるか」という問いを、静かにこちらへ差し返してくるかのようだ。
著者の質素で豊かな食事内容も、心惹かれる。
日常の暮らしの内にある一コマ一コマが、
何も背負わなくても、何者かにならなくても、幸せはここにあると気付かせてくれる。

ここで良いのだ、自分は自分で良いのだ、自分はすでに全てを手に入れているのだと思うことができたなら。それだけで、人生はまちがいなく一変する。有り余る時間とエネルギーを使って、本当にやりたいことをどこまでもすることができる。

『家事か地獄か』

まとめ

この3冊を選ぶのに、本棚を一通り眺めまわした。
気になるものを3冊ピックアップしたが、なぜこの3冊だったのかということが今腑に落ちた。

虎狼の血・・抗えない人生の流れ
断片的なものの社会学・・人の人生は誰にも理解されずに、ただそこにあるということ
家事か地獄か・・人生は選び取るものだということ

私は、今年還暦を迎える。
振り返れば、多くのことを背負いすぎた人生だったと思う。
抗えない人生の流れに、なすすべもなく飲まれてきた。
操縦不可能の小舟に乗って、ただ流されてきたような時間だった。

けれど今、気づけば水面は静かで、手の中にはオールがある。
小舟はずいぶん古びてしまったけれど、まだ進むことはできそうだ。

しっかりとオールを握り、自分の流れをつくっていく。
私は、私の人生の断片を抱きしめながら、進んでいく。

この3冊は、私の中にあった漠然とした今の思いに輪郭を与えてくれたと思う。




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