見出し画像

元・産業用カメラ屋が説く高画質カメラ論

高画質なカメラとは何だろうか。

先日、知人から「画質の良いカメラは何か」と聞かれたのだが、明確な回答を即答することが出来なかった。
カメラを長く趣味にしているが、そもそも何をもって高画質と言うのか、ということが分からなかった。
15年前であれば画素数が多いカメラと即答していただろうが、2026年現在でもその回答で良いのかとためらいが生じた。
面子が立たないから・・・というわけではないが、ここ数年そんなことを深く考えたことが無かったので、良い機会だと思いじっくり思いを巡らせてみた。
今回は、僕が考える「高画質カメラとは何であるか」を記録しておこうと思う。

東京・日野市にある高幡不動尊の手水舎

よくよく考えてみると、カメラにおいて「高画質」を指す言葉の意味は意外と難しい。
何をもって高画質と言うのかは、恐らく写真撮りの数だけ答えが存在するのではないだろうか。

ちなみに、Google Geminiに問いかけたところ、下記のような回答が得られた。

カメラにおける「高画質」とは、単なる画素数の多さではなく、イメージセンサーの大きさとレンズの性能によって決まる、解像感・色再現性・ノイズの少なさの総合的なバランスを指します。

なるほど。分かるような、分からないような。
何となく言いたいことは汲み取れるが、まず「イメージセンサーの大きさ=高画質」とは一概に言えないと僕は思っている。
高画質を述べる上で、解像感・色再現性・ノイズの少なさは重要だが、これらはセンサーの大きさだけで決まるものではない。
センサーサイズは高画質を構成する露光感度などの要素に深く関わってはいるものの、サイズが大きいから画質が良いと言い切ってしまうのは少々乱暴であり、写真撮りの発言としては適切ではない気がするのだ。

そこで、僕が思う高画質なカメラに求める要素を下記にまとめてみた。

① 色再現性が良い・・・状況に応じた適切なホワイトバランスが得られ、正しい色が表現できること。
② 露光感度(高感度耐性・ダイナミックレンジ)が高い・・・白飛びや黒つぶれなく描写できること。
③ 画像に歪みがない・・・画像の周辺部でも歪曲がないこと。
④ ブレがない・・・被写体ブレを含め、ブレが発生していないこと。
⑤ 画素数が多い・・・被写体の形状が正しく認識できるよう、十分な解像度があること。

なお、Geminiの回答にある解像感についてはレンズの性能が大きく影響するため、今回はカメラ単体の高画質という話題からは切り離して考えることにした。

僕は以前、産業用カメラの業界に身を置いていた。
産業用カメラに求められるのは、意図した情報を正確に取得できる色合いであり、影もボケも無い深い被写界深度を得るための照明とレンズであり、正確な形状を判断するために必要な解像度だ。
画像処理を行うためのデータ取得を目的としているため、必要な情報を過不足なく取得できるか否かが画質の良し悪しを決める。
そのため、画素数が多ければ良いわけではないし、場合によってはカラーである必要すらない。
不要な情報量が多く存在すると、画像処理に無駄な時間が発生してしまい適さないからだ。

一方で、現在の僕は写真を作品として残す場合、必ずRAW現像を行っている。
僕の写真を熱心に見てくださっている方ならもしかしたらお気づきかもしれないが、僕なりに自分の味付けをするこだわりを持って現像している(つもりだ)。

そのため、先ほど挙げた要素のうち①は画像処理ソフトウェアによるRAW現像の際にある程度のコントロールができる。
カメラに頼らずとも、限度はあるが何とかなる。
もちろん、より高い次元で満たすには、色分解能が16bitなどの広いレンジがあった方が良いが、現状の14bitでも大きな不満はない。

③の歪みに関しては、多少であれば許容できる。
ただ、最初から歪み補正ありきで設計されたレンズは、光学性能を妥協しているようで道具としての魅力が感じられず、光学製品として美しくない。
僕はそのようなレンズは使用しないし、そもそも興味もないので人様に勧めることもない。
どうしても気になる場合は、思い切ってトリミングして捨ててしまうし、その前提で撮影する。

また、④のブレについては、僕の場合はほとんど気にしたことがない。
現在使用しているLEICA M11には手ぶれ補正機能は搭載されていないし、所有しているMマウントレンズにも手振れ補正はない。
しかし、僕はスナップ撮影が多いため、焦点距離は長くても50mmであり、シャッター速度を1/40秒より遅くすることはほとんどない。
この条件であれば、基本的に手ブレは気にならない。
もちろん全くブレないわけではないが、きちんとカメラを構え、呼吸を止めて撮影すれば気にならない程度まで抑えることが出来る。
逆に、ヘラヘラしながらライブビュー撮影をするとびっくりするほどブレてしまう。
手ブレを気にするなら補正付きのカメラを選ぶべきだろうが、今や中級機以上のほとんどのカメラにボディ内センサーシフト方式の手振れ補正が搭載されている。
そのため、あえてここで高画質の条件として挙げる機能でもない気がしている。

そうなると、僕自身の撮影技術やソフトウェア処理ではどうにもできない要素として、残るのは②の露光感度(高感度耐性)と、⑤の画素数である。

露光感度は、①の色再現性能を活かす上で大きく関わってくる。
いくら16bit出力ができるCMOSセンサーであっても、露光感度が低ければダイナミックレンジは狭くなる。
明るい色から暗い色まで破綻なく撮像するには、この性能が優れていなければならない。
たとえJPEGでは黒つぶれしているように見えても、RAWデータであればその暗部から豊かな色彩を呼び出すことができる。
しかし露光感度が低いと、黒つぶれは本当に真っ黒なデータとなり、RAWで開いても色情報が存在しないか、ノイズに埋もれて読み出せない。
そうなると、意図した色表現が不可能になる。
だからこそ、僕にとって露光感度性能は、高画質を構成する極めて重要な要素なのだ。

