第三記録「欠落した時刻表」でやりたかったこと
見ている側から、見られる側へ
YOUTUBEにて現在制作している、
ALCAQUARTZ 第三記録「欠落した時刻表」を公開しました。
今回の第三記録で描きたかったのは、
未知の駅を発見することそのものではありません。
むしろ中心にあるのは、
「記録を調べていたはずの人間が、
いつの間にか記録の側に認識されている」
という感覚です。
直江透は、第二記録で見つかった
O.R.S. / 外縁記録駅 の波形を追っていきます。
同じ場所。
同じ時間帯。
同じ波形。
それらを揃えた時、現実の湖畔に、
別の記録層が重なって見え始める。
そこにあったのは、駅のような場所でした。
ただし、ここで出したかったのは
「異世界の駅を見つけた」という分かりやすい発見ではありません。
駅なのに、人を運んでいる気配がない。
時刻表のようなものがあるのに、そこに書かれた文字は読めない。
読めないのに、配置や周期や波形の重なりから、
何かの規則だけは分かってしまう。
この「読めないのに、意味があると分かってしまう」感じを、
第三記録では大事にしました。
完全に理解できるわけではない。
でも、ただの模様ではないことだけは分かる。
その中途半端な理解が、一番気持ち悪いと思っています。
今回、映像内に出てくる記号や石面は、
明確に読める文字としては扱っていません。
直江もそれを読めているわけではありません。
波形、配置、周期、機材ログ。
それらを重ねた結果として、
「これは記録が移動する時刻表のようなものではないか」
と推定しているだけです。
この“推定してしまう怖さ”が、今回の核です。
分からないものを、
ただ分からないまま見ているだけなら、まだ安全です。
でも、分からないはずのものに規則を見つけてしまうと、
そこから先はもう戻れない。
なぜなら、一度それを「意味のあるもの」として見てしまった瞬間から、
それはもう背景でも、偶然でも、ただの異物でもなくなるからです。
見なかったことにはできない。
気のせいだったと言い切ることもできない。
そして何より、自分が見つけた規則の中に、
自分自身が含まれている可能性を考え始めてしまう。
直江は今回、記録を観測しているつもりでいました。
湖畔に立ち、波形を調べ、映像を残し、機材ログを解析する。
けれど、物語の終盤で、その立場が少しだけ反転します。
見ていたはずの記録に、直江自身の存在が混ざり始める。
それは大きな事件としてではなく、
機材側のログに現れる小さな異常として出てきます。
派手な悲鳴や驚きではなく、
「今、自分は何を見たのか」
と手が止まるような怖さ。
血の気が引く、というよりも、その一歩手前。
血の気が止まるような感覚、とでも言えばいいのかもしれません。
まだ理解しきっていない。
でも、今見てはいけないものを見たことだけは分かってしまう。
直江という人物は、恐怖を大げさに表に出すタイプではありません。
怖がるより先に、黙って固まる。
理解したくないのに、理解してしまう。
第三記録では、その反応をできるだけ崩さないようにしました。
今回の話は、世界観の説明回ではありません。
外縁記録駅とは何か。
O.R.S.とは何か。
あの記録層は何なのか。
それらをすべて説明するよりも、まずは
「そこに何かがある」
「でも、それは人間のためのものではないかもしれない」
という感覚を残したかった。
だから、映像も説明しすぎない方向にしています。
現地では、青く光るUIや分かりやすい近未来的な表示を出さず、灰青の空気、水面、石、橋、軌道、塔のようなものを中心にしました。
向こう側の電気系統は、まだ死んでいる。
そこで何かが作動しているとしても、
それは現地の画面ではなく、
直江の機材ログや解析画面の中にだけ現れる。
解析画面に出てくる文字列も、完全に正確な表示ではありません。
記録層から拾い上げた情報を、
現代側の機材が無理に文字として復元しているため、
一部には表記の揺れや誤読のようなものが残っています。
それも含めて、直江が見ているのは“正しく翻訳された情報”ではなく、
“どうにか意味らしきものとして浮かび上がった記録”です。
その方が、現実の湖畔と記録層の境目が曖昧になると思ったからです。
AI生成画像を使う時も、単に「綺麗な異世界の風景」として見せるのではなく、作品内の記録として成立させることを意識しています。
この映像は、観光映像ではない。
誰かが残した記録であり、誰かが見つけてしまった記録であり、場合によっては、こちらを見返してくる記録でもある。
第三記録「欠落した時刻表」は、
直江が外縁記録駅を理解し始める回であると同時に、
直江自身が記録の中に見つかり始める回でもあります。
見ている側だったはずの人間が、
いつの間にか見られる側になっている。
その瞬間の気持ち悪さを、今回の一番奥に置きました。
本編では、最後に短い通知が届きます。
その一文によって、
直江が見ていたものの意味が少しだけ変わります。
第三記録「欠落した時刻表」、公開中です。
まだ読めないものを、なぜか理解してしまう。
その怖さを見てもらえたら嬉しいです。
動画をそっと置いていきます。
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