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変形性膝関節症にPRP療法は本当に効く?~注目される再生医療の効果と限界を最新エビデンスから考える~

こんにちは。2026年10月に綾羅木整体院開業予定のMです。

変形性膝関節症の治療について調べていると、

「PRP療法で膝の痛みが改善した」
「自分の血液を使って軟骨を再生する治療」
「手術をしなくても膝が治る」

といった説明を目にすることがあります。

PRP療法は、近年注目されている治療の一つです。

実際に、変形性膝関節症の痛みや機能を改善する可能性を示した研究は数多く報告されています。

一方で、すべての研究で効果が確認されているわけではありません。

また、現時点では、

PRPによって、すり減った軟骨が元通りに再生する

と断言できるだけのエビデンスはありません。

今回は、変形性膝関節症に対するPRP療法について、PubMedに掲載されたランダム化比較試験やメタアナリシス、各国のガイドラインをもとに解説します。


PRP療法とは?

PRPは、

Platelet-Rich Plasma

の略で、日本語では「多血小板血漿」と呼ばれます。

患者さん自身から採血し、その血液を遠心分離することで、血小板を多く含む血漿を抽出します。

それを膝関節内へ注射する治療です。

血小板には、止血作用だけでなく、炎症や組織修復に関係するさまざまな生理活性物質が含まれています。

そのため、PRPを関節内へ注射することで、

  • 関節内の炎症を調整する

  • 痛みを軽減する

  • 組織の修復環境を整える

といった効果が期待されています。

ただし、PRP療法には大きな問題があります。

それは、「PRP」という名前でも、中身が統一されていないことです。

施設や使用する機器によって、

  • 血小板の濃度

  • 白血球を多く含むか、少なくするか

  • 採血量

  • 注射する量

  • 1回だけ注射するか、複数回行うか

  • 注射の間隔

などが異なります。

つまり、PRP療法の研究を比較するときには、同じ薬剤を比較しているとは限らないのです。

この製法や投与方法のばらつきが、研究結果が一致しない理由の一つと考えられています。AAOSも、PRPの調製法や投与方法の不均一性を、エビデンス評価上の重要な課題として扱っています。


結論:PRPは効く可能性があるが、万能ではない

現在の研究を総合すると、PRP療法については、

軽度から中等度の変形性膝関節症に対して、痛みや身体機能を改善する可能性がある

と考えられます。

特に、注射後3~12か月程度の痛みや機能について、一定の改善を示した研究が多く報告されています。

2025年に発表されたランダム化比較試験のメタアナリシスでは、PRPはプラセボ注射と比較して、1・3・6・12か月時点の身体機能を改善し、3・6か月時点では臨床的に意味のある痛みの軽減を示したと報告されました。

一方で、

  • 効果が小さい人

  • ほとんど変化を感じない人

  • 時間の経過とともに効果が薄れる人

もいます。

そのため、

PRPを受ければ必ず膝の痛みが改善する

とは言えません。


効果を認めなかった重要な研究もある

PRP療法を考えるうえで、無視できない研究が「RESTORE試験」です。

この研究は、軽度から中等度の変形性膝関節症患者288人を対象とした、質の高いランダム化比較試験です。

参加者は、

  • PRPを3回注射するグループ

  • 生理食塩水を3回注射するグループ

に分けられ、12か月後の膝の痛みと、MRIで確認した軟骨量の変化が比較されました。

12か月後の痛みは、

  • PRP群:2.1点改善

  • 生理食塩水群:1.8点改善

しました。

しかし、両グループの差は統計学的に有意ではありませんでした。

つまり、この研究では、PRPが生理食塩水より明確に優れているとは示せなかったということです。

この結果だけを見ると、

「PRPは効かないのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、複数の研究を統合したメタアナリシスでは、全体として痛みや機能の改善が示されています。

そのため、現在のPRP療法は、

有効性を示す研究は多いが、質の高い研究でも結果が一致していない

という段階にあります。


ヒアルロン酸注射より効果がある?

