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渋谷スクランブルスクエアで「acrylic」に出会った 産業資材のアクセサリー

フィールドノート:No.7

アクセサリーとバッグ、別々に手が伸びた2つが、同じブランドだった

先日、渋谷スクランブルスクエアの2Fを通り抜けました。よく通り道に使うフロアで、デザインプロダクトの店「KONCENT」に立ち寄るのはこの日が2回目。今回は、アクセサリーを手にとってよく見ました。

ゴムのイヤリングに、目がとまった

目にとまったのは「acrylic(アクリリック)」というブランドです。

https://koncent.jp/view/item/000000001080?category_page_id=ct50

手にとった瞬間、素材に驚きました。ゴム、アルミ、アクリル。金属ではない。見た目は洗練されているのに、素材はどれもジュエリーショップの棚では見慣れないものです。ゴムのイヤリングは指先に吸いつくような摩擦があり、アクリルはつるりと滑らか。金属のアクセサリーを何千と触ってきた手には、どちらも新鮮な感触でした。

頭の中ではいくつかのことが同時に動きます。この素材なら金属アレルギーの心配がない。自分の会社のベーシックラインとは方向が真逆だ。何気なく価格を当てる遊びもやっていました。長年の癖です。

正直に言えば、少し悔しかった。量産の常識の中にいたときには、思いつきもしなかったアプローチです。

引き寄せられたバッグも、同じブランドだった

すぐ近くのバッグも気になり、手にとると驚くほど軽い。2wayで使えて手入れもしやすいと接客を受けながら、近々帰る実家の母親の顔が浮かびました。母親ならこれを選びそうだと思う2点を購入。

https://acrylic-online.stores.jp/items/6550b49773ce6e3dd35d07d7 https://acrylic-online.stores.jp/items/620f8b0ee3bbd176978bc182

ちなみに前回のプレゼントは、母からリクエストされたコム デ ギャルソンのエコバッグでした。70代後半でギャルソンを指名してくる母です。

購入を決めてから、気がつきました。別々に手が伸びたアクセサリーとバッグが、どちらもacrylicだった。意識していませんでした。ひとつのブランドに、別のカテゴリで2回引っかかる。これは何だろうと、帰り道に考えていました。

軸は「素材が主役」。産業資材に美しさを見出すところから始まっている

帰ってからサイトを見ました。

https://acrylic-online.stores.jp/

デザイナーの坂雅子さんは、建築設計事務所を経てグラフィックデザイナーとして活動し、ロンドン滞在中に独学でアクセサリーを始めた方です。きっかけは、建築の仕事場に溢れる建材や産業資材に魅力を感じたこと。2003年にブランドを設立し、2005年にはMoMAのミュージアムショップに選ばれ、2007年にWallpaper*誌のBest Jewelryを受賞しています。

軸は「素材が主役、デザインはシンプルで機能的に」。ソファーの張り地やスポーツシューズ用の生地に美しさを見出し、アクセサリーとバッグに仕立てる。金具を極力使わない構造には、建築とプロダクトの目線が入っています。

素材選びから製造まで日本国内で行う「ジャパンメイド」も、サイトで知りました。ここには素直に共感しました。2年前に譲渡した会社も、ある時期に取扱商品を日本製に限定しています。輸入品のほうが原価率は圧倒的に低い。それでも、国内メーカーの仕上がりは並べれば一目で分かり、コストを飲んだその判断が結果として会社を支えました。素材も方向もまるで違うのに、選択の手触りは重なります。

道具の選択肢は広がった。問われるのは、選ぶ目のほう

店頭で「3Dプリンターだろうか」と連想したのは、非金属素材と精巧な仕上がりの組み合わせからです。実際の製法は分かりません。ただ、この連想には背景があります。アクセサリーの製造で、3Dプリンターの存在感は年々大きくなっています。

型を使った量産の経済は、変わっていません。型代を回収するために数十個のロットを組むのがセオリーで、まとまった数ならいまも型が圧倒的に有利です。3Dプリンターが変えたのは、量産に乗らないデザインの運命のほうです。データさえあれば型代なしで1点から出力できる。一人の客のために一つ作ることが、経済的に成り立ち始めています。

acrylicの素材起点のものづくりと、3Dプリンターの1点出力。共通するのは、「何を選ぶか」が出発点にあることです。会社を経営していたとき、メーカーを選ぶ基準も最終的には手にとったときの仕上がりでした。道具は制約を外し、選択肢を広げます。その中から「これだ」を引き当てるのは、人の目と手のままです。

別々に手が伸びた2つが同じブランドだったのは、偶然ではなかったのだと思います。引っかかっていたのは商品ではなく、素材を選ぶ目のほうでした。


エイブリ|アクセサリー業界戦略ウォッチャー


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