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蓮と麗|卵パック


買い物袋をテーブルに置いて、
麗はひとつずつ中身を出していく。


牛乳。

野菜。

パン。

最後に、卵のパック。


冷蔵庫を開けると、
上の段の奥に、
見覚えのある白いパックがあった。

手が止まる。

ゆっくり引き出して、
今日買ってきたものと並べる。

静かな台所に、ほんの少しだけ気まずい空気。


それから蓮の方を振り向く。

「パパ、ごめん。卵あった。」

少しだけ首を傾げる。

「無いと思ったんだけどな〜。」

本気で不思議そうだ。


蓮は近づいて、冷蔵庫をのぞく。

「あ、ほんとだ。」

責めるでもなく、ただ確認する声。


麗は卵を両手で持ったまま考える。

「どうしよう。」


蓮はすぐに言う。

「まあいいじゃないの。」


それから、少しだけ笑って。

「ママに買ってもらいたかったんだよ〜。」


麗はぱちぱちと瞬きをして、
それから素直にうなずく。

「そっか。」

怒りも照れもなく、受け取る。


蓮が続ける。

「じゃあ、夕飯オムライスにしようか。」


麗の顔がぱっと明るくなる。

「ほんと?」


「うん。」

それだけで、もう嬉しそうだ。


「やった。」

卵を冷蔵庫に戻しながら、もう一度言う。

「オムライスかぁ。」

声が少し弾んでいる。


蓮はその横顔を見て、静かに笑う。

まだ何も始まっていないのに、

台所の空気はもう少しやわらかい。


麗は振り返って言う。

「楽しみ。」


蓮はうなずく。

「任せて。」


卵が増えただけの夜。

でも、それだけで十分だった。




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