#10 自社のDXは、どこで止まっているのか|建設会社の「現在地」を確認する8つの問い
「DXの施策はいくつも進めている」
「新しいシステムも導入している」
「生成AIやBIMの活用も検討している」
それでも、
「会社としてDXが進んでいる実感があまりない」
ということがあります。
DXが進まないと、新しいツールを探したり、新しい施策を追加したりしたくなります。
しかし、必ずしも「施策が足りない」ことが原因とは限りません。
例えば、
やりたい施策は多いが、何を優先するのか決まっていない。
AIを使いたいが、必要な資料やデータが整理されていない。
DX担当者はいるが、現場・経営・ITの間で判断が止まっている。
PoCやシステム導入は進んでいるが、成果が出ているのか分からない。
といった状態もあります。
同じ「DXが進まない」という状態でも、どこにボトルネックがあるのかによって、次に考えるべきことは変わります。
だからこそ、新しい施策を考える前に、
「自社のDXは、今どこで止まっているのか」
を一度整理してみることが重要です。
今回は、建設会社のDXの現在地を見るうえで確認したい4つの領域と、8つの問いを整理します。
1.「方向性」で止まっていないか
DXについて議論すると、
「生成AIを使いたい」
「BIMをもっと活用したい」
「施工管理をデジタル化したい」
「経営ダッシュボードをつくりたい」
といった施策が数多く出てくることがあります。
これは悪いことではありません。
問題は、それぞれについて、
「なぜ、その施策をやるのか」
が曖昧な場合です。
例えば「生成AIを導入する」という話でも、
施工計画書の作成時間を減らしたいのか。
過去の施工知見を探しやすくしたいのか。
社内問い合わせを効率化したいのか。
によって、必要な仕組みも進め方も変わります。
BIMも同じです。
「BIM活用を拡大する」だけでは、何をもって前進なのか判断しにくくなります。
設計・施工間の情報連携を改善したいのか。
積算や施工計画までデータを使いたいのか。
手戻りを減らしたいのか。
目的によって、優先すべき取り組みは異なります。
施策が多いにもかかわらずDXが前に進まない場合、施策不足ではなく、
「会社として何を変えたいのか」と「個々のDX施策」が十分につながっていない
ことがあります。
2.「業務・データの土台」で止まっていないか
やりたいことは明確でも、それを実現するための土台が整っていないケースもあります。
例えば、
「過去の施工資料を生成AIで検索したい」
と考えたとします。
ところが、
資料が現場ごとのフォルダに分散している。
保存場所が統一されていない。
ファイル名の付け方が人によって違う。
必要な情報が紙や個人のExcelに残っている。
という状態では、AIの性能以前に、情報を使える状態にすることが課題になります。
経営データの可視化でも同じです。
ダッシュボードを作りたいと思っても、
支店と本社で数値の持ち方が違う。
同じ情報を複数のExcelへ入力している。
必要な数値が月末にならないとそろわない。
といった状態であれば、画面を作るだけでは解決しません。
BIMを設計から積算、施工へ展開する場合にも、部門ごとにデータの持ち方や業務の進め方が異なれば、その間を整理する必要が出てきます。
つまり、
「DX施策が進まない」という問題に見えて、実はその前にある業務や情報の状態がボトルネックになっている
場合があります。
この状態で新しいツールを追加すると、既存の複雑さの上に、さらに仕組みを重ねてしまう可能性があります。
3.「推進の仕組み」で止まっていないか
DX担当者を置いた。
DX会議も開催している。
現場から改善案も上がっている。
それでも施策が進まないことがあります。
この場合、
「担当者がいない」のではなく、
企画する人、判断する人、実行する人、実際に使う人の間が分断されている
ことがあります。
例えば、現場から改善要望が出ても、
誰が全社課題として取り上げるのか分からない。
DX担当者が施策を考えても、投資判断をする人につながらない。
システムを導入しても、業務部門側で定着を進める人がいない。
といった状態です。
特に建設会社では、現場、支店、本社、設計、施工、営業、情報システム、管理部門など、多くの立場が関係します。
また、個別の現場では有効だった取り組みでも、工種や発注者、現場条件、既存の運用などが異なれば、そのまま他の現場へ展開できるとは限りません。
そのため、一人のDX担当者が頑張るだけでは解決しにくい問題もあります。
重要なのは、DX推進部門がすべてを実行することではありません。
それぞれの関係者が役割を持ちながら、企画から判断、実行、利用までが途切れない状態になっているか。
ここもDXの現在地を見るうえで重要なポイントです。
4.「成果の判断」で止まっていないか
DX施策そのものは、かなり動いている会社もあります。
PoCを何件も実施している。
新しいシステムを導入している。
生成AIのアカウントを配っている。
研修も行っている。
それでも、
「DXは進んでいるのか」
と聞かれると、答えにくいことがあります。
