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眠れない夜に👄キスの温度が忘れられない夜👄ショートストーリー&コケティッシュなJAZZ

👄キスの温度が忘れられない夜:ショートストーリー

その夜のことを、彼は何度も「大したことじゃない」と言い聞かせてきた。
特別な約束があったわけでもないし、未来を語ったわけでもない。
それでも、忘れられない夜があるのは、たいていそういう時だ。

バーの照明は低く、グラスの縁に残った彼女のルージュがやけに現実的だった。
派手すぎない色。
似合いすぎていることが、少しだけ怖かった。

終電の話題は出なかった。
時計を見る意味もなかった。
その場にいる全員が、今夜は時間を信用していなかったからだ。

彼女はハイヒールを脱ぎ、椅子の足に軽く引っかけた。
その小さな音だけで、彼の中の何かが緩む。
触れない距離が続いていることに、かえって熱を感じていた。

「今日は、ここまでにしよ」

彼女はそう言って笑った。
続きがないことを、最初から知っている笑い方だった。
その潔さが、ずるいほど魅力的だった。

二人は近づいた。
キスは一瞬だった。
長さではなく、温度だけが残るような、そんな触れ方。

それ以上は何も起こらなかった。
それが、大人の選択だったのか、臆病さだったのか、彼には分からない。
ただ、その唇の温度だけが、やけに正確に記憶に刻まれた。

もし若ければ、間違えていた。
もし正しければ、会っていなかった。
そのどちらでもない今だからこそ、彼はこの夜を手放せなかった。

別れ際、彼女は何も言わなかった。
名前も呼ばなかった。
振り返りもしなかった。

その態度が、何よりも優しかった。

帰り道、風は少し冷たく、街はもう朝の準備を始めていた。
現実が戻ってくる音が、どこかでしている。

彼は思う。
忘れたい記憶ほど、体は正直だ。
愛じゃない。
でも、なかったことにもできない。

グラスは空で、答えはない。
それでも、あの夜は確かに熱を持っていた。

キスの温度が、
今も、まだ、消えないままで。

👄キスの温度が忘れられない夜:コケティッシュなJAZZ

歌詞
グラスの縁に残る
赤すぎないルージュ
嘘じゃないことだけ
それで分かってしまう

時計はもう
見る意味がなくて
終電の話題を
誰も しない夜

近づくほど
遠ざかる理性
触れる前に
もう 熱を知る

キスの温度が忘れられない夜
愛とは 少し違う名前
戻れないことは
分かっているのに

大人になるほど
記憶は 正直で
忘れたいほど
確かに 残る

ハイヒールを脱ぐ音が
やけに 静かで
それだけで
心が ほどける

「今日は ここまで」
君は 笑って
続きは 想像に
預けたまま

優しさより
ずるさの方が
今夜は
よく 似合う

キスの温度が忘れられない夜
未来は 置いてきたまま
約束しない関係が
一番 フェアで

朝になれば
薄まることを
知っていながら
求めてしまう

もしも 若ければ
間違えていた
もしも 正しければ
会っていない

この温度だけが
今の 僕ら

キスの温度が忘れられない夜
名前を 呼ばない距離
触れた唇より
触れなかった時間

夜が終わる前に
何も 言わず
記憶だけを
そっと 連れて帰る

グラスは 空(そら)で
答えは ない
それでも
この夜は
確かに
熱を 持っていた


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