【FP対談】新NISAを使い切ったら、次はどうする?富裕層が実践する「海外・通貨分散」の設計図
記事要約
新NISAの枠がそろそろ埋まりそう——そんな相談者と、FPの対話を通じて「次の一手」を考えます。世間の答えは「課税口座で同じ投信を続ける」ですが、それだけでは不十分です。NISAの中身は株式に偏り、資産は円と国内に集中しがちだからです。本記事では、非課税枠を埋めた後の設計を、通貨分散と国際分散という視点から、会話形式でわかりやすく解説します。
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新NISAが始まって数年。着実に投資を続けてきた方から、最近こんな相談が増えています。「生涯投資枠の1,800万円が、あと数年で埋まりそうだ。その後は、どうすればいいのだろう」というものです。
今回は、この問いを抱えて相談に訪れた52歳の会社員・Bさんと、FPとのやり取りを通じて、非課税枠を使い切った「次の一手」を一緒に考えていきます。すでにNISAをコツコツ埋めてきた方は、ぜひご自身に重ねながらお読みください。
1.「NISAがそろそろ埋まりそう」——ある相談の始まり
Bさん:制度が始まってから、毎年できるだけ枠を使ってきました。このペースだと、あと2〜3年で1,800万円に届きそうなんです。中身は全世界株とS&P500の投信が中心で、順調に増えてはいるのですが……埋め終わった後、何をすればいいのかが分からなくて。
FP:しっかり活用してこられたのですね。まず前提を確認しておきましょう。新NISAの生涯投資枠は1,800万円、そのうち成長投資枠が1,200万円まで。年間の上限は合計360万円です。ご夫婦それぞれが口座を持てば、世帯で3,600万円まで非課税で運用できます。
Bさん:妻の分も合わせれば、まだ少し余地はある、と。
FP:ええ。ただ、Bさんのように余裕資金がある方の場合、いずれ世帯の枠も埋まります。そのとき問われるのは「枠をどう埋めるか」ではなく、「枠の外側に置くお金を、どんな構造で持つか」です。ここが今日の本題になります。
2.「使い切った後」の一般的な答えと、その物足りなさ
Bさん:ネットで調べると、「使い切った後は課税口座で続ければいい」とよく書かれています。それではダメなのでしょうか。
FP:間違いではありません。一般的に語られる選択肢は三つです。課税口座で投資を続ける、iDeCoなど他の制度を併用する、家族の口座で世帯の非課税枠を広げる。どれも正しい方法です。
Bさん:では、何が物足りないと。
FP:これらはいずれも「限られた資金を、いかに効率よく非課税で運用するか」という発想から出発しています。つまり、資金に制約のある方を前提とした答えなのです。余裕資金が非課税枠を大きく上回る方の場合、課税口座で同じ投信を買い足しても、増えるのは金額だけで、資産の「構造」は変わりません。Bさんのように一定の資産を築いた方に本当に必要なのは、どれだけ増やすか以上に、どう守り、どう分散させるか、という視点なのです。
3.見落とされがちな盲点——「円・国内・株式」への集中
FP:ここで、多くの方が気づいていない盲点をお話しします。NISAを真面目に活用してきた人ほど、実は資産の偏りが強まっている可能性があるのです。
Bさん:偏り、ですか。きちんと分散したつもりでいましたが。
FP:全世界株やS&P500は優れた商品です。ただ、性質を分解すると三つの偏りが見えてきます。一つ目は株式への集中。値動きの大きい株式に資産が寄るため、暴落局面では全体が同時に下げます。二つ目は通貨の偏り。中身は米ドル資産が中心で、円で買っていても、実質はドル資産を大量に抱えている状態です。三つ目は口座と制度の集中。日本の証券会社に資産の大半が置かれています。
Bさん:言われてみれば……全世界株といっても、中身の半分以上はアメリカですね。円で積み立てている感覚だったので、ドルを持っているという意識はありませんでした。
FP:そこが盲点なのです。これらの偏りは、順調に増えているときは気になりません。しかし、円高への反転、株式市場の大幅な調整、あるいは日本固有の制度変化といった局面では、同じ方向に一斉に影響を受けます。非課税枠を埋めるという行為は、この偏りをむしろ強めている場合があるのです。
