深夜のドタバタ、Mパニック
※極度の虫嫌いな方は薄目or読まない方がいいかもしれません。
これは我が家での2日間にわたる深夜のドタバタパニックドキュメンタリーだ。
それは、23時半ころの出来事だった。
カサカサカサ…
「おかあさん、これ何の音?」
隣で寝ている長男が聞いてくる。
「んー?そこにかかってる、クリーニング屋さんの袋じゃない?風で揺れてんのかな」
そのあともカサカサは時折聞こえてきてはいたが、わたしは特に気にもせずうとうとし始めた。
が、次の瞬間。
長男に叩き起こされた。
「おかあさん、いる!いる!!」
蒸し暑い夏の夜。
自然環境豊かな我が家。
このシチュエーションでいる!と言われたらそれはもう、アイツしかいない。
そう、カサカサの正体はMがふすまを歩き回る足音だったのだ。
M、それは文字で見るのも無理な虫嫌い界隈の民たちのために、Gと並んでアルファベット表記にされる代表格の危険生物。
ギェェェェーーーー!!!!!
そこからのわたしは必死だった。
シーズンインしたばかりで油断していて、凍殺スプレーを用意していなかった。それどころかなんの殺虫剤も寝室にはない。
目を離すのが一番怖い。アイツが行方不明になるのが一番怖い。仕留めるまで絶対寝れない!
でも、何もない!下の子はスヤスヤ寝ている!夫もいない!!
「絶対目はなさないで!見てて!!」
怖がる長男に半ば無理矢理Mを見張らせ、一目散にリビングへと走る。
どこだ!どこにしまったっけ、凍殺スプレー!あれさえあれば!
バタバタと手当たり次第探すも、パニックも手伝って全く見当たらない。あぁぁ、もうーーー!!!
急いで一旦寝室に戻ってみると、Mはまだふすまの上で停止している。あぁぁ、デカイ!!
どうする、どうする!!!
寝てる次男の方行ったらヤバイ!!!
あぁもう、今あるもんでやるしかない!!!
大パニックの母の役に少しでも立とうと、長男がトイレからヘナヘナのスリッパを持ってきた。
「おかあさんこれは?」
こんなヘナヘナで大丈夫なのかわからん!!
でもこれ以上頭が回らない!パニック!!!
そうこうしていると身の危険を察知したのか突然Mが動き出し、ふすまから床へ、そして狭い隙間へと向かっていく。
ぎゃあああああ!!!!!
ダメだ!そっちは!ダメだぁぁぁ!!!
考える暇も与えてもらえず、ヘナヘナのスリッパを手に半狂乱状態でぶっ叩くわたし。
暴れるMとの激闘が続く。
死に物狂い、って
こういうことを言うんですね。
わたしの迫力が勝ったのか、こんなヘナヘナのスリッパひとつでヤツを瀕死状態までは追いやった。
Mは、熱に弱い。
刺されたときも水ではなく熱めのお湯で毒を流す。何かで見たのを覚えていた。
再び長男に瀕死のMを見張らせ、この使命を全うするべく、震える手でリビングへ熱湯を取りに行く。
そして床の上のMめがけて上から熱湯をかけた。
何をどうやったか覚えていないが、その場を処理した。
人間が…
勝利した瞬間だった。
駄菓子菓子この人間はパニックと恐怖がおさまらず、手足が震えて止まらない。
怖かった!怖かったよぉぉうわぁぁん!!!
手足ってこうやって震えるんだ、っていうテンプレくらいにガタブルしていたら、全てが終わったちょうどのタイミングで夫が帰宅した。
いつもそうだ。
前住んでたアパートにGが出て、今回同様泣きながら死闘を繰り広げたあのときも。
洗濯物を持ち上げたら隙間からMが落ちてきて一瞬足の上を歩かれたあのときも。
肝心なときにいつもいつも居ねえんだ。
何も悪くないけど最高に間が悪い夫に、どれだけ怖かったかをまくしたてた。
駄菓子菓子。
イマイチこの恐怖が伝わり切っていない感じに今も不満を募らせている。
その日から3日後の、深夜3時。
「……さん、おかあさんっっ」
隣で寝ている長男に小声で、だが慌てた様子で起こされる。
どうした…?と寝ぼけ眼で長男に目線を移すと
(いる、いる!!)
私の足を指さして、いる!のジェスチャーをしている。
嘘でしょ!!!
いる!??いるの?!!
たった3日前のあの恐怖が一瞬で蘇る。
今度は自分の上にいると宣告されたわたしは、恐怖レベルMAXで1ミリも動けなくなった。
「どどど、どうしよう!!!!どこ?!どこにいるの!??ねぇ怖い!!!動けない!!!助けてぇぇぇぇ!!!」
あの日以上のパニックに寝起きで見舞われているわたしは、その声に起きてきた夫にも説明すらできない。
「ねぇ!!?いる?!あたしの上ぇぇぇ!!!ねえ!!どうしよう動けない!!!まって!怖い!!怖いぃぃぃーー!!!!!」
「何?!わからん!なにが!」
「どうしよう!見えない!!わかんない!!うわぁぁ!!!(大パニック)」
深夜3時、部屋も真っ暗、とてつもない恐怖に全く動けず、メガネもかけられない。
「メガネなくてなにも見えない!!怖い!!うわぁぁぁぁん!!!!!」
「俺だってメガネないと見えん!!」
暗闇の中、裸眼視力が悪すぎる夫婦。
お前は自由に動けるんだから!!!
早く!!
メガネをかけりゃいいだろうがよぉぉーー!!!!!
自分の上にMがいると思い込んでる大パニックMAXのわたし、あと少しでそう口から飛びだすところだった。
夫に向かってお前って。
朝から晩まで働いてくれてる夫にお前って。
やっと事態を把握した夫がメガネをかけ電気をつけてくれたのだが、わたしの半端ない恐怖とパニックはとまらない。
「どうしたらいいのぉぉぉ!!!こわくて動けない!!!!!」
夫にメガネを渡してもらい、ひとまず身体の上には何もいないことを半泣きで確認し、震える足でゆっくり立ち上がる。
長男に状況を尋問するものの、
「天井からお母さんのあたりに落ちてきた気がする」としか言わない長男。
なんそれ!!!めちゃ怖いじゃんかぁ!!!
深夜3時、Mの大捜索が始まった。
何かをどかすたびに恐怖と緊張でちびりそうになりながら、凍殺スプレー片手におそるおそるMを捜索する。
駄菓子菓子。
どこを探しても結局Mは見つからなかった。
夫は早々と、長男の勘違いだったのでは…と言う結論にひとりで達している。
これだけ探していないなら、いない。
それが事実なのだが、本当の本当にいない根拠なんてどこにもない。
わたしは3日前の長男のファインプレーも忘れていないし、自ら身体を張ってM退治したあの恐怖も忘れていない。
あまりに怖すぎて、その後わたしと長男だけがなかなか眠れなかったのは言うまでもない。
そして、この日の寝不足が原因で
翌日、あんな恥ずかしいことになろうとはこのときはまだ知る由もなかった。
