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小さな動物園が教えてくれた、「わからないまま向き合う」ということ。

「動物たちがほんとうに幸せかどうかは、わかりません」

大牟田市動物園の飼育員さんの言葉に、心が静かに震えた。それは、忘れかけていた古い記憶が蘇ったからだった。

私は、2015年から大牟田市動物園の魅力を伝えるフリーペーパーを制作している。福岡県の南端にあるこの小さな動物園の特徴は、「動物福祉」…わかりやすくいえば、「動物の幸せ」を重視した飼育を行っていること。その理念に基づいて、動物園の定番である「モルモットのふれあい」をやめてしまった。

大牟田市動物園では、時間になると、モルモットのおうちとふれあい広場のあいだに橋がかけられる。広場に来たいモルモットだけが、その橋をわたってやってくる。気分次第で「出勤」できるようになっているのだ。

ふれあい広場からおうちへもどるモルモットたち。広場に来たいモルモットだけが「モルロード」を渡ってやってくる(撮影・中村紀世志 / 2017年)

モルモットを膝にのせたり抱っこしたりする「ふれあい」はなくなったが、モルモットたちが橋をどどどっと駆けてくる姿や、広場で気ままに過ごす様子が「かわいい」と、来園客にも人気のイベントとなっている。

モルモットを囲む人たちの笑顔を見て、私は、「動物たちの快適さ」と「来園客の楽しさ」を両立させることはできるのだと胸がいっぱいになった。

大牟田市動物園の飼育員さんたちは、科学的な視点で観察を行い、動物福祉のために日々力を尽くしている。それでも彼らは「動物たちがほんとうに幸せかどうかはわからない」と言う。

その言葉を聞いて思い出したのは、今から20年以上前のことだった。

その頃私はハムスターを飼っていた。しかし私の経験不足のせいで、その子を長生きさせてやることができなかった。その子が死んだ時、私は、自分でもびっくりするくらい大きな声で泣いた。手のひらに乗るほど小さな命の、とてつもない重みを知った。「あの子は幸せだっただろうか?」という疑いが、ずっと心につっかえていた。

「あの子の言葉をきけたら… もっと理解できていれば…」

動物は人間とは異なる種の生き物で、人の言葉を話すこともできない。大牟田市動物園の皆さんが「動物と完全に理解し合うことはできない」という前提のもと、動物の幸せと向き合う姿に胸打たれた。

現在、動物福祉は全国に広まりつつある。動物園に足を運ぶことで、自然と「動物の幸せとは何か」を考えられる人が増えていくのだと思う。そうなれば、私のように後悔する人は減っていくだろう。

動物がほんとうに幸せなのか、私たち人間にはどうしたってわからない。
けれど、それを理解しようとする試みは、きっと動物の幸せにつながるはずだと信じている。

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