キリング・ミー・ソフトリー【小説】64_ないものねだる
やっとシャトルバスにて全員再会する。
なにぶん大所帯なので2人ずつに分かれ、予想通り淳と座りたがっためいを引き剥がす。可哀想だが、南から協力して欲しいと頼まれた以上は仕方ない。
「淳は俺と一緒ね。えーっと、大学のあれ、聞きたいんだけど。」
明らかに無理のある言い訳を捻り出した。
自動的にきのピは勇吾と座ることになる。
友人が結局は丸々1日、特定の異性に付き纏ったのを彼女はどう捉えているのやら。
勇吾と囁くように話した後こちらにメッセージを寄越し、席を蹴った。
『は?なんでめいと南ちゃんなわけ?空気読めよ』
責め立てられても困る。
恐る恐る淳の顔色を窺うと悠長にパズルゲームアプリで遊んでいた。マイペースクソ野郎。
『南ちゃんが、めいちゃん気に入ったっぽくて。帰りぐらい良くね?俺あいつらとバンドやってるし両方とも大切な友達なんだよ』
板挟みと化す地獄を少しでも察せ。
通路の反対側、斜め前に視線を移すと南は愛犬の写真をめいに見せて好奇心を唆り、かわいい、今いくつ、どんな名前なの?まんまと釣られためいが次々尋ねる。
ワンチャン狙いだけにワンちゃんってか。
『淳はどーでもいいみたい』
『なにあいつ、ふざけんな。めいは淳が好きなんだよ』
それは言うに及ばず、されど勝手に曝け出して良い情報ではなかろう。
猛るきのピを抑え、くれぐれも喧嘩にはなりませんようにと祈りつつ淳に声をかけた。
「……あのさあ、ここだけの話ね?南ちゃんがめいちゃんのこといいかも的な感じで褒めてたんだわ。」
「へえ。ま、いんじゃない?南ちゃん、イケメンだし押せばどうにかなれそう。」
「じゃなくて!……あー、ごめん。淳はめいちゃんと仲良しっつーか。なんとも思わねえの?」
「人の気持ちってどうしようもなくない?」
淳が欠伸をしながらスマートフォンを膝に置く。まさに大正解、操れるものなら苦労せず。
諦めて後ろを振り返って頭を下げる。
『現状、淳は変わらん』『あんなにアピってもダメ?どんだけ草食系だよ。めいは南ちゃんと付き合った方が幸せ』『リピートアフタミー。淳からのありがたーいお言葉、人の気持ちってどうしようもなくない?』『それな!正論かますなよ』
絶妙なバランスで成り立つ三角関係は一体どこへ向かう?
これから先も友情は無事に続くのだろうか。
バスと恋心が揺れる。
