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【50代・製造業経営者がFPに相談】長期金利29年ぶり高水準なのに、なぜ円安が止まらないのか?―高市政権「積極財政」が招く"悪い金利上昇"の正体

記事要約

長期金利が一時2.83%と約29年ぶりの高水準に達する一方、円安も162円台まで進行。「金利が上がれば円高」の常識が崩れています。本記事では、製造業を営む50代経営者とFPの対談を通じ、高市政権の積極財政が招く「悪い金利上昇」の構造、住宅ローン・企業借入・国債費・実質賃金への影響を解説。金利上昇の恩恵が家計に届かない理由と、円資産集中を見直す資産防衛の考え方を示します。
https://youtu.be/anG6nys3I68


1.金利は29年ぶりの高さ、なのに円も安い ― いま何が起きているのか

柴田さん:先生、今日はどうしても腑に落ちないことがあって来ました。うちは神奈川で金属加工の会社を経営していて、私自身は56歳、個人の金融資産は5,000万円ほど、ほとんどが円預金です。先日、長期金利が29年ぶりの高さになったというニュースを見ました。金利が上がれば、普通は円高になるはずですよね。ところが為替を見ると、円安がむしろ進んでいる。これはどういうことなんでしょうか。

FP:柴田さんの違和感は、いま日本経済で起きていることの核心を突いています。まず事実関係を整理しましょう。今年7月上旬、長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時2.83%まで上昇しました。1997年以来、およそ29年ぶりの水準です。日銀の政策金利もすでに1.0%まで引き上げられています。

柴田さん:ゼロ金利の時代が長かったことを思えば、隔世の感がありますね。

FP:ええ。ところが同じ時期、ドル円相場は162円台で推移し、年初来の円安値圏にあります。教科書通りなら「金利上昇→円買い→円高」となるはずが、金利上昇と円安が同時に進行している。この組み合わせこそが、今の日本の異常さを示すシグナルなのです。

2.「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」の決定的な違い

柴田さん:金利上昇に「良い」「悪い」があるのですか。

FP:あります。良い金利上昇とは、経済が力強く成長し、企業の資金需要が旺盛になり、その結果として金利が上がるケースです。この場合、金利上昇は好景気の裏返しですから、株も通貨も一緒に買われます。

柴田さん:では悪い金利上昇とは。

FP:経済成長の裏付けがないまま、インフレへの警戒と財政悪化への懸念から国債が売られ、金利が押し上げられるケースです。国債価格の下落と金利上昇は表裏一体ですから、これは端的に言えば「日本国債が売られている」ということ。今回の金利上昇には、原油高によるインフレ圧力に加えて、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」への市場の警戒が色濃く反映されています。

柴田さん:積極財政というと、減税や経済対策で景気を下支えする話ですよね。悪いことばかりではない気もしますが。

FP:政策の是非はここでは論じません。ただ市場の受け止め方は明確です。すでにインフレ率が高い状況で財政支出を拡大すれば、国債の増発懸念とインフレの長期化観測が同時に強まります。食料品の消費税減税をめぐる議論も、財源の裏付けが見えないうちは債券市場の不安材料になります。日銀が国債の買い入れを減らしている局面での増発観測ですから、需給の悪化を先取りして国債が売られる。これが「悪い金利上昇」の構図です。

3.なぜ金利が上がっても円が買われないのか ― 実質金利と財政懸念

柴田さん:それでも金利2.8%といえば立派な水準です。海外の投資家が円を買ってもよさそうなものですが。

FP:鍵は「実質金利」です。名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利で見ると、日本は依然として大幅なマイナス圏にあります。つまり、円でお金を持っていても、物価上昇分を差し引けば実質的に目減りし続けている。投資家が見ているのは名目の2.8%ではなく、この実質のマイナスです。

柴田さん:金利が上がったように見えて、インフレがそれ以上に進んでいるから、円を持つ魅力は増えていない、と。

FP:その通りです。さらに深刻なのは、金利上昇の「理由」です。財政懸念で金利が上がっている国の通貨は、金利が高くても買われません。むしろ「この国は大丈夫か」という疑念が通貨売りを誘発します。金利上昇と通貨安の同時進行は、市場が日本の財政運営に不信任を突きつけ始めている兆候と読むべきです。高市政権の下で日銀審議委員に金融緩和に前向きな人事が続けば、円安圧力はさらに強まるという見方もあります。

