スクロールのゆくえ
オレはTalesを開き、
『読書傾向からのおすすめ』の一番上の作品をクリックした。
さて、読むぞ〜
スマホ画面を上へ上へと滑らせて、オレは無心に読み始めた。
気がつけば、1時間が経過していた。
目がチカチカする。
一度も改ページが無かったのだ。
オレの読書スピードは普通だと思う。
1分に500文字くらいだろうか。
1時間で3万文字。
オレはスマホで読み始めると、改ページがあるところまで休みなく読み進めることにしている。
例え途中で地震があろうが、読むことをやめたりはしない。
そろそろ改ページを入れてくれないと、休めない。
もうすぐ、
次のエピソード
↓
の文字が現れるはずだ。
そうすれば、クリックすれば良い。
クリックすれば休めるのだから。
電話がかかってきた。
ミユキからだ。
コーヒーショップにいたので、マナーモードに切り替えて音を消した。
留守電に切り替わった。
「ちょっと、待ち合わせ11時の約束だったよね? あと10分待って来なければ帰るから。二度と会うことはないと思うけど、元気でね」
しまった😱
スクロールに気を取られていて、待ち合わせ時間を過ぎていた。

オレはスマホ画面に指を密着させたまま立ち上がり、店を出た。
画面をスクロールし続けなければ、オレの読書は終わらない。
道路の向こうに苛立つミユキの姿が見えた。
オレは禁断の歩きスマホで道路を横断した。
車のブレーキ音が鼓膜を刺激したが、かまっていられない。
オレはスマホをスクロールしながら歩き続けた。
道路を渡りきると目の前にミユキがいた。
腕を組んだままオレを睨みつけている。
「いつまで待たせるつもり?」
「Talesでおすすめを読んでいたら、改ページがなくて……」
「改ページとわたし、どっちが大事なの?」
「そりゃ、かいペ、いや、ミユキに決まってるだろ」
「どうだか、あやしいものね」
「ミユキを喜ばそうと思って、ずっとミユキの誕生日プレゼントを選んでたんだから」
「おすすめを読んでたんでしょ」
「女の子を喜ばせるための、おすすめプレゼント記事だよ」
オレは口からでまかせを言いながら、ようやく現れた
次のエピソード
↓
をクリックした。
Talesのトップ画面に戻る。
なんとか苦境を乗り切った、はずだった。
そのとき、天から声が降ってきた。
「うまく落としましたね」
オレは汗を拭きながら答えた。
「はい、かろうじて」
ミユキが満面の笑みでオレを見ている。
……いや、違う。
ミユキはオレの顔を見ていない。
画面の向こうの、「読者」を見ている。
そして告げた。
「正直、すべってると思うよ、この作品」
オレの手から、スマホが滑り落ちた。
ジ、エンド
・・・・・・・
作法はこれであってますか?
人見知りなので、知らない場所には近づかないようにしていますが、サンゴっち(sanngo様)がいたので、安全地帯と見なし寄らせていただきました(´ε`;)ウーン…
