「言語学的に見るaとtheの使い分け」英文法の小話(2)
こんにちは!えいごはかせです。
英語学習上級者になっても、使い分けるのがなかなか難しい、冠詞の a とthe。
前回の記事では、使い分けのポイントとして「相手が自分と同じ対象を特定・認識できているか」という点をお伝えしました。
今回は「対象の特定」について、言語学的な視点で解説してみようと思います。
マニアックな話なので、えいごはかせの自己満足かも(笑)
基本的に、冠詞は、聞き手/読み手が、話し手/書き手と同じ対象を特定・認識できていれば "the"、できていなければ "a"を使います。
相手が対象を特定しているかどうかを示す性質を、言語学では「定性 (definiteness)」と呼びます。
相手が自分と同じ対象を特定している状態は「定 (definite)」、特定していない状態は「不定 (indefinite)」です。
英語では、「定」の状態の対象は、定冠詞 the を使って表すのがルール。
つまり、"the" を使うということは、聞き手/読み手と話し手/書き手が対象を共有している状態であることを意味します。
もし「不定」の状態で "the" を使われたら、聞き手/読み手はびっくりしてしまうかも。
ちなみに、英語では定冠詞のことを "the definite article"といいます。
「対象の特定」という点において、言語学ではもうひとつ重要なコンセプトがあります。
それが「特定性 (specificity)」。
「特定性」と「定性」はどう違うのでしょうか?
言葉は難しいですが、とてもシンプルな違いです。
「定性」は「読み手/聞き手が同じ対象を特定できるか」に焦点を当てている一方、「特定性」は「話し手/書き手の中に、特定の対象があるか」を示す性質です。
話し手/書き手の頭の中で、特定の対象が浮かんでいれば「特定 (specific)」、特定の対象がなければ「不特定 (unspecific)」となります。
そして、英語では「特定性」は言語的な違いとして表れません。
つまり、「特定」でも「不特定」でも、英語では同じ表現になるということ。
ここが、冠詞の使い分けで一番迷うポイントかもしれませんね。
以下の例を見てみましょう。
Mary wants to marry a doctor, though she doesn't like him.
Mary wants to marry a doctor, though she hasn't met one yet.
1も2も、「メアリーは医者と結婚したい」という主旨の文章ですが、「特定性」には違いがあります。
1の場合、"a doctor" はメアリーが好いていない医者であり、メアリーの頭の中には、誰か特定の人物が浮かんでいます。
つまり、ここの "a doctor" は「特定」です。
一方、2の場合、まだ出会ってないけど医者と結婚したい、という意味なので、メアリーの中には特定の人物がおらず、"a doctor" は「不特定」です。
このように、「特定」であっても「不特定」であっても、表現としては、”a doctor” となり、英語では「特定性」の違いは言語表現に表れません。
どちらの場合も、読み手にとっては「不定」であり、不定冠詞 (the indefinite article) をつけます。
今回のお話のポイントは、「自分が対象を特定している」ことと「相手が同じ対象を特定できる」というのは、言語的にまったく違う性質であるということ。
自分が対象を特定していても、相手がそうでないなら、定冠詞 the は使えないんです。
小さい子どもは、「特定」の対象なら何でも "the" を使ってしまうことがよくあります。
これは、認知機能がまだ十分に発達しておらず、「相手にとって特定できるものかどうか」という視点がないため。
認知機能の成長とともに、「定」「不定」の概念を身につけていきます。
わたしたち英語学習者は、大人として、なるべく冠詞を正しく使っていきたいですね!
今回は言語学の少し難しい話でしたが、冠詞の使い分けのヒントになれば幸いです。
《今日覚えたい英文法ルール》
「不特定で不定」の対象には、不定冠詞 a を使う。
「特定で不定」の対象にも、不定冠詞 a を使う。
「特定かつ定」の対象に、定冠詞 the を使う。
(わたしは勉強したことがないのですが、サモア語には「特定性」を区別する冠詞があるそうですよ!)
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