ショコラティエ探偵Xと ふしぎなチョコの雨(歌付き)

短編集1
ショコラティエ探偵Xと
ふしぎなチョコの雨

ある朝、
ショコラティエ探偵Xとネコのカカオは、
旅の途中でした。
小さな町の駅で降りたとたん、
ふたりの鼻をくすぐるいい香りがしました。
「にゃ〜ん、あまいにおいがするにゃ! チョコのにおいだにゃ!」
「ほんとだね、カカオ。だけど、どこからしてるんだろう?」
ふたりが歩いていくと、
広場のほうから、
ピチャッ、ピチャッと
音が聞こえてきました。
見あげると、
なんと空から茶色い雨がふってきています!
「わあ、チョコの雨だ!」
町の子どもたちは大よろこびで、
口を開けてチョコのしずくをぺろぺろなめています。
でも、すぐにみんなの顔がしかめっ面になりました。
「にがいーっ!」
「ぜんぜんあまくないよー!」
そう、
それはビターチョコの雨だったのです。
Xは帽子を押さえながら、
冷静に言いました。
「これはただのチョコじゃない。……誰かが、わざと苦くしているな。」
「にゃ? なんでそんなことするのにゃ? チョコはあまくてしあわせなものにゃ!」
ふたりはチョコの雨のあとをたどって、
小さな工房へとやってきました。
木のドアには「ショコラ工房・スミレ」と書かれています。
中からは、すすり泣く声が。
Xがそっとのぞくと、
若い女の子がチョコをまぜながら
涙をこぼしていました。
「どうしたのかな?」
「……お客さんがみんな、前よりまずくなったって言うんです。
あまく作ってるつもりなのに、ぜんぜんおいしくならなくて……」
Xは、まぜているチョコの鍋をのぞきこみました。
カカオがちょっとだけ舐めて、
「にゃっ! にがい!」
と飛びのきます。
「うん、やっぱりね。君のチョコには“悲しい味”が混ざってるんだ。」
「えっ? そんなの、入れてません!」
Xはやさしく微笑みました。
「人の気持ちはね、チョコにもうつるんだよ。心がしょんぼりしてると、カカオも泣いちゃうんだ。」
女の子はハッとして言いました。
「そうかも。お店がさみしくて、わたし、ずっと不安だったの。」
Xは小さな瓶を取り出しました。
中には、
きらきら光る金色の粉が入っています。
「これはしあわせのカカオスパイス。特別な材料じゃないよ。気持ちをこめると、どんなチョコもおいしくなる。」
そう言って、Xはスプーンで粉をひとつまみ。
そしてみんなで、
もういちどチョコをまぜはじめました。
トロトロ、くるくる、ふんわり……
スミレちゃんの顔にも、
いつのまにか笑顔が戻っています。カカオはうっとりしながら歌いました。
「まぜまぜ くるくる しあわせまぜる〜♪」
チョコができあがると、Xはひと口味見してにっこり。
「うん、今度は最高だ。」
その夜、
ふしぎなことが起こりました。
また空から雨がふってきたのです。
でも今度は、やさしく甘い香りのするミルクチョコの雨。
子どもたちは手を広げて、
口を開けて、にこにこ。
町中が笑顔でいっぱいになりました。
スミレちゃんは窓の外を見ながら言いました。
「探偵さん、ありがとう。わたし、これからは気持ちをこめてチョコを作ります。」
Xは帽子を軽く上げて言いました。
「うん。チョコはね、気持ちをまぜるおかしなんだ。」
カカオがしっぽを立ててにゃんと鳴きます。
「にゃっ! しあわせは、あまくてトロけるにゃ!」
次の朝、
チョコの雨はやんで、
空はすっきり青く晴れわたっていました。
Xとカカオは駅へ向かいます。
スミレちゃんは駅まで見送りに来て、
包みを渡しました。
「これ、ありがとうチョコです!」
包みを開けると、
中にはハートの形のトリュフ。
真ん中には、
小さなカカオ豆のかけらが光っています。
「ふふ、これはいい味になりそうだ。」
Xはやさしくほほえみ、列車に乗りこみました。
カカオが窓から顔を出して、
「またどこかで あまい事件が まってるにゃ〜!」
汽車の汽笛がポーッと鳴って、
ふたりの旅は、次の町へとつづきます。
おしまい
みんなで一緒に歌ってネ!
歌詞
まぜまぜ くるくる しあわせまぜて
にがいきもちも とけちゃうよ
ふーっとわらえば ミルクのかおり
あまいこころが そらにひろがる
(La la la… チョコのあめ〜)
