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スーパーの2階

西友が売却されるらしい。
そういえば、西友ネットスーパーも、去年、楽天マートになった。
「スーパーマーケットの配達」から「通販サイトの配達」になったことで、冷凍以外の総菜やお弁当類がメニューからほぼ消えた。
体調や天候の良くないとき、届いてすぐに食べられる総菜類に、私はとても助けられていた。

近くのコンビニは、店主夫婦が高齢のため撤退してしまった。
そして、次に近いコンビニは、私が事故にあった横断歩道を渡った先にあって、トラウマのためにそこが渡れないときてる。

イトーヨーカドーも次々と店舗を閉鎖している。
ヨーカドーのネットスーパーは開設当時から使っており、こちらも総菜類はもちろんのこと、PB商品にもお気に入りが多かったので残念でならない。
onigoが一部のヨーカドー商品を扱っていて総菜類もあるのだが、送料・手数料が高いので利用する気にならない。

もう昔ながらの総合スーパーは時代に合わないということらしいが、そもそも時代に乗り遅れがちの私にとっては打撃である。

昔は、食料品や日用品だけでなく、衣類もこれらの総合スーパーで買った。
子供時代「スーパーの2階」は私のお楽しみの場所で、買い物に行く母に「2階行く?」としつこく尋ねたのは「2階行きたい」というアピールにほかならない。

デパートも好きだったが、こちらは見るだけで買うことははなから勘定に入っていない。
でも、スーパーの2階なら買える。
買えるか買えないかの前提が違うだけで、見方も楽しさも全然異なる。
実際には買ってもらうことはあまりなかったけれども。

いつの頃からか、スーパーの上階にも点々とテナントが入るようになった。
そのころから、私の足は途絶える。

小さな飲食店はいいが、小さな小売店は苦手である。
特に服。
入るのに勇気がいる。
ふらっと冷やかしにくい。
お店の人に「どういったものをお探しですか?」などと言われると、心の中では「見ているだけです」と浮かんでいるのだが、声になるまえに一目散に逃げ出す。
反射的に体がそう反応してしまうのだ。

で、もうすこし一人で静かに見せてもらっていたら買ったのにぃと惜しみ、あの店員は店の売上を減少させている、クビにしろ!と腹を立てる。
たとえ、声をかけてこなくても、狭い空間でお店の人の姿が視界に入ると、その視線が私に注がれている気がしてならない。
そこに「圧」を感じてしまう。
耐えられない。
逃げたい。

ブランドというものにまったく興味のない私は、広いフロアにブラウスならブラウス、スカートならスカートが、ずらっと並んでいるのが好きだ。
自分でデザインや色を見て、値段を見て、サイズを探していく。

試着も、できれば声をかけずに、試着の箱に自由に出入りできるのがいい。
試着の許可を取らねばならないところだと、私が試着していることはお店にわかっているから、暗黙のうちに「で、買うのか、買わんのか、さっさと決めぃ!」と責め立てられている気になってしまう。

脱いでいる途中に「いかがでしたか?」などと箱の外から声をかけられると、瞬時に決められないことに罪悪感を感じる。
そして、「まだ着替え終わってないんかい、遅っそい奴だなぁ」と叱られているような、嘲笑われているような気もして、「ほかのも試してみたい」気持ちなど吹っ飛んでしまい、即座に店から遠ざかりたくなる。

マーケティングの専門家?有識者?が「総合スーパーの時代の終焉」と書いていたけれど、私はスーパーが自前のフロアを減らしてテナントばかりにしてしまったことで、自らこれを早めたと思っている。
客が減ったからテナントにしていったのではなく、テナントにしていったからより多くの客が減ったのだと。

だからここ十何年は、ユニクロとかしまむらとか、広いフロアに商品がずらっとしたところでしか買っていない。
いちいち、店員さんが寄ってくるところは行く気にならない。
新しい服を選んだり買ったりする楽しさより、ストレスのほうが大きいからだ。

アドバイスは要らない。
自分が訊くより先に声をかけられたくない。
だから、ネットでも追いかけてくる広告が大嫌い。
私が求める前に広告宣伝されると、嫌悪感が先に立って、ちょっとあった興味もゼロになってしまうのよな。

学生時代、いくつものバイトを掛け持ちしていて、そのひとつが沿線にあるローカルデパートだった。
本来はバックヤードで売上と在庫の管理をする業務だったが、あるとき急に売り場の補助を依頼された。
制服売り場。
このとき、デパートの女子更衣室と休憩室のおどろおどろしさを初めて知った。

ほかに受付のバイトもしていたので、接客はさほど苦ではない。
しかし、1日終えて、ベテランの店員さんから注意されてしまった。
「もっと、積極的に声をかけて」

声をかけることはできる。
できるがしたくない。
自分が客ならうっとおしいだろうと想像してしまう。

それでしばらく様子を見て、お客様が求めているふうなら近くに行って、目を合わせてみるようにした。
「あのぅ~」と問われやすい雰囲気を出したわけだ。

しかし、ベテラン店員さんは「先に声をかけて」としつこい。
それって、ただ自分が仕事をしているっぽく見せてるだけじゃん。
先に声をかけることで実際に売上が上がったデータとかあるんかい、と思った。
それは言わずに、一応「はい」「はい」と答えて、そのうち元の業務に戻れた。
入学準備期が終わったからということだが、単に「あの子は消極的なので不向き」と判断されて外されただけかもしれない。

西友がどこに売却されても、従前のような総合スーパーの形で再生することはないと識者は書いている。
食料品や日用品の売り場だけ残ればまあいいかとは思う。

仕事の種類や有無によるけれども、服はますます買わなくなるだろう。
年金や蓄えが心もとない私にとっては、お金を使う機会が減って、まあ悪くはないかもしれないが、どこか淋しい。