フリースクール運営者として考え続けた2025年──心に刺さった本14冊
2025年は、合計26冊の本を読みました。
内訳は、子ども・教育関連が9冊、その他の学びに関する本が7冊、小説・エッセーが10冊。
その中から、特に刺さった、私の血肉になった(なってほしい)14冊を紹介します。
【子ども・教育篇】
フリースクールを始めて1年半、学習支援を始めて半年。
目の前の子どもたちや保護者の方々と関わり、そして学校に行っていなかったわが子を見つめる中で、「不登校」という事象が、自分の中で少しずつ変化しています。
ここで紹介する本は、そんな試行錯誤の中で
「一人で考えているわけじゃない」
「先人たちが、すでに深く考え抜いてくれている」
そう感じさせてくれた、心強い一冊一冊です。
脱「学校」論(白井智子)
フリースクールという「学校の外側の学びの場」に、大きな可能性と希望を示してくれる本です。
教育に「選択肢をつくる」ということを、真正面から考えています。
学校に行けない子どもにとって優先すべきなのは、「今の学校をよくすること」よりも、「安心・安全に、楽しく学べる環境と出会うこと」。
この考え方に、強く共感しました。
30〜40人のクラスで、全員が同じ方法・同じスピードで学び、同じように理解する。それは原理的に無理があるにもかかわらず、「周りと違うことはいけない」という意識が刷り込まれ、自己肯定感を下げてしまう子どもが少なくありません。
一人ひとりに合った形とスピードで基礎学力を身につけ、その上で「得意」を伸ばす。
今は技術的にも、それが可能な時代です。
それでもなお、「学校とはそういうもの」「教育とはこうあるべき」という思い込みの中で、思考停止に陥っている大人が多いと感じます。
不登校の子どもは、すでに35万人以上。
この現実を直視し、その子にとって本質的に必要な環境は何かを考え、選択肢を増やしていく。
そんな決意を新たにしました。
IN/SECTS Vol.18 特集「THE・不登校」
雑誌の特集ですが、とてもに刺さり、そしてこの特集を作ってくれたことに感謝しました。
不登校の分析や処方箋ではなく、当事者や保護者、現場の人たちの「生の声」が丁寧に言語化されています。
これほどの言葉を持つ人たちが、不登校について語ってくれたことに感謝しかありません。
そして、驚くほど前向きで、明るい。
(詳しい感想はこちら)
子どもの体験 学びと格差(おおたとしまさ)
「非認知能力を育てるには、よい体験が必要」
そのためには親の意識、時間、そしてお金が必要になり、結果として「体験格差」が生まれる――。
本当にそうなのだろうか?
そんな問題意識を持つように、という無言のメッセージを大先輩から頂いたような気がして、本書を読みました。
同年代の子どもと自由に遊ぶこと。
親や先生以外の大人と関わること。
それだけでも、十分に豊かな体験なのではないでしょうか。
「これは良い体験になるはず」と、大人が善意で与えているものが、実は押しつけになっていないか。
本来もっと自由に遊べた時間を、奪ってはいないか。
「やらせたい」という気持ちが、子どもを息苦しくさせていないか。
子どもたちの居場所をつくる立場として、これからも自分に問い続けていきたいテーマです。
学校に合わない子どもと親が元気になる77の知恵(古山明男)
著者・古山先生の講演があまりにも心を揺さぶったので、その場で本書を購入しました。
心に残したい言葉が多すぎて、線と折り目だらけになった一冊です。
「学校以外にも、多様な学びの場がある」
この事実を、不登校になってからではなく、すべての子どもと親が小学1年生の時点で知っている。
それが、多くの親子を救うのではないかと、改めて感じました。
科学的根拠で子育て(中室牧子)
タイトルからは想像しにくい、「幸せ」についても考えさせられる一冊でした。
幸せとは何か。
そのために必要なのは、学歴か、偏差値か、非認知能力か。
非認知能力の何が大切なのか。
スポーツや習い事は必要か。
それとも別の何かが大きく影響しているのか。
子育てや教育に関する情報があふれる今だからこそ、流されるのではなく、自分の軸を持ち、自分で選ぶ。その大切さを強く感じました。
【その他の学び篇】
価値観をぐらぐら揺るがせる、そんな体験の多い年でした。YouTubeで情報を得ることが多くなっていますが、そればかりではいけないなと改めて反省。ティール組織もベーシックサービスも、既存の枠組みへの挑戦は出会いと対話がポイントですね。
なぜ働いていると本が読めなくなるのか(三宅香帆)
「読書」という切り口で、明治から令和までの歴史を一気に描く一冊。
正直、タイトルで少し損をしている気がしますが、2024年に最も売れた新書なのも納得です。
当たり前だと思っていたことが、実は全然当たり前ではなかった。
これが歴史を学ぶ面白さですね。
新自由主義や自己啓発本の問題点が腑に落ちました。
「働きながら本が読める社会」
「半身で働ける社会」
私も、そんな社会を望みます。
ティール組織(フレデリック・ラルー)
上司なし、役職なし、組織図なし。
小さなチームが自律的に意思決定する、最先端の組織論。
なんとなく自分の中にあった理想の組織がここにあった!と、読んでいて興奮を隠せませんでした。
実際にこのティール組織を作ろうと奮闘している先輩がいて、応援したいです。自分の活動にもぜひ取り入れていきたいと思います。
テクノリバタリアン(橘玲)
リベラル、リバタリアン、平等主義、自由主義、伝統主義、共同体主義、大きな政府、小さな政府、功利主義、etc.
