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1.80%の個人向け国債と海外高金利定期、7項目で比べた結論【50代夫婦・6000万円がFPに相談】

記事要約

2026年8月3日、メガバンクの普通預金が0.4%に。個人向け国債(変動10年)も年1.80%まで上がり、「日本にも金利が戻った」と言われます。ではもう海外を見る必要はないのか。米ドル圏の政策金利は3.50〜3.75%。利回り・為替・手数料・手間・期間・保護制度・心理的ハードルの7項目で正直に比べ、「条件がそろえば海外定期、そろわないなら国債でいい」という判断基準を、FPとの対談形式で整理しました。

登場人物

三宅 誠一(みやけ せいいち)さん/54歳・精密機器メーカー技術部門の管理職。金融資産は約6,200万円。うち円定期3,800万円、普通預金900万円、投資信託・NISAで1,500万円。住宅ローン残1,200万円。大学生と高校生の子ども2人。
三宅 由紀(ゆき)さん/51歳・誠一さんの妻。パート勤務。家計の管理を担当。「海外」という言葉に強い抵抗感を持っている。
FPたいらく/独立系FP。海外口座・通貨分散を専門とする。

※事例は複数の相談内容をもとに再構成した架空の人物です


1.8月3日、普通預金が0.4%に。34年ぶりの金利で本当に安心できたのか

三宅誠一: 先生、ようやく順番が回ってきました。3か月待ちましたよ。

FPたいらく: お待たせしました。今日はちょうどいい日にお越しくださいました。本日8月3日から、メガバンク3行の普通預金金利が0.3%から0.4%に上がっています。三菱UFJと三井住友にとっては、旧行時代の1992年以来、およそ34年ぶりの水準です。

三宅由紀: 34年ぶり。すごいことなんですね。

FPたいらく: 数字だけ見れば劇的です。マイナス金利が解除される前、2024年3月時点の普通預金金利は0.001%でした。そこから約400倍になった計算になります。

三宅誠一: それで相談に来たんです。今まで「日本に置いていても増えない」と言われ続けて、正直、耳にタコができていました。でも金利が戻ったなら、もう無理に海外を考えなくてもいいんじゃないかと。妻もそう言うものですから。

FPたいらく: 至極まっとうな考え方だと思います。実際、日銀の政策金利は今年6月に1.0%まで引き上げられました。約31年ぶりの水準です。7月31日の会合では据え置きでしたが、「金利のある世界」が戻ってきたこと自体は事実です。

ただ、一点だけ先に申し上げておきます。普通預金0.4%というのは、1,000万円を1年間預けて利息が4万円、税金を引くと約3万2,000円です。そこから物価上昇分を差し引くと、手元に残るものは何か。この問いだけは、金利が上がった今こそ立てておく価値があります。

2.年1.80%の個人向け国債は、何が優れていて、何が足りないのか

三宅誠一: 実は、個人向け国債を考えています。変動10年が1.80%になったと聞きました。

FPたいらく: 2026年8月募集分の変動10年は、初回適用利率が年1.80%、税引後で約1.43%です。固定5年が1.95%、固定3年が1.56%。2024年1月時点の変動10年は0.46%でしたから、2年半で約3.9倍になりました。

三宅由紀: それなら十分ではないですか。

FPたいらく: 個人向け国債は、私も条件次第で強くおすすめする商品です。良いところを正確に挙げておきましょう。

まず、発行体が日本国であり、円建ての元本が保証されています。1万円から購入でき、変動10年は半年ごとに利率が見直されるため、今後さらに日本の金利が上がれば自動的についていきます。最低金利は年0.05%が保証されている。手続きは銀行や証券会社で完結し、口座管理手数料もかかりません。利子は20.315%の源泉分離課税で、確定申告も原則不要です。

三宅誠一: ほとんど欠点がないように聞こえますが。

FPたいらく: 商品としての欠点はほとんどありません。私が申し上げたいのは別のことです。個人向け国債の性質は、「円で持ち、円で増やし、円で受け取る」という一点に集約されます。つまり、日本円という通貨の購買力が保たれることを前提にした商品なんです。

三宅誠一: ……その前提が崩れたら、という話ですか。

FPたいらく: そうです。今年7月30日、政府・日銀は推計8兆円規模の円買い介入を行いました。ドル円が163円台まで進んだ局面です。翌31日には米財務省も円買いに動き、日米協調介入という異例の展開になりました。本日は一時155円前半まで戻しています。