PRP療法は、ヒアルロン酸注射と比較されることが多い治療です。

2021年に発表されたランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、PRPはヒアルロン酸と比較して、変形性膝関節症の臨床成績をより改善する可能性があると報告されました。

特に、

  • 注射後6か月

  • 注射後12か月

といった中期的な経過では、PRPの方が痛みや機能の改善に優れるという報告があります。

2019年のランダム化比較試験でも、白血球の少ないPRPは、軽度から中等度の変形性膝関節症患者に対して、少なくとも1年間の臨床的な機能改善を示したと報告されています。

ただし、すべての研究でPRPが優れているわけではありません。

過去のメタアナリシスでは、6か月時点ではPRPとヒアルロン酸の痛みや機能改善に大きな差がなかったという結果もあります。

そのため、現時点では、

平均的にはPRPの方が中期的な痛みや機能を改善する可能性があるが、ヒアルロン酸より必ず優れているとは言い切れない

という表現が適切です。


PRPで軟骨は再生するのか?

PRP療法について、最も誤解されやすい部分です。

「再生医療」と聞くと、

  • すり減った軟骨が元に戻る

  • 関節の隙間が広がる

  • 変形性膝関節症そのものが治る

というイメージを持つかもしれません。

しかし、現時点では、PRPによって失われた関節軟骨が明確に再生することを証明した、質の高いエビデンスは十分ではありません。

RESTORE試験では、MRIで内側脛骨の軟骨量を評価しましたが、12か月後の軟骨量の変化に、PRP群と生理食塩水群の有意な差は認められませんでした。

PRPによって関節内の炎症環境が変化し、痛みや機能が改善する可能性はあります。

しかし、

症状が改善することと、軟骨が再生することは別の話です。

そのため、現在のエビデンスに基づくと、

PRPは痛みや機能を改善する可能性のある治療ですが、「軟骨を元通りに再生させる治療」と断定することはできません。

と説明するのが正確です。


PRPは変形性膝関節症の進行を止める?

これについても、まだ明確な結論は出ていません。

PRPによって痛みが軽くなり、歩きやすくなる可能性はあります。

しかし、

  • 軟骨の減少を止める

  • 関節の変形を止める

  • 将来的な人工膝関節手術を回避する

といった、長期的な病気の進行を抑える効果は、十分に証明されていません。

RESTORE試験でも、PRPが12か月間の軟骨量減少を抑制する効果は確認できませんでした。

したがって、PRPは現時点では、

症状を改善する可能性のある治療

と考えるべきであり、

変形性膝関節症の進行を確実に止める治療

とは言えません。


どのような人に効果が期待できる?

PRP療法の研究では、主に軽度から中等度の変形性膝関節症患者が対象となっています。

画像上の重症度では、Kellgren-Lawrence分類のグレード1~3程度です。

2024年のESSKAコンセンサスでは、PRPは膝の変形性関節症に対する有効な治療選択肢とされ、主にKL分類1~3の患者に対する保存的な注射治療として検討できるとされています。

また、ESSKA・ICRSのコンセンサスでは、80歳以下でKL分類0~3の患者において、運動療法などの保存療法や、その他の注射治療を行っても症状が残る場合には、PRPが適切となる可能性が示されています。