なお、CMOSセンサーが受光できなかった光は、ソフトウェアでも作り出すことはできない。
もしも、作ったとしたなら、それはもう生成された画像(AI画像)だ。
生成画像自体を否定するつもりはないが、カメラで撮影した写真に対して用いることには強い違和感がある。
写真は人間が表現するものであり、生成画像はAIが表現するものだ。作品制作の起点そのものが異なっている。
話が少し逸れたが、やはり自分の意図した色調を表現する上で、露光感度の性能は高画質を決める重要な要素である。

また、画素数の多さも僕にとっては同じくらい重要だ。
僕は頻繁にトリミングを行う。
構図を整えるために不要な被写体をカットする意味もあるが、写真のアスペクト比を変える目的も大きい。
アスペクト比が変われば、写真の表現も変わる。
4:3や16:9、1:1など、その作品に合わせた比率は写真表現に深みを持たせてくれる。
しかし、十分な画素数がないと、トリミングした際に及第点を満たす解像感が得られない。
そして画素数もまた、露光感度と同じく、ソフトウェアや撮影技術では後から補うことができない要素だ。
もう少し画素数が欲しいからと、バイキュービック式などで無理やり画素数を増やしても、増加させた分の画素数に伴った効果は得られず、本質的な高画質化には繋がらない。
そもそも、無い画素を偽造するのはやはり生成画像の領域であり、人間がカメラを使って表現する作品ではないと思っている。

そんなわけで、僕にとっての高画質なカメラとは、多画素であり、かつ露光感度(高感度耐性)が高いカメラという結論に至る。

RAW現像を行う僕にとって、どちらも作品の素材を取得するうえで非常に重要な性能であり、この2点こそがカメラの画質を決めるポイントなのだ。
こうして振り返ると、やはり僕はどこか産業用カメラを選定するような視点でカメラを見ているらしい。
RAWでデータを取得し、それを加工する。
やっていることは産業用カメラのそれと同じことかもしれない。

しかし。

僕を含め、多くの人がカメラを選ぶうえで、高画質の優先順位は実はそれほど高くないのではないだろうか。
ここまで述べてきたことを自分で否定するようで釈然としないが、2026年現在のカメラは、画質に関してはある程度すでに成熟していると感じる。
もちろん上を見ればキリがないが、どのメーカーのカメラも及第点を大きくクリアしていると思っている。

ちなみに、僕がカメラを購入するうえで重視する項目の順位は以下の通りである。

1位:眺めてニヤニヤするくらい、いつまでも触っていたくなるくらいカッコよく素敵な佇まいであること。
2位:氷点下での動作や防塵防滴といった高い耐環境性能に加え、良質な素材が使用されており高い質感を有していること。
3位:小型軽量であること。バッテリー、メモリーカードを含めて599g以下が目安。
4位:手持ちのLEICA Mマウントレンズが使える純正のマウントアダプターが存在すること。
5位:高画質であること。目安として2400万画素以上の多画素であり、カタログ上限ISO感度が5万以上であること。
6位:現実的に購入可能な価格であること。目安は100万円以下。

高画質であることが必ずしも最優先事項ではないと気づくと、改めてカメラの多様性が重要であると感じる。

色々と思いを巡らせてみたが、結局のところ、カメラにおける本質的な高画質とは画素数の多さと露光感度の高さにあるという結論に落ち着いた。
この2点だけは、撮影技術や画像処理ではどうにもできない。
一般的に、多画素化と高感度時の画像安定性はトレードオフの関係にあり両立は難しいが、ソニーのα7RVIのCMOSセンサーは、この2点を高い水準で両立させているように思える。
α7RVに搭載されたIMX455のように、この新しいセンサーもぜひ外販してほしいものだ。
LUMIXやNikonが採用したら、面白いカメラが出てきそうだ。

カメラは作品を作らない。
作品の素材を取得する道具である。
その素材をいかに良質に取得できるか。
それが僕にとっての高画質なカメラの定義だ。

そして僕は、僕自身に良い写真を撮らせてくれることもカメラに求めている。
だからこそ、自分がカッコいいと思えるカメラである必要があるのだ。
僕の場合、撮影していて気持ちが良いカメラこそが、一番良い写真を生み出してくれる。
気分が乗れば、写真も自ずと良くなる。
そもそも、心がときめくカメラでなければ、インスピレーションなど湧いてこないではないか。
それゆえ、カメラは写れば何でも良いというわけにはいかないのだ。

そう考えると、僕は意外とカメラに頼って写真を撮っているのだと気付いた。
道理で、カメラが好きなわけである。

最近は休日に撮影に行けていないため蔵出しである。梅雨なので仕方ないが天候に嫌われているな。
この写真はブルーにライトアップされた高幡不動尊の五重塔だ。11月14日の「世界糖尿病デー」には、全国各地のランドマークがブルーにライトアップされ、東京タワーや東京都庁も、この期間は鮮やかな青に染まる。
ブルーにライトアップされた境内は普段とは印象が一変し、まるで異世界のような神秘的な空間となる。
※写真をタップ(クリック)すると拡大します。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集