今福龍太がつないだ、サルガドと濱田康作の「奄美」写真展
写真家二人の眼差しが重なる時、写真を超えたリアリティが立ち上がる。
写真家やキュレーター、企画者の声を直接聞ける写真展には、できる限り足を運ぶようにしている。なかでも、世界的写真家セバスチャン・サルガドと、奄美在住の写真家・濱田康作の写真展は格別だった。写真そのものの見方をかき混ぜられた。
サルガドは世界各地の労働者や移民、自然環境を壮大なモノクロ写真で記録し続けた写真家である。ヴィム・ヴェンダース監督によるドキュメンタリー映画『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』でも紹介され、現代写真史を代表する存在として知られる。
5月下旬から6月上旬に東京都港区のブラジル大使館で開催された「濱田康作&セバスチャン・サルガド写真展」は2011年に奄美群島を訪れたサルガドを濱田が撮影した貴重な写真に加え、サルガド自身が撮影した奄美の作品4点も世界で初めて公開された。
企画したのは、サルガド写真集の翻訳を手掛け、彼を奄美へ招いた文化人類学者・今福龍太だ。5月22日のオープニングでは、サルガドに関する講義に加え、報道写真家・渋谷敦志との対談も行われた。濱田も同席して耳を傾けていた。
今福がサルガド写真に初めて出会ったのは1986年のこと。テキサスに住んでいた頃『Other Americas』の表紙の写真に引きつけられたという。今福は、生前のエピソードを交えながら、サルガドが自然や人に向けていた深い眼差しについて語った。



会場に入ると鳥や虫の鳴き声が聞こえてきて、熱帯雨林のような空間が広がる。耳を澄ましながらサルガドがとらえた奄美を見つめていると、木の幹や葉がまるで肉体を伴って近づいてくるような感覚になる。他にも、今福を撮影するサルガドを濱田が撮影した写真と、サルガドが撮影した今福の写真を並べて展示する実験的な試みや、サルガド夫妻をとらえた数々の貴重な写真が並んでいた。
サルガドは、過酷な自然環境と人間の現実を写し出し、見る者に大きな「問い」を投げかける。同時にモノクロームの写真から放たれているのは、生命の神秘と美しさだ。今福が構成した展示は、サルガドがとらえた奄美の自然と、濱田がとらえたサルガドの生きた背中、眼差しを重ねて見ることができる、他にない展示スタイルだった。
今福龍太が結んだのは、二人の写真家だけではない。サルガドと濱田康作、そして奄美という土地を、一つの眼差しの連鎖として見せることだった。
それぞれの眼差しが交差することで、写真は単なる記録ではなく、見る者自身を巻き込むリアリティへと変わっていた。
Info
セバスチャン・サルガド『GENESIS』(TASCHEN)
松岡正剛の千夜千冊 1594夜「わたしの土地から大地へ」
松岡正剛の千夜千冊 1085夜『クレオール主義』
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