ここで見ていただきたいのは、戻ったという結果ではありません。当局が8兆円を投じなければ止まらない水準まで、円は売られていたという事実のほうです。

3.個人向け国債と海外の高金利定期を、7つの項目で並べてみる

三宅誠一: 海外の定期預金と、具体的にどう違うのか教えてください。

FPたいらく: 7つの項目で並べます。良いところも悪いところも、同じ精度で申し上げます。

① 表面利回り 個人向け国債(変動10年)は年1.80%、税引後で約1.43%。一方、米国の政策金利であるFF金利の誘導目標は現在3.50〜3.75%です。米ドル建ての定期預金の水準は、おおむねこの政策金利を軸に決まります。単純な数字の差は約2倍です。

② 通貨 国債は最初から最後まで円のまま。海外定期はドルなどの外貨に替わります。この違いがすべての差の源です。

③ 元本の意味 国債は「円の元本」が保証される。海外定期は「外貨の元本」が確保されるだけで、円換算した金額は為替次第で増えも減りもします。ここを混同したまま始める方が最も多い。

④ 保護制度 国債の裏付けは日本国の信用です。海外の銀行預金に預金保険があるかどうかは、国と銀行によって異なります。「あるはず」ではなく「あるかどうかを確認する」対象です。

⑤ 手数料 国債は購入時の手数料が実質ゼロ。海外定期は、円から外貨に替える為替スプレッド、海外送金手数料、中継銀行手数料、着金手数料と、複数のコストが積み上がります。

⑥ 手間 国債はネットで数分。海外口座は本人確認書類、資金源の説明、英語での書類確認、CRS(共通報告基準)に基づく居住地申告など、相応の工程を踏みます。

⑦ 期間と流動性 変動10年は発行から1年経てば中途換金でき、直前2回分の利子相当額×0.79685が差し引かれるだけです。海外定期は満期前解約でペナルティが発生し、解約してから円に戻して着金するまでに日数がかかります。

三宅由紀: こうして並べると、国債のほうが優れている項目が多いように見えます。

FPたいらく: その通りです。**5項目までは国債の勝ちだと私は思っています。**争点は①と②だけなんです。そして、この2つが資産全体に及ぼす影響が、他の5項目より大きくなる条件がある。それが今日お伝えしたい本題です。

なお、外貨建ての商品は預金以外にも選択肢があり、それぞれ癖があります。保険商品との違いについては、別記事で詳しく解説しています。

▶ 年利3%超の甘い罠?米ドル建て一時払い終身保険を現役FPが徹底解剖

4.手数料と手間は「金額で割る」——1,000万円を境に景色が変わる

三宅誠一: 手数料が高いというのは、どのくらいの話ですか。

FPたいらく: ここが誤解されやすい部分です。海外送金の手数料は、送金額が100万円でも3,000万円でも、金額としてはほとんど変わりません。数千円から1万円台の固定費です。

三宅誠一: ということは。

FPたいらく: 300万円送るなら、その固定費は資金の0.3%前後を占めます。3,000万円なら0.03%台に薄まる。同じ手数料が、金額次第で10倍違う重みになるわけです。

為替スプレッドも同じ構造で見ます。仮に往復で1円のコストがかかるとして、1ドル155円の局面なら往復約0.65%。これを1年で回収するのか、5年かけて回収するのかで、意味がまったく変わります。年2%の金利差があるなら、単純計算で4か月ほどで往復コストを取り返せる計算になります。

三宅由紀: 逆に言えば、少額で、短期で出し入れするなら不利ということですね。

FPたいらく: まさにそうです。100万円を1年だけ、というご相談には、私は海外定期をおすすめしません。手数料と手間に見合わないからです。

そしてここに、この分野で最も皮肉な構造があります。**金額が大きく、置いておける期間が長い方ほど算数の上では有利なのに、その方々ほど「大きな金額を海外に動かす」という心理的な抵抗が強い。**有利な人ほど動けない。私が15年見てきて、これが最も一貫している現象です。

三宅誠一: ……耳が痛いです。まさに私です。

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5.いちばん高い壁は利回りではなく、心理的ハードルだった

三宅由紀: 正直に申し上げますと、私は「海外の口座」と聞くだけで身構えてしまいます。何か後ろ暗いことをしているように思われないでしょうか。

FPたいらく: その感覚を率直におっしゃっていただけるのは、非常に良いことです。そのうえで、事実だけを申し上げます。

現在、日本を含む多くの国はCRSという枠組みで金融口座情報を自動的に交換しています。**海外に口座を持てば、その情報は日本の税務当局に共有される。**つまり「隠す」ことは技術的にできません。

三宅由紀: それは……かえって安心する話でもありますね。

FPたいらく: はい。逆に申し上げると、「知られたくない」という動機で海外口座を考えている方には、私は明確に向いていないと申し上げています。この選択肢は、あくまで通貨を分散するための手段であって、それ以上でも以下でもありません。利子や為替差益は日本で適切に申告する。そこが前提です。

