見出し画像

高校漢文テスト対策「漁夫の利」――知っている故事成語を、点数につながる読解へ

「漁夫の利」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。

二人が争っているうちに、関係のない第三者が得をする。
日常でも、スポーツでも、人間関係でも使われることのある言葉です。

けれども、高校漢文の定期テストでは、
「漁夫の利=第三者が得をすること」
と意味を覚えているだけでは、十分に点数につながりません。

テストで問われるのは、そこから一歩進んだ読みです。

原文では、鳥と貝が争っています。
鷸という鳥が、蚌という貝の肉をつつきます。
すると蚌は、殻を閉じて鷸のくちばしをはさみます。

鷸は言います。
「今日雨が降らず、明日も雨が降らなければ、死んだ貝ができるぞ。」

蚌も言い返します。
「今日出られず、明日も出られなければ、死んだ鳥ができるぞ。」

どちらも相手を放そうとしません。
その結果、通りかかった漁夫が、鳥と貝をまとめて捕らえてしまいます。

これが「漁夫の利」のもとになった話です。


「漁夫の利」とは何か

「漁夫の利」とは、対立している二者が互いに争い続けた結果、第三者が利益を得ることを表す言葉です。

この話では、鷸と蚌が争っている二者です。
漁夫が、第三者です。

鷸も蚌も、自分が勝つことだけを考えています。
しかし、相手を放さないまま争い続けたため、どちらも逃げることができなくなりました。

そのすきを見て、漁夫が二者をまとめて手に入れます。

つまり、この故事は、
「目の前の相手に勝とうとして争い続けると、別の強い相手に利益を奪われることがある」
という教訓を含んでいます。

ここで大切なのは、これは単なる動物の話ではないということです。

本文では、この話は政治的な説得のために語られます。
趙が燕を攻めようとしている場面で、蘇代という人物が、趙の王に対して「燕と趙が争えば、強い秦が利益を得ることになる」と説くのです。

つまり、本文の対応関係は次のようになります。

鷸と蚌は、燕と趙。
漁夫は、強い秦。
鳥と貝の争いは、燕と趙の戦争。
漁夫がまとめて得をすることは、秦が利益を得ること。

この対応関係を押さえると、「漁夫の利」はただのことわざではなく、戦国時代の外交的な説得の話として読めるようになります。


なぜ高校漢文で出るのか

「漁夫の利」が高校漢文でよく扱われる理由は、大きく三つあります。

一つ目は、本文が比較的短く、漢文の基本練習に向いているからです。

原文は長すぎません。
しかし、返り点(漢文を日本語の語順で読むための記号)や書き下し文(漢文を日本語の文語調に直した文)の練習には十分な内容があります。

たとえば、
「不雨」
「不出」
「不肯相舎」
「得而并禽之」
など、漢文らしい語順や読み方が出てきます。

二つ目は、語句と句形(漢文で決まった読み方・訳し方をする形)をまとめて確認しやすいからです。

「且」は「まさに〜んとす」と読むことがあります。
「相」は「互いに」という意味で使われます。
「為」は文脈によって「〜のために」「〜となる」など、読み分けが必要です。
「願」は「願はくは」と読み、相手に強く願う表現として使われます。

このように、短い本文の中に、定期テストで出しやすい語句が多く含まれています。

三つ目は、読解問題を作りやすいからです。

「漁夫の利」は、話の表面だけを読むと、鳥と貝と漁夫の話です。
しかし、本当に読み取るべきなのは、その話が何をたとえているのかです。

鷸と蚌の争いは何を表しているのか。
漁夫は何を表しているのか。
蘇代はなぜこの話をしたのか。
趙の王は何を考えるべきだったのか。

このように、本文の内容理解から、記述問題まで広げやすい教材なのです。


テストで狙われるポイント

「漁夫の利」のテスト対策では、次の三つを重点的に確認しておく必要があります。

1 原文から書き下し文にできるか

まず狙われるのは、原文を正しく書き下す問題です。

特に注意したいのは、否定の読みです。

「今日不雨、明日不雨」は、
「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば」
のように読みます。

「不」は「ず」と読むだけでなく、後ろの形によって「ずんば」と読むことがあります。

また、
「不肯相舎」
は、
「肯へて相舎てず」
のように読みます。

「肯」は「すすんで〜する」「承知して〜する」という意味です。
「相舎てず」は「互いに放さない」という意味になります。

このように、漢字一字ごとの意味だけでなく、文全体の流れに合わせて読む力が必要です。

2 語句の意味を本文に合わせて答えられるか

次に、重要語句の意味が狙われます。

たとえば、次の語句は必ず確認したいところです。

「且」=まさに〜しようとする
「曝」=日にさらす
「箝」=はさむ
「喙」=くちばし
「相」=互いに
「舎」=放す、捨てる
「并」=あわせて
「禽」=捕らえる
「弊」=疲れさせる、弱らせる
「熟計」=よく考える

ここで注意したいのは、現代語の感覚だけで意味を決めないことです。

たとえば「舎」は、現代語の「家」の意味ではなく、ここでは「放す」という意味です。
「禽」も、鳥という意味だけでなく、「捕らえる」という動詞として使われています。

テストでは、このような本文中での意味が問われます。

3 たとえの対応関係を説明できるか

もっとも重要なのは、読解問題です。

この話では、鷸と蚌の争いが、燕と趙の争いをたとえています。
そして、漁夫は秦をたとえています。

したがって、記述問題では、
「燕と趙が長く争えば、両国が疲弊し、そのすきに強国の秦が利益を得ることになる」
という内容を書けるようにしておく必要があります。

単に、
「漁夫が得をしたから」
では不十分です。

本文の中で、誰が誰に話しているのか。
なぜその話をしたのか。
その話によって、相手に何を考えさせようとしたのか。

ここまで押さえることが、高校漢文の読解では大切です。


「漁夫の利」は、暗記だけではなく読解の教材

「漁夫の利」は、有名な故事成語です。
だからこそ、意味だけを覚えて終わってしまいがちです。

しかし、高校漢文のテストでは、
原文を読む力、
書き下し文に直す力、
語句を本文に合わせて理解する力、
たとえの意味を説明する力、
がまとめて問われます。

「知っている言葉」を「読める本文」に変えること。
そして、「読める本文」を「説明できる答案」に変えること。

そこまでできて、初めてテストで安定して点数につながります。

今回のテスト対策では、「漁夫の利」を通して、高校漢文の基本である
原文・書き下し文・語句・句形・読解
を一つずつ確認できるようにしています。

定期テスト前の総仕上げとして、ぜひ活用してください。


ここから先は

0字 / 2ファイル

¥ 600

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?