「社員みたいですね」と言われるコンサルになった(独立系中小企業診断士の歩み)
こんにちは。
中小企業診断士の内海飛鳥です。
独立してしばらく経った頃から、クライアント先でこんなことを言われるようになりました。
「内海さんって、もう社員みたいですね」
最初に言われた時は、純粋に嬉しかったです。
「ああ、この会社の人たちが、自分に心を開いてくれたんだな」
と思ったからです。
外部のコンサルタントではなく、“同じ船に乗っている仲間”として見てもらえている感覚がありました。
今回は、自分がなぜ「社員みたいなコンサル」になっていったのか、そして、その支援スタイルの良い部分と難しさについて書いてみようと思います。
現場に入り込まないと、本音は出てこない
自分は昔から、
「良いものは良い。ダメなものはダメ」
と、専門家として伝えることが大事だと思っています。
でも、それを受け入れてもらうためには、前提条件があります。
それが、
「この人には本音を話しても大丈夫」
と思ってもらうことです。
つまり、心理的安全性です。
だから自分は、支援先の現場にかなり入り込みます。
経営者だけではなく、
中間管理職
現場リーダー
若手社員
とも、かなり細かく対話する。
そうしないと、表面的な情報しか出てこないからです。
特に中小企業では、
「会議で言っていること」と「本音」
がズレていることも少なくありません。
だからこそ、自分はまず、
「この人は敵じゃない」
と思ってもらうことを大切にしています。
現場感を無視する怖さを、会社員時代に感じていた
自分が現場の声を重視するのは、リクルート時代の経験も大きいです。
当時、上の役職者ほど、他部署から異動してくるケースが多くありました。
その中で、
「現場からすると、絶対うまくいかない」
と思う戦略変更が行われることもありました。
もちろん、経営視点では合理性があったのかもしれません。
でも、現場を知っている自分からすると、
「いや、その戦い方では無理だろ…」
「そのメッセージの打ち出しはマイナスだろ」
と思うことも多かった。
今でも、
「あの時、自分の考えを採用していた方が、会社として良かったんじゃないか」
と思うことがあります。
だからこそ今は、
「現場感を持っている人たちの意見を拾う」
ことを、かなり大事にしています。
自分は、“1対1”の人間なんだと思う
昔から、自分は1対複数より、1対1の方が得意でした。
相手の表情を見ながら、
話すスピード
例え話
言葉の強さ
を変える。
これは自然にやっていた気がします。
逆に、相手の反応が見えない状態で、一方的に話し続けるのは苦手です。
だから、YouTuber的な発信や、大人数向けセミナーより、
「相手と対話しながら、一緒に整理していく」
方が、自分には合っている。
実際、会社員時代から、相談役になることは多かったです。
今思えば、コンサルというより、カウンセラーや家庭教師に近い立ち位置だったのかもしれません。
入り込みすぎると、“社内の人”になってしまう
ただ、この支援スタイルには難しさもあります。
現場へ入り込みすぎると、外部専門家ではなく、
「完全に社内の人」
扱いされることがあるんです。
一見、良いことのようにも見えます。
でも、実際には、そこから支援の推進力が落ちることがある。
例えば、本来であれば、
「外部の専門家との次回打ち合わせまでに、宿題をやらないと」
という緊張感が、案件を前に進める原動力になります。
でも、距離感が近くなりすぎると、
「まあ内海さんだから大丈夫か」
となってしまう。
経営陣側も、
「任せておけば何とかしてくれるだろう」
という空気になってしまうことがある。
そうなると、自分の中では、
「いや、自分の会社やぞ…」
という感覚になる(笑)。
だから今は、同じ会社への支援は、
「週2以下」
をマイルールにしています。
入り込みすぎない。
でも、離れすぎない。
この距離感は、今でもかなり意識しています。
“ビジネス家庭教師”という感覚
中小企業支援を続ける中で、徐々に、
「自分はビジネス家庭教師みたいなことをしているな」
と思うようになりました。
リクルート時代、自分の周囲では、
「上司は、部下の成長にコミットするもの」
という空気が当たり前にありました。
でも、中小企業へ入ると、状況はかなり違う。
特にプレイングマネージャー層は、実質“スーパー営業”になっていることが多い。
能力の問題というより、
人数不足
育成経験不足
マネジメントを学ぶ時間不足
が大きい。
だから、本当は育成したくても、具体的に何をすればいいのか分からない。
しかも、育成って、
「重要だけど、緊急ではない」
んです。
だから、後回しになる。
そこを、家庭教師みたいに横で伴走しながら、
壁打ちする
整理する
一緒に考える
ことで、マネジメントを少しずつ型化できるんじゃないか。
そんな感覚が生まれていきました。
経営者は、“孤独”を抱えている
経営者って、想像以上に孤独です。
特に業績が悪化すると、
「社員は、自分のことを嫌っているんじゃないか」
という被害妄想に近い状態になることもある。
社員が仲間ではなく、“敵”に見えてしまう。
「自分だけがリスクを取っている」
「なぜ分かってくれないんだ」
そんな感情になる。
もちろん、社員からしたら、
「知らんがな」
なんですが。
でも、経営者側に立つと、その孤独感も理解できる。
一方で、管理職は、孤独というより、
「無力感」
に苦しんでいることが多い気がします。
組織図上は、自分が責任者。
でも実際には、社長の一言で方針が覆る。
社員も、自分を飛び越えて社長へ直接相談する。
特に中小企業は、社長との距離が近いので、こういうことが起こりやすい。
結果として、
「自分って何なんだろう」
という感覚になる。
これは、かなり多くの管理職が抱えている苦しさだと思います。
「止める」を決めるのも、マネジメント
現場社員側で、見落とされがちな苦しさもあります。
それが、
「止めることが決まっていない」
状態です。
中小企業の強みは、スピード感です。
だから、朝令暮改自体は悪いことではない。
問題なのは、
「新しいことを始める時に、何を止めていいのかが決まっていない」
ことです。
経営者や管理職は、
「現場でうまく優先順位つけてやってよ」
と思いがちです。
でも、現場からすると怖い。
止めた結果、後から問題が起きた時に、
「なんでやらなかったんだ」
と言われるからです。
だから本来は、
「新しい仕事を増やすなら、止める仕事も決める」
ところまでが、上司の役割なんだと思っています。
AIでは、“思い出”は作れない
最近、AIについて聞かれることも増えました。
自分自身も、日常的にAIを使っています。
正直、提案内容の“正しさ”だけで言えば、AIはすでに多くのコンサルを超え始めていると思います。
でも、それでも、人間のコンサルが不要になるとは思っていません。
なぜか。
それは、
「人は、誰とやったかを覚えている」
からです。
実際、同じ提案をしているのに、
社員が言うと通らない
コンサルが言うと通る
みたいな場面は、珍しくありません。
もちろん、権威性もあると思います。
でも、それだけではない。
結局、
「この人に言われたからやる」
という、非科学的な感情が、人を動かしている。
そして、多くの経営者は、
「好きな人たちと、仕事を通じて思い出を作りたい」
という感覚を、どこかで持っている気がします。
AIとの対話は、便利です。
でも、思い出には残りにくい。
残るのは、
喧々諤々議論したこと
一緒に悩んだこと
改善を積み上げた時間
なんじゃないかな、と思っています。
今振り返ると、自分の支援スタイルを一言で表すなら、
「主役にならない、徹底した伴走型支援」
だと思っています。
自分が前に出るのではなく、
組織が自走できる状態を作る。
それが、今の自分が一番大事にしていることです。
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