なお、資産を国内に集中させておくことのリスクという観点は、別の角度からも整理しています。
【現役FPが解説】マイナンバー×預金封鎖|富裕層だけが知る資産凍結の回避術

三宅誠一: 相続のときはどうなりますか。子どもたちが困るのではないかと。

FPたいらく: これは正当なご懸念です。海外資産の相続手続きは、国内より時間も手間もかかります。だからこそ、口座の存在、連絡先、必要書類を一覧にして家族と共有しておくことが必須になります。出口の設計まで含めて初めて完成する選択肢だとお考えください。これができないなら、やめておいたほうがいい。

三宅誠一: 先生は、思ったより慎重ですね。もっと勧められるかと思っていました。

FPたいらく: 勧誘は一切しません。合わない方に勧めても、途中で不安になって不利なタイミングで解約されるだけです。それは誰の得にもなりません。

6.【自己判定】海外の高金利定期が向く人・向かない人 10のチェックリスト

FPたいらく: ここまでの内容を、10項目に落とします。ご自身に当てはまるものを数えてみてください。

生活防衛資金(生活費の1年分程度)を、円で別に確保できている
今回動かそうとしている資金は、5年以上使う予定がない
教育費・住宅・親の介護など、3年以内の大きな支出予定と重なっていない
動かす金額が1,000万円以上ある(手数料の比率が薄まる水準)
円換算の残高が一時的に減っても、慌てて解約しない自信がある
資産全体のうち、外貨の比率を「何割まで」と決められる
確定申告を自分で、または税理士に依頼して正しく行える
口座情報や必要書類を、配偶者・子どもと共有する用意がある
「隠す」目的ではなく「分散する」目的だとはっきり言える
満期まで待てる。途中で気が変わって解約する可能性が低い

7個以上に当てはまる方……条件はそろっています。あとは通貨の配分と期間の設計だけです。

4〜6個の方……方向性としては合っています。当てはまらなかった項目が、そのまま準備すべき課題です。多くの場合、1・3・7のいずれかです。

3個以下の方……**今は個人向け国債で十分です。**変動10年の1.80%は、決して見劣りする数字ではありません。無理に海外へ動かすほうがリスクになります。

三宅誠一: 数えてみました。8個です。

三宅由紀: 私は……6個でした。7番と8番が引っかかります。

FPたいらく: ご夫婦で違うのは自然なことです。むしろ、その2つが具体的に見えたことが今日の一番の収穫です。書類の共有と申告体制、この2点を整えれば条件は満たされます。

7.条件がそろえば海外定期。そろわないなら国債でいい

三宅誠一: 結論として、先生はどうお考えですか。

FPたいらく: 私の結論は明快です。**条件がそろうなら、海外銀行の高金利定期は合理的な選択肢です。そして、そろわないなら個人向け国債で十分です。**この2つは矛盾しません。

三宅さんの場合、6,200万円のうち3,800万円が円定期です。ここに個人向け国債を積み増しても、変わるのは利回りだけで、**通貨の構成は1ミリも変わりません。**円100%のままです。

三宅由紀: 円100%……そう言われると、確かに偏っていますね。

FPたいらく: 参考までに、私たちの年金を運用しているGPIFは、資産のおよそ半分を外貨建てで保有しています。国が国民の老後資金を守るときに選んでいる形が、それです。個人だけが円100%でいる必然性は、必ずしもありません。

三宅誠一: 具体的には、どう組み立てればいいですか。

FPたいらく: 三層で考えます。土台は円のまま。生活費の1年分と、3年以内に使う予定のお金です。ここは個人向け国債や円定期が最適です。中核は増やす部分。株式や投資信託がここに入ります。そして保険の層。これが通貨分散です。円という通貨が想定外に弱くなったときに機能する部分で、海外の高金利定期はこの層に収まります。

大事なのは、保険の層に高い利回りを期待しないことです。3%台の金利は目的ではなく、保険料を払わずに保険をかけられる副産物だと考えてください。

三宅誠一: ……その言い方は、今までで一番腑に落ちました。

FPたいらく: 最後に一つだけ。よく「様子を見ます」とおっしゃる方がいます。ただ、円を100%で持ち続けることは、様子見ではありません。「これから円が強くなる」という方向に、資産の全額を賭け続けている状態です。何もしないという選択は存在せず、すでに一つの賭けが成立している。まずそこを認識するところから始めていただければと思います。

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※本記事は2026年8月3日時点の情報に基づいています。金利・為替水準は変動します。個別の商品選択にあたっては最新の条件をご確認ください。

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