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はじめてのお金

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 はじめてのお金というお題でスッと頭に浮かんだのは大学時代でのバンド活動のことでした。

 大学時代、私はサークルでバンド活動をしており、その延長線上の趣味レベルでオリジナルバンドを組んでいました。素人がライブをやるとなると、大体こちらからお金を払って出させてもらうか、チケットを買ってそれを売らなければ自己負担。というようなパターンが多いかと思います。

 そんな中、友人が懇意にしているライブサロン(ライブが出来るBARのような場所です。結構広かったです。)があるということで、そこに出ささせてもらうことになりました。京都にある「夜想」というライブサロンです。当時は烏丸御池にありました。

 ライブを終えると、夜想の方から「じゃあこれ今日の分」と言われ封筒を渡されました。中にはお金が入ってました。

 私たちはびっくりして「これは何のお金ですか?」と聞くと出演料とのこと。

 私たちがこのライブサロンに何か利益をもたらしたとは思えませんが、こんな大学生の小汚い若造の私たちに出演料を払ってくれたのです。自分たちのライブをやってお金をもらったのはこの時が初めてでした。そして後にも先にもこの夜想以外でお金をもらったことはありません。

 私は学生時代バンド活動をしながら色々な小さなライブハウスやBARなどに、その場の流れや付き合いで何回か足を運びましたが、どこもあまり馴染める感じではありませんでした。何か知り合いだけの楽しいノリがあったりとか、人数が少ないから妙に話をしなきゃいけないような感じになったりとか、椅子が固かったりして長く座ってるのきつかったりとか、椅子が妙に高くて足がつかないから長時間座ってるのきつかったりとか、椅子に背もたれがないから私はお酒は弱いので背もたれがあればもうちょっと頑張れるけど背もたれがないせいでちょっとキツくなってきたりとか、そんなに得意ではなかったのです。

 しかし、この夜想はどこか着かず離れずな感じがとても心地よく、椅子も普通の椅子でしたが壁際に行けば背をもたれることもできましたし、そういう自由を許されていましたし、いいライブサロンBARだなと当時思っていました。

 そんな年の暮れに、私は郵便局でゆうパックの仕分けの夜間短期アルバイトに行きました。そこでたまたま夜想の従業員の方と一緒になりました。働いている部署が違ったので軽く挨拶を交わす程度でしたが私は思いました。

 「夜想の営業だけで生活が成り立っていれば、おそらくここでアルバイトをすることもないのではないか。そんな生活状況の中で私たちのような大学生の若造の小汚いバンドに出演料を払ってくれていたのだろうか。なんでそんなことをしてくれるのだろう。」

 夜想の方は年の頃で当時でおそらく40歳前後だったのではないかと思います。もっと自分たちの生活とか利益を追求してほしいなと感じたのを覚えています。

 それから数年が経ち最初に夜想を紹介してくれた友人が結婚することになりその結婚式に出席しました。

 夜想とは大学卒業以来は全く縁もなく、もともとそんなに仲良くさせてもらっていたわけではないのでそのまま特に何もつながりもなく数年経ったのですが、その結婚式の時に夜想の従業員の方がいらっしゃっていました。そしてたまたま会場の外で話す機会がありました。

 そこで私は軽い冗談みたいな感じで「覚えてないかもしれませんが、バンドで何回か出させてもらったことがあります。出演料をもらったこと覚えてます。でもこんな僕たちに出演料を払うなんて、そんなことしてちゃダメですよ。ハハハハハ。もっと自分たちの儲けのことを考えてくださいよ〜。アハハ」と言いました。
 
 すると夜想の方は真面目な顔をして「でも、出てくれた人にお金ちゃんと払いたいからさ。」とおっしゃいました。
 
 私は急に恥ずかしくなりました。あまりにも私のおふざけな感じが白々しく、相手の真面目な顔に心を見透かされたような気持ちになりました。

「あ、そうですよね。あははは。」と、その場では取り繕いましたが、何かとても失礼なことを言ってしまったのかもしれないと後悔しました。とても情けない気持ちになりました。私は人からよく思われただけの自己中心的な小さな人間だなと思い知らされました。

 その日からかれこれ十数年経ちましたが、はじめてのお金と聞いて夜想のことが思い浮かびました。あの時言ってしまった余計な言葉、失礼な言葉。なんでそういうことを言ってしまったのか。反省するばかりです。今思い出しても恥ずかしいです。後悔が残っているのです。僕の情けないことの多い人生の一つでした。

 ちなみに夜想は現在場所を変えて営業中のようです。

 ズボラさん瀬戸内さん楽しい企画ありがとうございました!


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