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花形の中に咲いた夫婦の華〜つる子の中村仲蔵

2026年5月10日(日)第565回 花形演芸会(渋谷区文化総合センター大和田6階 伝承ホール)

市助  のめる

 柳亭市馬弟子。「前にのめる」も「のめる」
もアウトという設定になっている。

萬丸  やかん泥

 三遊亭萬橘弟子。

 本来のサゲは「親分、今度は大きなやかんだ」だが、一捻りしている。

ひつじねいり  漫才

 整形手術のネタ。

寸志  野ざらし

 「針とっちゃたよ」まで。

馬好  陸奥間違い

 闕字(けつじ)という風習がある。これは目上の人への文書の中でその人への敬意を示すためにある語句の前に一文字乃至二文字を設けることである。このために「松納」と「松平」を間違えた事から起こる騒動を描く。
 おかしみの中に金原亭馬好ならではの重厚さがみられる。バリトンの魅力だろうか?

ー仲入りー

吉弥  稲荷俥

 ゲストは上方落語家の桂吉弥である。桂吉朝の弟子であるが、大師匠の桂米朝の家に世話になる事になった。米朝の自動車の運転手になったが⋯。
 本作は江戸落語の『紋三郎稲荷』に似ている。人間が自らを狐と偽って人間をダマし、最後まで露見しない。
 吉弥ならではのユーモラスな感じで終始和やかに客を笑わせた。サゲは『紋三郎稲荷』と違ってにぎやかな感じ。

小助・小時  太神楽

 バチ→五階茶碗→傘

つる子  中村仲蔵

 つる子は、この演目を演る際、前座時代の思い出を語る。師匠・林家正蔵が帰宅した際、なかにあるお稲荷さんに柏手を打つという話だ。
 だが、今日は違った。国立演芸場のお稲荷さんの話だったのだ。このマクラが、あとで中村仲蔵がお稲荷さんというお稲荷さんに手を合わせる場面で生きてくる。

 仲蔵が今度の『仮名手本忠臣蔵』で割り振られた役が五段目の斧定九郎だったと肩を落として報告した時、女房のお岸はこう言う。

 斧定九郎は重役の倅なのに山賊の格好をしているのはおかしい。いつか、この斧定九郎という役を変える役者が出る。お前さんなら、それができるよ。

 小屋がハネた後、中村仲蔵は客にウケなかったと勘違いする。帰宅し、明日から上方へ修業に行くと言うと、お菊は言う。

 いいよ。行っておいで。向こうで稽古し倒して、一回り大きくなったお前さんが見たいよ。

 仲蔵、家を出るが、使いの者に呼ばれ、楽屋へ戻る。師匠は仲蔵はしくじったどころか、大いにウケたと手放しでほめる。仲蔵は一旦家に帰り、これを報告すると、お岸は言う。

 分かっていたよ。アタシはお前さんが稽古するのをずっと見てきたんだから。

 このようにお岸は、相手を否定せず、よい方向へ導くコーチとしての才を持っている。逆境だからこそ、見棄てず、あきらめず、旦那を伸ばし、希望の方へ目を向かせる。何のことはない。仲蔵はお岸の手のひらの上で転がされていたのだ。



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