報告|小説に登場する料理とともに。
わあっ!
事業所での昼休みに、創作大賞2025に応募した「宝箱集配人は忙しい。」が中間選考を通過した事実を知りました。
これまで小説賞に応募しても、選考を通過したことはありません。
だから、本当に嬉しくて。
事業所から帰宅した後、創作大賞2025の中間選考通過のお知らせ記事を印刷して、物語名とわたしの名前が載っている部分を切り取って、業務日報を書いている、ほぼ日手帳の本日のページに貼ったほどです。
しばらく業務日報を見返すたびに、ニヤニヤする日々になりそうです。
でね、せっかくですから、このお話に登場する料理についてちょっとした読み物を書いてみようと思いつきました。ネタバレには抵触しないように、なおかつ、お話を読んでくださったかたにも楽しんでもらえるように。
少しでも楽しんでもらえたら、とっても嬉しいです。
チキン・コルドン・ブルー
朝食を軽めにしてしまうから、昼食こそがっつり食べたいと思うのだ。
だから今日の日替わり定食を見た時、僕は思わずガッツポーズを決めていた。鶏胸肉を切り開いた中にハムとチーズを詰め込んだ、チキン・コルドン・ブルー。
まさに僕の希望をもりこんだメニューに、食堂のおばちゃんへの感謝がこみあげる。野菜サラダが多くても文句を言う気にはならない。
コルドン・ブルーはフランス語で青いリボンを意味しますが、腕のいい料理人という意味もあります。ほら、フランスの名門料理学校が「ル・コルドン・ブルー」というでしょ?
スイスのシュニッツェルを起源としたこの料理は、さまざまなアレンジがありますが、中でもチキン・コルドン・ブルーは1967年のニューヨークタイムズに初めて登場したと言われています。
この物語の主人公は、食事が大好きな人物です。その人物の「らしさ」を描写したい、この人物がいちばん喜ぶ事は何かなと考え続けて、食堂のメニューにチキン・コルドン・ブルーが登場することだ、と思いつきました。
ええ、わたしも食べたかったんですのよ……。
子羊のハーブ焼きとトリッパのトマト煮込み
ちょうど看板娘が近寄ってきたから、今日のおすすめメニューを訊ねる。すると子羊のハーブ焼きだと答えが返ってきたから、今日の一杯は決まった。赤ワインにしよう。
すると貴公子も同じものを選んだ。
僕はこれだけで満足なんだけど、貴公子はどうなんだろう。もっとガッツリ食べたいんじゃないだろうか。迷ったときは訊ねどき。他に食べたいものはあるかと訊いてみたところ、ちょっと迷ったあとに、トリッパのトマト煮込みを示した。うん、良い選択だ。
子羊のハーブ焼きって春に食べるものじゃない? と思われる方も多いかもしれません。キリスト教の復活祭で子羊を食べる習慣がありますからね。
でも子羊は秋も旬なのですよ〜。
この時にイメージしたハーブは、ローズマリー+タイム+セージにレモン皮と粒マスタードを少量です。トリッパのトマト煮込みに使ったハーブも、セージとローズマリーを主体にして、豆を足しているイメージです。
秋は、煮込み料理を美味しく感じる季節ですよね。
牡蠣料理 アセルニー・ジョウンズ風
先に届いた白ワインで乾杯をして、まずは牡蠣料理を食べる。
ゆでた牡蠣とマッシュルームを交互に串にさし、レモン果汁で味付ける。溶かしバターにさっと浸してパン粉をまぶしたあと、グリルで軽く焼いたものだ。子供時代の僕は牡蠣の風味を苦手に捉えていたんだけど、大人になって食べられるようになった。食べられるようになってよかった、と感じる。そのくらい、牡蠣は美味しい。白ワインとも合う。
この料理は、1973年6月2日に、アメリカ料理大学で開催されたシャーロック・ホームズ記念晩餐会メニューに掲載された珍味のひとつです。
物語に具体的な名前こそ出せませんでしたが、ズバリ、「シャーロック・ホームズとお食事を」という書籍から引用しました。
この本を読んだときに、とっても美味しそうだと思ったんですよねえ。その魅力を読んでくださる方々に知ってもらいたいと思って、登場させました。
美味しそうでしょ? いつか作ろうと機会を狙っている一品でもあります。
チーズリゾット
出来上がったチーズリゾットは、とてもとても美味しいものだった。
米はちょうどいい加減に煮上がってきたし、チーズのとろみもコンソメの風味も申し分ない。僕の記憶でいちばん美味しいチーズリゾットは、亡くなった母親が作っていたものだけど、この貴公子が作ったチーズリゾットも引けを取らないと感じた。
とてもシンプルな料理だからこそ、料理の腕が如実にわかります。
主人公の母親も、この場面でチーズリゾットを作った貴公子も、とても料理上手だという設定にしています。だからその料理の腕前を実感できる料理は何かなーとあれこれ考えて、チーズリゾットにしたのですね。
友人とイタリア料理の店に行って、美味しいチーズリゾットを食べたことも影響しています。
ん? この物語の舞台は別の国がモデルなんじゃないかって?