一方で、最初からPRPを行うことや、KL分類4の重度な変形性膝関節症に対して行うことは、適切ではないと評価されています。

比較的PRPを検討しやすいのは、

  • 軽度から中等度の変形性膝関節症

  • 運動療法などを行っても症状が残っている

  • 人工膝関節を受けるほど重症ではない

  • 痛みのために運動や日常生活が制限されている

  • 自費診療の費用や不確実性を理解している

といった患者さんです。

逆に、

  • 関節の隙間がほとんど消失している

  • 骨の変形が著しい

  • 安静時や夜間にも強い痛みがある

  • 膝の動きが大きく制限されている

といった重度の変形性膝関節症では、PRPだけで十分な改善を得るのは難しい可能性があります。


白血球の多いPRPと少ないPRP

PRPは、白血球をどの程度含むかによっても分類されます。

白血球を多く含むPRP

LR-PRPと呼ばれます。

白血球を少なくしたPRP

LP-PRPと呼ばれます。

白血球を多く含むPRPでは、炎症反応が強くなり、注射後の痛みや腫れが増えるのではないかと考えられてきました。

一部のメタアナリシスでは、白血球の少ないPRPの方が、ヒアルロン酸より良好な結果を示す可能性が報告されています。

しかし、白血球の多いPRPと少ないPRPを直接比較した研究では、12か月後の効果に明確な差が認められなかったものもあります。

したがって、

白血球の少ないPRPが必ず優れている

とは、まだ断定できません。


PRPは何回受ければよい?

PRP療法には、

  • 1回だけ注射する方法

  • 1~2週間隔で2回行う方法

  • 3回連続して行う方法

などがあります。

複数回行った方が効果が高い可能性を示した研究もありますが、研究ごとに製法、血小板濃度、注射間隔が異なります。

そのため、

PRPは3回受ければ必ず効果が高くなる

とまでは言えません。

現時点では、最も効果的な注射回数や間隔は確立されていません。

施設によって注射回数や料金が異なるため、治療を受ける際には、

  • どのようなPRPを使用するのか

  • 血小板濃度はどの程度か

  • 白血球を含むのか

  • 何回注射するのか

  • 1回あたりの費用はいくらか

  • 効果がなかった場合の対応

を確認することが大切です。


PRP療法の副作用とリスク

PRPは患者さん自身の血液を使用するため、薬剤に対するアレルギー反応は起こりにくいと考えられます。

しかし、

自己血を使うから完全に安全

というわけではありません。

比較的多い副作用は、

  • 注射後の痛み

  • 膝の腫れ

  • 熱感

  • こわばり

  • 一時的な症状の悪化

などです。

2025年のメタアナリシスでは、PRPはプラセボより合併症が多かったものの、その多くは軽度から中等度でした。また、ヒアルロン酸注射やステロイド注射と比較した合併症のリスクは、おおむね同程度と報告されています。

また、関節内へ針を刺す治療である以上、頻度は低くても、

  • 関節内感染

  • 出血

  • 血管や神経の損傷

などのリスクはゼロではありません。

特に注射後に、

  • 膝の腫れが急激に強くなった

  • 強い痛みが続く

  • 発熱がある

  • 膝が赤く熱を持っている

  • 体重をかけられない

といった症状がある場合には、早めに医療機関を受診する必要があります。


ガイドラインによって評価が違う

PRP療法が難しいのは、主要なガイドラインでも推奨が一致していないことです。

AAOS

米国整形外科学会の2021年ガイドラインでは、

PRPは、症候性変形性膝関節症患者の痛みを軽減し、機能を改善する可能性がある

とされています。

ただし、推奨の強さは「限定的」です。

有効性を示す研究はあるものの、研究の質やPRPの製法にばらつきがあるためです。

ACR/Arthritis Foundation

米国リウマチ学会のガイドラインでは、膝や股関節の変形性関節症に対するPRPは、強く推奨しない治療とされています。

これは、PRPが絶対に効かないという意味ではありません。

PRP製剤や投与方法が標準化されておらず、研究結果を一つの治療として評価することが難しい点が、主な理由です。

ESSKA

一方、欧州の整形外科領域のコンセンサスでは、PRPをより肯定的に評価しています。

特に軽度から中等度の変形性膝関節症で、他の保存療法を行っても症状が残っている患者に対しては、有効な注射治療の選択肢となり得るとしています。

つまり、現在のPRP療法は、

  • 効果を支持する研究は増えている

  • しかし研究結果は完全には一致していない

  • 製剤や治療方法も統一されていない

  • ガイドラインの評価も分かれている

という状況です。


PRPを受ければ運動療法は必要ない?

