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触覚の話。胎児から続く原始的感覚

今でこそ、「多感覚」で味わうアート作品は珍しくなくなってきた。
音が鳴ったり、匂いがあったり、触れたり。
展示のあり方も、ずいぶん変わってきたように思う。

けれど、自分がこのアートを始めた二十年ほど前、
「触って楽しむ作品」は、ほとんど見かけなかった。

ギャラリーでは、
「触らないでください」
という注意書きのほうが当たり前だった。

それが悪いという話ではない。
かくいう自分の作品も、
最初の個展では思ったような展示ができなかった。

苦し紛れに「触ってください」としたことで、
はじめて、お客さんの反応から
「触れる作品」の凄さを知ったのだけれど。

ここで、
触覚についての、
少し興味深い話を一つ

人間は、お母さんのお腹の中で育つ過程で、
目や耳、口といった器官が完成するよりも前に、
手を動かして、周囲を触りながら世界を確かめているのだそうだ。

もし、お腹の中に双子がいた場合、
自分以外の生命体がそこにいることを認識すると、
兄弟に対する触り方と、
子宮の壁に対する触り方が、
まったく違うものになるらしい。

誰かに触れる触り方と、
環境に触れる触り方。
人は、そんな区別を、
生まれる前から身体で覚えている。

視覚や聴覚に比べて、
触覚は、とても原始的で、基本的な感覚だと言われている。

だからこそ、
言葉や理屈を通り越して、
本能や無意識、感覚そのものに、
直接届くのかもしれない。

アート作品は、
難しく考えなくてもいいのだと思う。

意味を理解しようとしなくても、
評価しなくても、
ただ、感じてもらえればいい。

少なくとも、
自分の作品は、
そういうつもりで作ってきた。

触れることで、
何かが分かるのではなく、
何かが「起きる」。

その小さな変化に、
立ち会ってもらえたら、
それで十分だと思っている。


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