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ただの買い物のつもりが、92歳のおばあちゃんに「幸せ」を教わった


スーパーのレジ待ちで出会った、92歳のおばあちゃんに教わった「幸せの秘訣」の話です。

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土曜日は、息子と一緒にカネスエに行くのが恒例。
1週間分の食材をまとめて買うので、カゴは毎回パンパン。
野菜に肉、牛乳、パン、ヨーグルト……入れるたびに山が高くなっていく。

この日もいつものようにカネスエに行ったら、予想通り混雑していた。
駐車場は満車、店内は人でいっぱい。
レジの列は、お魚コーナーあたりまでびっしりと伸びていた。
(はあ、詰んだ)

3歳の息子とこの長蛇の列に並ぶのは、なかなかの試練だ。
でも山盛りに積まれた食材を1つずつ返す余裕もない。
他に選択肢はなく、ため息をつきながら、最後尾へとカートを押した。

列が少しずつ進んでいく。
飲料コーナーから、製菓コーナーへ。
まだー?」と聞きながら、チラチラと私の顔を覗き込む息子。
そんなとき、私たちの後ろに、ひとりのおばあちゃんが並んだ。


息子はおばあちゃんっ子なので、見知らぬおばあちゃんを見るとすぐににっこり笑う。
今回もそれで、その笑顔に気づいたおばあちゃんも、
ふわっと顔をほころばせて、話しかけてきた。

「いい笑顔するねえ。何歳?」
「3歳です」
「一番かわいい時期やねえ」

ありがたい言葉にお礼を言うと、
おばあちゃんはにっこりして、さらりと言った。

「私はね、92歳なんよ」

「えっ……!」
思わず声が出た。

どう見ても70代くらいにしか見えない。
腰は少し曲がっているけれど、自分の足でしっかり立っているし、耳も遠くない。
うっすらお化粧もしていて、薄紫色のガーゼの羽織を着た、おしゃれなおばあちゃんだった。

「92歳には見えないです。本当にお元気ですね!」
「そうでしょう」
おばあちゃんは、いたずらっぽく笑って続けた。

「元気の秘訣、なんだと思う?」


「食生活ですか?」と答えると、
おばあちゃんは「それも大事やけどね」と言って、少し間を置いた。

「一番はね、幸せな人生を送ることやよ」

その言葉に、私は思わず立ち止まったような気がした。
だって、自分の人生が幸せかなんて振り返る日常はなかったからだ。
幸せかと言われたら、きっと幸せなんだと思う。
でも、それを自分で考えたり、振り返ったりすることなんてなかった。

「幸せ…かあ。幸せって例えば?」

「家族と一緒におることやねえ」

おばあちゃんは目を細めて話しはじめた。

「うちは今、4世代で暮らしてるんよ。
子ども、孫、ひ孫までみーんな同じ家におってね。
毎日、誰かしらの声がする。
笑ったり、けんかしたり、泣いたり、にぎやかで大変なこともあるけど…
その声を聞いとるだけで、ああ幸せやなあって思うんよ」

レジの列が少し進む。
おばあちゃんの言葉に耳を傾けながら、私はカートを押した。
隣で息子が「まごってなあに?」とつぶやく。

「そうそう、あんたくらいの子もおるよ」とおばあちゃんが笑うと、
息子もニコッと笑みを返す。


「嫌なことも、そりゃああったよ」とおばあちゃんは続けた。
「でも、なんでも楽しもうと思えばね、あとで笑えるんよ。
笑ってるとね、不思議と身体も心も元気になるんよ」

いつのまにか列が進んで、気づけばお会計は次だった。

私はふと気づいた。この買い物の時間、いつもなら「早く進んで…」とイライラしているはずなのに、
今日は全然そんな気持ちにならなかったこと。

そのおばあちゃんと息子はハイタッチをして、別れた。

会計を終えて店を出ると、息子は私の手を握りながら言った。

「おばあちゃんだいすき〜〜〜〜」

「うん。ママも。またあのおばあちゃん会いたいね。
来週も、会えるかな?」

92歳のおばあちゃんに教わった、幸せの秘訣。
私も、あのおばあちゃんみたいにやわらかい笑顔で、
「幸せな人生だった」とシワシワの笑顔で言えるように、
日々の中で幸せを考えられる人でいたい。

スーパーのレジ待ちで起きた、思いがけない小さな出来事だった。


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