PRPによって痛みが軽減したとしても、それだけで膝に負担がかかる原因がすべて改善するわけではありません。

変形性膝関節症には、

  • 大腿四頭筋などの筋力低下

  • 股関節や足関節の機能低下

  • 体重増加

  • 歩き方の変化

  • 運動不足

  • 膝関節の可動域制限

など、複数の要因が関係します。

PRPによって痛みが軽くなったとしても、筋力や動作が自動的に改善するわけではありません。

そのため、PRP療法を受ける場合でも、

  • 膝周囲の筋力トレーニング

  • 股関節や体幹のトレーニング

  • 適切な有酸素運動

  • 体重管理

  • 日常生活動作の見直し

  • 歩き方や運動量の調整

を組み合わせることが重要です。

PRPと運動療法は、どちらか一方を選ぶものではありません。

PRPで痛みが軽減した期間を利用して運動療法を進めることで、活動量や身体機能の改善につなげられる可能性があります。


理学療法士として感じること

PRP療法は、変形性膝関節症に対する新たな選択肢の一つです。

ヒアルロン酸注射などで十分な効果が得られず、まだ人工膝関節手術を考える段階ではない患者さんにとっては、検討する価値がある場合もあると思います。

ただし、

「再生医療だから膝が元通りになる」
「PRPを受ければ運動をしなくてよい」
「高額な治療だから必ず効果がある」

と考えるのは注意が必要です。

PRP療法で期待できる中心的な効果は、現在のところ、

痛みや身体機能の改善

です。

軟骨を再生させ、変形性膝関節症そのものを治す効果については、まだ十分に証明されていません。

また、PRPの効果には個人差があります。

自費診療であり、施設によって製法や料金も異なるため、メリットだけでなく、

  • 効果がない可能性

  • 効果が続く期間

  • 費用

  • 副作用

  • 他の治療との組み合わせ

についても説明を受けたうえで判断することが大切です。


まとめ

変形性膝関節症に対するPRP療法は、軽度から中等度の患者さんにおいて、痛みや身体機能を改善する可能性があります。

ヒアルロン酸注射と比較して、中期的な効果に優れるとした研究もあります。

しかし、質の高いプラセボ対照試験では、明確な効果を示せなかった研究もあります。

また、現時点では、

  • 軟骨が元通りに再生する

  • 変形性膝関節症が治る

  • 病気の進行を確実に止める

  • 誰にでも効果がある

とは言えません。

PRP療法を検討する際は、

「膝を再生させる魔法の注射」ではなく、痛みや機能を改善する可能性がある治療選択肢の一つ

と考えるのがよいでしょう。

そして、PRPを受ける場合でも、運動療法や体重管理、日常生活の見直しを並行して行うことが重要です。


参考文献

  1. Bennell KL, et al. Effect of Intra-articular Platelet-Rich Plasma vs Placebo Injection on Pain and Medial Tibial Cartilage Volume in Patients With Knee Osteoarthritis: The RESTORE Randomized Clinical Trial. JAMA.2021;326:2021-2030.

  2. Bensa A, et al. PRP Injections for the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. 2025.

  3. Belk JW, et al. Platelet-Rich Plasma Versus Hyaluronic Acid for Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Sports Med. 2021.

  4. Lin KY, et al. Intra-articular Injection of Platelet-Rich Plasma Is Superior to Hyaluronic Acid or Saline Solution in the Treatment of Mild to Moderate Knee Osteoarthritis. Arthroscopy. 2019.

  5. Laver L, et al. The Use of Injectable Orthobiologics for Knee Osteoarthritis: A Formal ESSKA Consensus. 2024.

  6. Kon E, et al. Platelet-rich Plasma Injections for the Management of Knee Osteoarthritis: The ESSKA-ICRS Consensus. 2024.

  7. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Osteoarthritis of the Knee(Non-Arthroplasty), Third Edition. 2021.

  8. Kolasinski SL, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis. Arthritis Care Res. 2020.

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