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見るみない自由


 帰路、東の今日を皺くちゃに折り畳んだ。何万回と繰り返す内の幾つかが、良くも悪くも占める。思考、試行。エスカレーターはモノトーンで満ち、むわりと曇る視界、真横の階段を上った。
「メトロ」ノームの様に正しいとされる速度で。
 ラムネに沈む、風待ち月、泥と植物の匂い、隙間を潜り抜けると言うよりは下りるべく、擦れ違う混沌の数秒、その顔貌は記憶に残らない。精々、服装程度であろう。

 だがしかし、それがもし私自身だとしたら?

 こちら側は所謂「ありのまま」、あちら側は「なりたい」。分身や幻影ではなく、どちらの姿も自分だ。
 ーーひとり、ふたり。一段、二段。現在、将来。
 成長または大変身を遂げており、全く気が付かずに階段を上下するかも知れない。
 ーー自宅付近、学校、職場、繁華街、駅等の外出先で、向こうを誰かと思い込んでいる、だけ?
 これに対し、恐れのどきどき、希望のわくわく、人によるが、
『有り得ない』ときっぱり否定できるだろうか。

 といった話を壁一面の彫刻、カメレオンが聞かせ、虹色に惑う。
「おっと。顔が気になっても『危険ですので』急に振り返ったり、立ち止まるな。今は進めよ」

 見るも見ないも自由、理想の私。
 ひょっとして、そこのあなたは。