見出し画像

1 教え子たちが可愛すぎて辛いんです

↓ 設定はコチラから

↓ シリーズのその他の物語はコチラから




新卒で入った会社はそれなりの大企業だったけど、なんとなく反りが合わなくて1年足らずで退職した。


さらになんとなく、といったら怒られるかもしれないけど、大学は教育学部で教員免許も持ってたから、教員採用試験を受けて、とある私立高校に教師として雇ってもらえた。



一度は夢見た教職という仕事。


次代を担う学生たちに、なにかを伝えられれば嬉しい。


なんて、高尚な気持ちも無きにしもあらず。



ただ、そこまでの熱意があるタイプではない。


目立たず、でもなめられず。



程々の教師生活を謳歌しようと思っていたのだが…




咲月「おーい! 〇〇センセ!」



あー、めんどくさいやつの声が聞こえる。


放課後の外階段の踊り場で束の間の休息をとっていたのに、眼下から聞こえてきた女生徒の声に、気持ちが落ちる。



咲月「あー、あれ今絶対めんどくさいとか、思ってるよ?」



なんで心の声読むんだよ。

せっかく聞こえないふりしてるのに。



いろは「えー、そうかなー? 〇〇先生ー。あれ? 聞こえてないのかな?」



茉央「いや、あれはめんどくさいから無視しとるだけやな〜」



そのとうりです。

君たちに絡まれると面倒だ。

ろくなことがない。


咲月「よーし、そっちがその気なら、目一杯の大声で…!」


嫌な言葉とともに、息を大きく吸い込むような仕草を視界の隅にとらえて、〇〇はこれ以上は面倒事が大きくなると観念して彼女たちに視線を向けた。



〇〇「おー、聞こえてるぞー」



眼下では予想通りというか、教え子である3人の女生徒が見上げるようにして立っていた。

咲月「もう! 遅ーい! 絶対無視してたでしょ!」

いろは「やっほー、〇〇先生ー!」

茉央「なにしてるんー?」



菅原咲月に奥田いろは、そして五百城茉央。

3人とも〇〇が副担任を務めている2年A組の生徒たち。


3人とも三者三様の美しさや可愛らしさをもつ美少女。

男女問わずその絶大な人気から、誰が呼び始めたのか、ついたあだ名は「清新の三姫」


今どきの女子高生というのは恐ろしいものである。


〇〇が同じ高校生なら絶対に惚れていただろう。



ただし、今は教師である。

年齢だって30歳。

理性を忘れてはいけない立場なのだ。




それに、そこまで恋愛とかに熱をモテるタイプでもない。




咲月「おーい! 〇〇センセー、聞いてるー?」




咲月の声で我に返る。



〇〇「おー、聞いてるよー」


茉央「これから茉央たちカラオケ行くんやけど、〇〇先生も来ーへん?」


〇〇「残念、先生は仕事中なのです。楽しんでいってこい」


いろは「えー、残念だなー」


咲月「サボってるくせに!」


〇〇「サボってねーよ。こうして、生徒たちに異常がないか確認してるんだよ」


茉央「ほんまに〜?」


〇〇「ほんまほんま」


茉央「エセ関西弁やめーや」


〇〇「はは、悪かった。さ、気をつけて帰れよ」



〇〇は手をヒラヒラと振りながら三人に背を向けて、階段の踊り場に背をもたれかからせる。





ようやく静かになった——と思ったのも束の間。



咲月「……で、ほんとは暇なんでしょ?」


〇〇「うおっッ!!?」


いきなり階段の影から声がして、思わず素っ頓狂な声が出た。


我ながら恥ずかしい。


よく見ると茉央といろはの姿もある。


〇〇「戻ってくるなよ! 帰れよ!」


咲月「いやいや、なんか先生が寂しそうな顔してたから〜?」


〇〇「んなわけ」


してない。

断じてしてない。


いろは「ねぇ〜、いいでしょ〇〇先生。生徒と交流するのも先生の立派な仕事だと思うな〜」


〇〇「否定はしないが今は仕事中なの。誘ってくれるのは嬉しいが三人だけで行ってきなさい」


茉央「ほんまは茉央たちと行くのイヤなんちゃう〜?」


咲月「えー!? こんな美少女3人が誘ってるのに嫌なの!?」


〇〇「いや、何も言ってねーし。五百城もへんな誘導やめなさい」


茉央「あかん、バレたか」


やはり確信犯か。


咲月「でもでも、私たち可愛いですよね?」


そういうと、三人は謎のポーズをとる。


うん、


まぁ、


ポーズは意味わからんが


〇〇「はいはい、三人とも可愛い生徒だよ」


咲月「きゃー! カワイイって!」


茉央「あたりまえやん///」


いろは「えへへ〜、カワイイかか〜」



いや、可愛いかよ。

……いやいや、可愛いとか思うな俺。



仮にも教師だぞ。



そう

生徒として可愛いという意味なのだ。

 

可愛い生徒




咲月「でさ、先生。私たちとカラオケ行かないんだったら、代わりに——」


〇〇「代わりに?」


咲月「先生の恋バナ聞かせてよ!」


〇〇「なんでそうなるんだよ!」



あまりに唐突な提案に思わずツッコむ。


いろは「えー、いろはも気になる〜! 先生って彼女いるの?」


茉央「おるん? おるん?」


3人の視線が一斉に刺さる。


なんだこの尋問。


〇〇「いないよ。仕事忙しいし」


咲月「えー、絶対嘘! 先生ってさ、なんかこう……ほら、優しいし?」


いろは「ちょっと抜けてる感じもするけど、頼りになる感じするし?」


茉央「顔もアリよりのアリ? 上の下の上の中って感じやしな」



褒めてるのか貶してるのかよくわからん。


〇〇「とにかく、先生は仕事中。はよ帰れ」


咲月「ちぇー、はいはーい。じゃあ行こっか、二人とも」


いろは「うん!」


茉央「ほな、また明日なー!」



〇〇「気をつけて帰れよー」



〇〇が三人を見送る。


三人が階段を降りていき、校門の方へ歩き出す。



〇〇「さて、真面目に仕事するか」


誰に聞かせるでもない独り言を残して、職員室へと足を向けた。




その瞬間



咲月「先生ー!」


さ咲月の声がして振り向く。


咲月「……ねえ」

いろは「うん」

茉央「せーので言う?」



三人は顔を寄せ合って、小さく笑う。



せーの——



咲月・いろは・茉央「「「〇〇先生、またねー!」」」



屈託のない笑顔でそう言いながら手を振る三人。



〇〇は手を振り返す。






やがて、三人の姿が見えなくなった。




〇〇「ったく、カワイイかよ……」


はぁ……。


ほんと、あいつらは——






教え子たちが可愛すぎて辛いんです。








つづく

※この物語はフィクションです。
※実在する人物などとは一切関係ございません。

いいなと思ったら応援しよう!