ど、どうかファジーに考えてください。美味しさに国境はありません!!
目玉焼きハンバーグのせ定食
でもわがままは言っちゃいけない。僕がうなずくと、おばちゃんは厨房に入った。
しばらくして、甘辛い照り焼きソースの匂いが漂ってきた。ぐう、と腹が控えめに反応する。肉汁の匂いまで捉えてしまって、あれ、と僕は思った。
まもなく注文口に差し出された定食は、立派なハンバーグ定食だ。ただし、きのこと大根おろしがなく、代わりに立派な目玉焼きがハンバーグの上にのっていた。
「すまないねえ。きのこと大根おろしが切れちまったのさ」
だからこの物語の舞台のモデルはどこですか!? というセルフツッコミをかましながら、この場面を書いていました。
いいのだ。美味しいは正義なのだ、と呟きながらこの場面を書いた脳裏には、この季節ならではの某月見バーガーが浮かんでいました。秋の名物。
もっとも、わたし、某月見バーガーを食べたことがないんですよねえ。
そう言ったら友人に「ソースが違うよソースが!!」と力説されました。美味しそうでした。今年こそ機を逃さずに食べたいですね、秋の味覚。
キャラメル
確かこのキャラメルは、この部下が贔屓にしているカフェの特製キャラメルじゃなかったか。マスターが手作りしている、風味豊かなキャラメルが自分用のごほうびなのだと話してもらった記憶がある。
思わず彼女を見つめれば、紅く染められた唇が、ゆっくりと動いた。
(よ・く・で・き・ま・し・た)
僕は思わず苦笑して、キャラメルを取り上げた。パリ、と紙包みを剥いでキャラメルを口に放り込む。ナッツの風味がふわりと豊かに口の中に広がった。
このキャラメルのお話が書きたくて、この記事を書いたと言っても過言ではありません!!
このキャラメルはですね、当時のわたしが夢中になったキャラメルです。そのくらい美味しかったんですよね、日本将棋連盟の100周年記念のキャラメル。
ええと、千駄ケ谷に工房を構える「NUMBER SUGAR」とのコラボレーションアイテムだったようです。当初は通販でも購入できたんですが、今はもう、通販では買えません。
無添加の、風味豊かなキャラメルで美味しゅうございました。ああ、何度も思い出す味です。新しい将棋会館の「棋の音」に行ったら買えるかなあ。
カレー
舌先に、ピリリとした刺激を感じる。でもそれ以上に、スパイスの豊かな旨みが口の中に広がった。ああ、これだ。久しぶりに食べる煮込み料理は、母親が作ってくれたものとはやっぱり違う味付けだった。この煮込み料理に使う肉も違う。スパイスの配合も。
それでも僕は、充分に楽しむことができた。
たぶんそれは、貴公子のおかげでもあるだろう。感傷に捕まってもおかしくない状況だったけど、素直にカレーを楽しんでいる彼を眺めていたら、感傷なんて立ち入る隙間なんてない。新しい味と共に新しい思い出が上書きされることを、僕は素直に喜べた。
今でこそあちこちで食べられるカレーですが、そもそもカレー粉は18世紀イギリスの発明品だと言われています。
1784年の新聞広告に「curry powder」が登場して、インド各地の味をまとめた「便利粉」としてロンドンで売られたんですね。
それが帝国ネットワークで広がった、と。
ちなみに物語に登場したカレーは、クミンとニンニクと生姜を炒めて、ターメリックやナツメグ、チリパウダーやガラムマサラを配合して作るカレーをイメージしていました。わたしが作る、いつものカレーです。
亡くなった家族が作ってくれたカレーとは違う味ですが、それでも、美味しくて、とてもしあわせな気持ちになりますよね、カレー。
食べ物愛も爆発させながら書きました。
以上、物語に登場する料理について書いてみました。
この物語は異世界ファンタジーですが、気取らずに書こうと考えながら書いています。
物語を書くことの楽しさを取り戻そうと考えて、だからこそ、世界観に囚われすぎないよう、食べ物愛を炸裂させながら書いた物語なのですね。
大好きな物語なのです。
ですから、今回、中間選考を通過したと知り、とても嬉しく感じました。
読んでくださった皆さんを、少しでも楽しませることができていたら、本当に嬉しいです。
たくさんたくさん、ありがとうございます!
この記事も読んでくださって、本当にありがとうございました〜!
