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手頃な首飾りにご注意を


 昨日、330円でネックレスを買った。値段に見合ったフェイクパールだが、大き過ぎず主張もなく丁度いいサイズの品だ。
 先週木曜日、閉店間際に立ち寄った古着屋の奥にささやかなアクセサリーコーナーがあり、そこで見つけた自分は何て買い物上手なのだろうと浮かれていた。


 その上、この古くて新しいネックレスをつけて家を出ると、バス・電車どちらもガラ空きで自由に座れたり(朝夕と混む筈の時間帯でも)、仕事が捗って、接客業のくせに普段は笑いもしない店長から褒められたり、いつしか音信不通になってしまった中学時代の友人と近所のスーパーマーケットで再会したりする。


 反対に、別のチョーカーなどをつけると良いことは何ひとつ起こらず、ひどく平凡かつ退屈な自分に戻った。
 と、なればパールのネックレスを毎日つけるしかなかろう。喜んで幸運を受け入れ、笑顔溢れる日々を過ごす──世の中はそれほど甘くない。


 唇の色が消えている。
 化粧を落とした際、あまりの真っ白さに鏡を見て仰け反りそうになった。
 特に前兆はなく、体調も良好、ただ、白い口紅を塗ったようで奇妙に思える。


 他にも、ブラックのシンプルなダウンジャケット、マスタードカラーの鮮やかなニット、ブロックチェックが可愛らしいワイドパンツ、靴下とショートブーツ、部屋に置いてあったメンダコのぬいぐるみ、バスタオル数枚から見事に色が奪われた。


 当初あのネックレスのせいだとは考えていなかったが、ネックレスがほんのり吸い取った色を帯びてきた時点で恐ろしく、対処法をインターネットで調べてマンションの裏庭に埋める。


 こうして事なきを得るも、今頃、完全に染まり、次はカラフルなパールのネックレスとして地面から這い上がってくる様子が目に浮かび、鳥肌が立った。