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自分を大切にするために、食べながらは歩かない

人生の中で何度も読み返している本の中のひとつに、『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~』がある。有名な本なので、読んだことがある人も多いのではないかと思う。フランスの貴族の家にホームステイすることになったカリフォルニア出身の主人公が、ホームステイ先のマダム達の暮らしぶりを見て、生き方を学んでいくというお話。

日常を過ごしている中で、たまに、この本の中に出てくる「食べながら歩くなんてあり得ない!」というワードが頭をかすめる。

どうしても次の予定までの時間がないから、どこかのお店に入って腰を据えてランチはできそうにないのだけれど、どうしても何かをお腹に入れておかないと、午後からの予定を考えると空腹で具合が悪くなってしまいそう……みたいなタイミングが、稀に訪れる。そういう時、最終手段として、コンビニで買ったおにぎりを食べながら歩いたり、駅のホームのベンチに腰掛けてサンドイッチを食べることもあった。お行儀が悪いと分かっていながら、そうせざるを得ないことが、わたしの人生の中で度々あった。

先日も、たまたまそんなタイミングが訪れた。前の予定から、次の美容院の予定まで、移動時間しか余裕がなさそう。美容院はカットとカラーとスパの予定で3時間コースだから、それまでに何か食べておきたいけれど、どうしてもお店に入って食事をする時間を取ることができなさそう。「仕方ない、コンビニのおにぎりをその辺で食べるか……」なんて、考えていた時に、やっぱりこの言葉が頭をかすめた。

「食べながら歩くなんてあり得ない!」

ものを食べるときは、食べることに意識を集中するべき。だって、食べるというのは自分の体内に食べものを取り込むことだから。それには洗練されて礼儀にかなったマナーが必要だ。地下鉄のなかでものを食べるなんて、マナー違反もいいところ。どうしても間食をしたいなら、時と場所をわきまえて、きちんとしたマナーを心がけよう。カフェに入って席に着いて、カプチーノとクロワッサンを楽しんではいかが?

『フランス人は10着しか服を持たない』Chapter1 間食はシックじゃない より

歩きながら、スマホの画面で時間を確認する。速足で歩いて、1本早い電車に乗れたら、目的地で20分くらい余裕が生まれそう。20分あれば、パン屋さんのイートイン席で何かしら食べることができるかもしれない。

というわけで、急いで電車に乗り込み、目的の駅にたどり着き、美容院の近くにあったベーカリーカフェ「VIE DE FRANCE」でハッシュドポテト&オニオンのパンを注文して座って食べた。柔らかなパンにどんと挟まったハッシュドポテトに、添えられたザクザクのオニオンの相性が抜群で、サルサソースとケチャップとチェダーチーズがうまい具合に絡んでとてもおいしいパンだった。ボリュームもあったので、わたしのお腹もいい感じに満たされた。

きっと、歩きながらコンビニのおにぎりをむしゃむしゃと食べていたら、「サルサソースとチェダーチーズが……」なんて感想、全く抱かなかったのだろうと思う。
ちゃんと座って、目の前のパンをありがたくいただいたからこそ、しっかり自分のエネルギーになったような感じがしている(何かしながらの食事って、何を食べてるのか分からなくなるときない……?なんか、そういう食事の仕方が嫌で……マダムが言うところの「シックじゃない」感じがする)。

妥協してコンビニのおにぎりを食べながら歩くことにならずに済んで良かった。ちゃんと席に座って、落ち着いて美味しいパンを食べることができてよかった。

小さいことかもしれないけれど、こういうひとつひとつの日常の行為をないがしろにしないだけで、「自分のことを大切に扱っている」という感覚になる。自分のことを大切にできる自分であると、なんだか気分がいいし、自己肯定感も上がる。

自分が怠惰になりそうなときや、生活を妥協しそうなとき、「本の中のマダムならどう行動する?」を考えると、日常を丁寧に生きられそうな気がする。これからも、心の中にマダムを住まわせて、日々をシックに営んでいきたい。


そんなわけで、今日もおつかれさまでした。



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