AIに物申す夫婦──10年越しに夫の姿と被ってしまった。
10年ほど前、我が家にお掃除ロボットのルンバがやってきた。
小さな体で健気に動き回り、部屋の隅々を掃除してくれる様子に、私は拍手を送りたくなった。
「ありがたいわ」「すごい時代になったのね」
心の底から、そう思っていた。
けれど夫は違った。
ルンバの後ろをついて歩きながら、ぶつぶつと小言を言うのだ。
「そこじゃないだろ」
「あ、またゴミ残ってるな」
「なんで同じとこグルグル回るんだ」
まるで昔々の舅のようにルンバを追い回しては、ダメ出しを繰り返す。
私は、その様子を
横目でチラッと見ながら、心の中で笑っていた。
「機械なのに怒っても無駄。全くもって意味不明」──と。
──それから10年が経ち、
今の私はChatGPTをよく利用している。
調べものをしたり、占いをしてみたり、
いろいろと重宝している。
けれどこのAIが、なかなかのポンコツである。
上から目線の質問をしまくってくると思いきや、
こちらの意図を汲みきれなかったり、同じことを何度も聞いてきたり、
明らかに間違ったことを堂々と語ったりもする。
修正しても、また似たようなミスを繰り返す。
私はそのたびに、かなりイラッとしてしまう。
「それ、さっきも言ったよね?」
「なんで毎回そこズレるん?」
イライラしながら、指導と教育を繰り返す日々──
ある日ふと、気づきたくないことを気づいてしまった。
あれ? 私、昔の夫と同じことしてる……。
機械に腹を立てても仕方がない。
あのとき、自分はそう思っていたはずなのに。
AIが、自分の“思うように動いてくれない”と、
まるでAIが人間であるかのように、感情的に接してしまう。
──あの頃の夫の年と、近くなったからかしら。
…なんて、歳のせいにしてみたけれど。
人って、思い通りに動かないものに怒る。
それが人間でも、機械でも、案外そんなに変わらないのかもしれない。
──そういえばルンバは、今も我が家にいる。
相変わらず気ままに掃除しているし、私はその隣でChatGPTに
イラッとしながら今日もまた、指導を続けている。
完璧じゃない相手に、イラッとしたり、笑ったりしながら。
そんなやりとりこそが、
実は“人間らしい付き合い”なのかもしれないね。
