【掌編】永遠の前の日【散文詩】
ひとりごとのように、明日から永遠なんだ、ときみがわたしを振り返って言った。そうだね、とわたしは返す。ソメイヨシノは盛りを過ぎて、八重桜はこれからふくらむところだった。
永遠を、選ぶ人が増えた。明日契約を交わし終えたら、きみは永遠を生きる人になる。永遠の一日前である今日は、変化するきみの最終日だ。桜が散り落ちて、樹の根元に広がる。それらを踏んで、わたしたちは最期の散歩を続ける。
ひとりごとのように、なぜ明日にしたの、と問うてみる。春が大好きだから、夏と冬がきらいだから。きみは端的に答えを返した。わたしは季節を留める方法を幾つも考えては、その馬鹿げた思想を放り出す。
永遠は、選べるようになった途端に人気が出始めた。変わりゆくことは、老いることは、そんなにも忌避すべきことだろうか。君も永遠を選べばいいのに、と誘うきみのことばは花のように甘く香る。けれどわたしは選べない、既に抱えたたくさんの喪失を永遠に留め続けることなど。若木に夢を見ないでいることなど。
ひとりごとのように、足元に呟きを落とす。きみと、生きて、変わって、そして共に滅んでみたかったな。少し前を行くきみからの返事はない。きみは明日、やりかけの春をここに留めたまま、わたしの手をすり抜けて、永遠になる。春よ往け、出来るだけ早く。花よ降れ、きみの薄く澄んだ後姿を見えなくさせるほどに。
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ソメイヨシノを過ぎて、八重桜に向かう季節ですね。
ここ半年ほど恐ろしく公私ともに多忙でしたが、ようやく少し一息つけそうな気配です。ゆるやかさよ永遠なれ。
今回の掌編は、以下の2つの企画に乗らせていただいています。
創作にご興味のある方、よろしければぜひ。
◆花介さん・吉田翠さん・悠凛さんの #春爛漫花テロ2026
今回はその中でもコラボ歓迎ということで、カイロウドウケツさんのお写真を1枚、ヘッダーと以下にお借りしました。素敵なお写真ありがとうございました。
また、わたしの今回の掌編も【コラボ歓迎】です。もしこの後何かしてくださる方がいらっしゃったら、ぜひよろしくお願いいたします。

◆小牧幸助さんの #シロクマ文芸部
本作は、シロクマ文芸部の4/9のお題【ひとりごと】をお借りしています。いつも素敵なお題と意欲の湧く企画をありがとうございます。
それではみなさま、良き春を。
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