4.日本経済への影響 ― 住宅ローン、企業借入、そして国債費30兆円

柴田さん:経営者としては、借入金利の上昇をすでに肌で感じています。取引銀行から、次の借り換えでは金利条件の見直しをと言われました。

FP:中小企業にとって運転資金の調達コスト上昇は死活問題です。長期金利2.7%台という水準は、新規発行国債の表面利率にも反映され、企業向け貸出金利、住宅ローンの固定金利へと順次波及します。変動金利で住宅ローンを組んでいる家庭も、政策金利1.0%時代の返済負担増から逃れられません。

柴田さん:国の財政はどうなるのでしょう。国自体が世界最大級の借金を抱えているわけですよね。

FP:ここが最も重い論点です。財務省は来年度予算で想定金利を引き上げ、国債の利払いなどに充てる国債費は約30兆円と過去最大規模に達する見通しです。税収の相当部分が借金の利払いに消えていく構造が固定化しつつあります。国債費が膨らめば、社会保障や成長投資に回す余力が削られ、いずれ増税か給付削減かという形で国民に跳ね返ります。金利上昇は、国の借金問題を「いつかの話」から「毎年度の予算の話」に変えてしまったのです。

5.働く日本人への影響 ― 賃上げがインフレに追いつかない構造

柴田さん:従業員のことも気がかりです。今年も賃上げはしましたが、正直、原材料コストの上昇分を価格に転嫁しきれず、経営を圧迫しています。

FP:そこに円安が追い打ちをかけます。円安はエネルギーと食料の輸入価格を押し上げ、企業のコストと家計の生活費を同時に直撃します。名目賃金が上がっても、物価上昇がそれを上回れば実質賃金はマイナスです。働く人の立場で言えば「給料は上がったはずなのに、生活は楽にならない」。この感覚の正体が、実質金利と同じくマイナスの実質賃金です。

柴田さん:企業は借入コストと原材料コストの両方が上がり、家計は物価高に賃金が追いつかない。金利上昇の痛みだけが行き渡って、恩恵が見当たらないわけですね。

FP:まさにそれが「悪い金利上昇」の実相です。良い金利上昇なら成長の果実が痛みを相殺しますが、今回はその果実がない。預金金利が多少ついても、インフレと円安による購買力の低下を埋めるにはまったく足りません。

6.「円預金のまま様子見」は中立ではない ― それは円回復への一点賭け

柴田さん:私の個人資産5,000万円は、ほぼ円預金です。正直、「いずれ円高に戻るだろうから、動かず待つのが無難」と考えてきました。

FP:多くの方が同じ判断をされています。しかし、はっきり申し上げます。円預金のまま動かないことは「中立で安全な選択」ではありません。それは「円がこれから回復する」という方向に、資産のすべてを賭けている状態です。

柴田さん:賭けている、という自覚はありませんでした。

FP:構造を見てください。実質金利はマイナス、財政懸念で国債は売られ、政権は積極財政を志向し、日銀は政治との緊張の中で利上げを急げない。円の反転に必要な条件が、ことごとく揃っていない。その状況で資産の100%を円に置くのは、最も分の悪い一点賭けになりかねません。しかも国内の個人投資家の多くが同じ側に立っていますから、逆張りですらないのです。

柴田さん:待つこと自体がリスクを取っている、と考えを改めるべきなんですね。

7.資産防衛の第一歩 ― 土台・コア・保険の三層で考える通貨分散

FP:では何をすべきか。慌てて全額を外貨に替える必要はありません。私がご提案するのは三層構造の考え方です。

第一層は「土台」。生活防衛資金と事業の運転資金です。ここは向こう1〜2年の支出に備える部分ですから、円のまま流動性を確保します。

第二層は「コア」。資産の中核部分です。ここに通貨分散を導入します。米ドルを中心とした外貨建て資産を段階的に組み入れ、円の購買力低下に対する構造的な備えとします。一度に動かすのではなく、時間分散でエントリーするのが原則です。

第三層は「保険」。金(ゴールド)のような、特定の国の信用に依存しない実物資産です。財政懸念が主題となる局面では、通貨そのものへの不信に備える層が意味を持ちます。

柴田さん:土台は円で守り、コアで通貨を分散し、保険で通貨システム自体のリスクに備える。この順番なら、私にも整理できそうです。

FP:大切なのは、金利上昇のニュースを「預金にようやく利息がつく朗報」と読み違えないことです。今回の金利上昇は、日本の財政と通貨に対する市場からの警告です。警告が聞こえているうちに、静かに備えを始める。それが資産防衛の要諦です。29年ぶりの金利水準は、29年ぶりに資産配分を根本から見直すべき時期が来た、という合図でもあるのです。

柴田さん:会社の経営計画と同じですね。悪い兆候が小さいうちに手を打つ。今日から資産の側でも、それを実行します。

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