理由の一つは、「活動」と「成果」が混ざっていることです。
システムを導入した。
PoCを実施した。
研修に多くの社員が参加した。
これらは重要な活動ですが、それだけで業務が変わったとは限りません。
例えば、
作業時間が減ったのか。
二重入力がなくなったのか。
必要な情報を早く確認できるようになったのか。
現場や管理職の判断が速くなったのか。
品質や安全性の向上につながったのか。
といったところまで見ると、評価は変わる場合があります。
また、DX施策には、
続ける。
広げる。
見直す。
やめる。
といった判断も必要です。
「取り組んだか」ではなく、「何が変われば成果なのか」が曖昧なままでは、次の投資判断も難しくなります。
DX施策は動いているのに前進している感覚が薄い場合、成果の捉え方が一つのボトルネックになっている可能性があります。
8つの問いで、自社の現在地を確認してみる
ここまでの4つの領域について、簡単な問いにすると次のようになります。
方向性
1.DX施策について、「何を導入するか」だけでなく、「どの経営課題・業務課題を変えるための施策か」を説明できるか。
2.複数あるDX施策について、「なぜこの施策を優先するのか」を説明できるか。
業務・データ
3.DXやAIを導入する前に、対象となる業務の流れや課題が整理されているか。
4.DXで利用したい情報が、どこにあり、誰が管理しているのかを把握できているか。
推進
5.DX施策について、企画する人、判断する人、実行する人、使う人が明確になっているか。
6.現場から出た課題や改善案を、必要に応じて全社の施策へつなげられる状態になっているか。
成果
7.システム導入やPoC実施以外に、「業務がどう変われば成果なのか」を説明できるか。
8.施策の結果を見て、継続・拡大・見直しなどの次の判断ができる状態になっているか。
すべてに「Yes」である必要はありません。
また、この8問だけで会社のDX成熟度を正確に診断できるわけでもありません。
ただ、「No」や「分からない」が多かった領域は、一度整理してみる価値のある領域かもしれません。
なお、この4つの領域は独立しているわけではありません。
例えば、方向性が曖昧なために成果を定義できなかったり、業務やデータの課題が推進を難しくしていたりすることもあります。
複数の領域が互いに影響しながら、DXが進みにくい状態を生み出している場合もあります。
DX診断で重要なのは、「点数」より「なぜ止まっているか」
セルフチェックをすると、どうしても点数をつけたくなります。
しかし、DXの現在地を見るうえでは、単純な点数だけでは分からないこともあります。
例えば、「推進体制は明確か」という問いに対して、
経営層は「明確だ」と考えている。
DX担当者は「ある程度明確だ」と考えている。
現場は「誰に相談すればよいか分からない」と考えている。
ということもあり得ます。
この場合、平均点を出すこと以上に、
同じ会社の中で、立場によって認識が違っていること
そのものが重要な情報になります。
また、「データが整理されていない」という症状の背景に、
業務が標準化されていない。
システムが部門ごとに分かれている。
入力するメリットが現場にない。
といった別の原因が隠れている場合もあります。
自社内だけで整理することが難しい場合には、経営、DX担当者、管理職、現場など、複数の立場から同じ論点を確認し、その認識の違いを見ることも一つの方法です。
「できているか」だけでなく、「誰から見るとできていて、誰から見るとできていないのか」を確認する。
そうすることで、表面上は見えにくかったボトルネックが見えてくることがあります。
本格的に現在地を確認するときには、
どこで止まっているのか。
なぜ止まっているのか。
どの課題から手を付けるべきなのか。
まで見ていく必要があります。
新しい施策を増やす前に、「現在地」を確認する
DXが進まないとき、新しい施策を追加することが必要とは限りません。
方向性なのか。
業務・データの土台なのか。
推進の仕組みなのか。
成果の判断なのか。
あるいは、複数の問題が重なっているのか。
同じ「DXが進まない」という状態でも、その背景によって次に考えるべきことは変わります。
だからこそ、次の施策を考える前に、
「自社のDXは、今どこで止まっているのか」
を一度整理してみる。
その現在地が見えてくると、施策を増やすことではなく、自社にとって本当に必要な次の一手も考えやすくなるのではないでしょうか。
もう少し具体的に、自社の現在地を確認してみる
この記事では、自社のDXについて考えるための8つの問いを紹介しました。
もう少し具体的に振り返りたい方向けに、「方向性」「業務・データ」「推進の仕組み」「成果」の4つの領域から、現在地を整理する簡易チェックも用意しています。
16項目・約5分、登録不要です。
▶ 16項目でDXの現在地をチェックしてみる
https://check.kuminasu.com/?src=note10
※DX成熟度を点数で評価するものではなく、自社で次に確認したいポイントを整理するためのセルフチェックです。