4.次に考えるべき3つの視点
Bさん:では、埋めた後はどう組み立て直せばいいのでしょう。
FP:三つの視点をお伝えします。一つ目は、口座の視点。課税口座を「NISAの延長」ではなく、資産全体のバランスを整える場として使います。値動きを抑える資産や、通貨を分ける資産を、あえて課税口座側に置くという発想です。
Bさん:NISAと課税口座で、役割を分けるわけですね。
FP:その通りです。二つ目は、通貨の視点。資産をどの通貨で持つかを意識的に設計します。円建てに偏っているなら、ドルなど外貨建ての資産を組み入れて偏りをならす。株式という形だけでなく、外貨建ての預金や債券のように、値動きの性質が異なる形で外貨を持つことも選択肢です。三つ目は、地域と制度の視点。資産を置く場所そのものを分け、特定の国に依存しない構造をつくる。これは富裕層の資産防衛で、古くから重視されてきた考え方です。
Bさん:三つとも、「増やす」ためではなく「偏りをなくす」ための視点なんですね。
FP:よくお気づきです。資産が一定規模を超えた方にとって、この発想の転換こそが次のステージの鍵になります。
5.非課税枠の外側で、余裕資金をどう置くか
Bさん:具体的には、どう配置すればいいのでしょう。
FP:大切なのは、非課税枠の中と外で、資産の役割を分けることです。NISAの内側は、長期で成長を狙う「攻め」の中心に据えます。非課税のメリットは、値上がり益の大きい株式でこそ最大限に活きるからです。ですから、NISAの枠は株式インデックスなどの成長資産に集中させておく。これは理にかなっています。
Bさん:問題は、外側ですね。
FP:その通りです。課税口座に回す余裕資金は、NISAと同じものを買い足すのではなく、NISAで持ちにくい性質の資産を意識的に置く場と考えます。外貨建ての預金や債券のように、株式とは異なる値動きをし、通貨の偏りをならす資産です。こうすると、資産全体が「成長を狙う株式」と「守りと通貨分散を担う資産」の二層構造になり、安定感が格段に増します。
Bさん:なるほど。同じものを増やすのではなく、足りない性質を補う、と。
FP:まさにそれです。さらに余裕があれば、資産を置く地域や管轄を分けることも視野に入ります。ここから先は資産規模や目的で最適解が大きく変わるので、専門家と一緒に設計するのが賢明です。要は、「枠を埋めた次は、同じものを買い増すのではなく、資産の構造を組み替える段階だ」と捉えることです。
6.始める前に、押さえておきたい注意点
Bさん:進める際に、気をつけることは。
FP:三点あります。一つ目は税金。課税口座での運用益や配当には、約20パーセントの税金がかかります。非課税に慣れた方ほど、この差を軽視しがちなので、税引き後で考える習慣が欠かせません。
Bさん:非課税のありがたみに慣れてしまっていました。
FP:二つ目は為替です。外貨建て資産を組み入れる場合、円安が大きく進んだ局面でまとめて買うと、その後の円高で目減りする可能性があります。時期を分けて少しずつ移すことで、この影響をやわらげられます。三つ目は出口。組み入れた資産を、いつ、どの通貨で、どう使うのか。入口だけでなく出口まで描いておくことが、資産設計を成功させる条件です。
7.まとめ——非課税枠の「次」は、資産全体の設計で考える
Bさん:今日で、進むべき方向が見えてきました。
FP:新NISAの1,800万円は、資産形成の強力な土台です。しかし、それを埋めたことはゴールではなく、次のステージの始まりにすぎません。余裕資金のある方にとっての本当の課題は、「同じものをどれだけ買い増すか」ではなく、「資産全体を、通貨・地域・口座の観点からどう組み替えるか」にあります。
Bさん:真面目に埋めてきたからこそ、偏りに気づけたわけですね。
FP:その通りです。大切なのは、目の前の商品を選ぶことではなく、資産全体の設計図を描くこと。どの資金を、どの通貨で、どの場所に、どんな役割で持たせるか。この全体像が定まって初めて、あなたの資産は次の局面にも耐えられる強さを備えます。「非課税枠の次」に迷われたときは、ぜひ一度、資産全体を俯瞰する視点から、専門家とともに設計図を描いてみてください。
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