世界のいろんな「主義」が腹落ちする形で整理できました。
その上で、イーロンマスクやサムアルトマンのようなテクノリバタリアンがどんなことを考えて、世界をどうしていきたいか、とても興味深い1冊です。
ベーシックサービス(井手英策)
正直なところ、まだ自分の中で完全には咀嚼しきれていません。
ただ、これまで当たり前だと思っていた価値観が音を立てて崩れ、その向こうに、これまで見えていなかった新しくてわくわくする光が差し込んできた感覚があります。
ベーシックサービスについても、ここから腰を据えて学び続けていく必要がありそうです。
それにしても、YouTubeって怖いですね。
このメディアの影響力にはあらためて身震いしました。
気をつけているつもりでも、知らず知らずのうちに偏った情報に囲まれていたのだと気づかされました。
だからこそ、立場や考えの異なる人との出会いや対話が大切ですね。
【小説・エッセー篇】
今年は小説をいつもより多く読みました。それも『昨夜のカレー、明日のパン』のおかげです。
昨夜のカレー、明日のパン(木皿泉)
一つひとつの物語が、じんわりと心に染み込みます。
「もう一話だけ」と、つい読み進めてしまう一冊。
最近、小説をよく読むようになったのはこの本のおかげです。
YABUNONAKA(金原ひとみ)
多様性、リベラル、ポリコレ、Mee Too、告発...
これまで当たり前に正しいと思っていたものが、実は絶対的な正義ではなくて、人によって見えている風景がこれだけ違う。
目指しているゴール(理想)は意外とけっこう近いんだけど、それをどう生き方に反映するかという「手段」は人それぞれで全然違う。
その手段を押し付けてしまうと、それは「悪のような正義感」になってしまって、人を傷つける。
それが昨今の反多様性、反グローバリズムの波にもつながっているように思いました。
本書では一人一人の登場人物がいろいろな「手段」を体現していて、自分の中でもやもやしていたことが整理ができました。言葉の力はすごいなと思いました。
AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 (李開復・陳楸帆)
AIをテーマに、恋愛、教育、医療、職業、保険、自動運転、エンタメ、兵器、さらには「幸福」まで、さまざまなテーマを扱い、世界各地を舞台に2041年の未来を描いた10の短編小説集です。
著名なAI研究者とSF小説家がタッグを組んだ、非常にユニークな企画だと思います。 未来予測の本は数多くありますが、本作は小説仕立てのため、物語に引き込まれて一気に読んでしまいました。
ChatGPTが衝撃デビューする前に執筆されたため、作中で描かれる一部の社会の変化は前倒しになりそうと感じました。 AIの現実的な未来をSF物語として楽しみたい方におすすめです。
今夜も焚き火をみつめながら (服部文祥)
服部文祥さんの著作の中で一番好きな一冊になりました。
「なにかにつけ自分なりに意味を突き詰めたい性分なのだろう」
という一節の通り、タブー視されがちな生々しい現実にも容赦なく意味を突き詰めていく、登山家 x 物書きである文祥さんならではの素晴らしい読書体験でした。
国宝 (吉田修一)
映画を先に観ました(2回)。
それがあまりにも良かったので、小説にも手を伸ばしたのですが、これがまた格別でした。
映画では描き切れなかった人物、背景、時間の積み重なりが、小説では丁寧に描かれていて、正直なところ、映画の何倍も深く物語を味わえました。
(これを3時間に収めた映画もすごいですが)
歌舞伎という、決して間口が広いとは言えない題材を、ここまで濃密で緻密な物語に作りこんだ、その構想力と筆力に圧倒されました。
いかがだったでしょうか。
これを読んでくださった方の参考に少しでもなれば幸いです。
2026年も本との出会いを大切に、学びを止めずに、楽しく過ごしていければと思います。
