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焼きりん五輪書

林檎一つで医者いらずという言葉あり。
滋養に富む果実と言われる林檎ですが、最近は蜜入りといって糖分の塊のような林檎もある。総じて最近の果物は甘いが、林檎もか。
糖分過多にならないように、出来るだけ昔風の甘酸っぱい林檎を用いてスイーツ作りしながら、勝つに拘った強者が遺した書を妄想した記録。


材料

林檎        2個
蜂蜜        小匙2
シナモンスティック 2本
バター       10グラム

天下に名が知られた剣豪、宮本武蔵。
諸国放浪の末に墳墓の地と定めてやって来たのは肥後熊本。
国主である細川忠利の招きに応じて客分として七人扶持十八石、合力米三百石という待遇で腰を落ち着ける。この時、既に五十代も後半。人間五十年と言われた時代ですから、骨を埋めるつもりだった。
熊本城側の千葉城跡に屋敷を与えられ、鷹狩りが許されるという破格な待遇。


林檎の皮を剥き、芯をくり抜く。皮にはワックスが塗られているかもしれず、残留農薬も気になるので。

忠利から、これまでの兵法修行の成果や極意を書物に纏めてはどうかと勧められる。この言葉を受けて、武蔵は長年の修行や勝負の極意を書物にして遺すことを決意。
熊本郊外、金峰山の麓に霊厳洞という場所。
何度か訪れたことがありますが、洞窟というよりも岩壁が大きく抉られたような場所。
武蔵はよく此処に通って座禅していたそうですが、交流があった春山という僧侶が座禅していると、蛇が膝に上がりましたが、そのまま通り過ぎたとか。
一方、武蔵が座禅していると、蛇が怖がって近づかなかったといいます。
「我が禅は未熟。和尚が岩と化しているのに、我はまだ気を発して無になっていない」と反省したとか。
蛇の反応にも驚きですが、蛇が這っても平気な春山和尚の態度こそ武蔵が説く「巌の身」というべきこと。何があっても動じない心構え。


くり抜いた所にバターと蜂蜜投入。シナモンスティクを入れる。

寛永二十年(1645)霊厳洞に籠って武蔵は兵法書の執筆を開始。これが「五輪書」
内容は経歴から始まり、自身の兵法、二天一流のことといっても具体的な技の解説などではなく、どちらかというと心構えや哲学に近い。
そのため兵法とか剣術に限らず、経営とか競技にも通じるとして現代のビジネスマンやアスリートにも読者。
12歳の時、新当流の有馬喜兵衛という兵法者に打ち勝ち、28,9歳の頃までに60回以上の真剣勝負を成したが、一度もその利を失わず。
つまり負けなし。
はっきり勝ったと書いていないことから疑問符を付ける人もいるようですが、負けずに生き抜いたことだけでも大したことと思います。現代のスポーツとは違い、剣術勝負は負ければ死ぬのですから、生き残りの達人。


200°に予熱したオーブンで30分。

勝負は常に先手を取ることが肝要。
先手には「先の先」「後の先」「対対の先」ありと武蔵は説く。
先の先とは自分から積極的に仕掛けて、こちらのペースで引きずりまわす。
後の先とは敵が打つと動き始めた時に「打つ」の「う」を捉えて打ち込む。
攻撃しようと微妙なモーションを起こした瞬間、僅かな崩れが生じるのでそこを狙えということ。
対対の先とは敵も自分も同時に打ち込んだ時でも、僅かな隙を見逃さずにそこを打てということ。


30分後。

山海の変わり。これは敵が山と思っていたら、こちらは海。つまり意表を突けということ。
「さんかい」という読みは三回に通じる。同じ手が通用するのは二回まで。三回目からは打つ手を変えろという意味も込められる。
京流吉岡一門と三度に渡った決闘で、武蔵は最初の二回は遅刻。三度目もどうせ武蔵は遅刻してくると踏んだ吉岡一門は布陣を終えて、遅れてくる武蔵を包囲して討ち取る準備。しかし武蔵はこの裏をかいて、藪に潜んでいました。敵の準備が終わらない内に決闘の名目人を討ち取り逃走。追って来る者を斬って逃げ延びる。
この時、吉岡一門は70人いたと言われる。盛っているかもしれませんが、複数いたとしても、多くの敵と戦う心構えも「多敵の位」という言葉で説く。
大勢に囲まれても、一斉に全員が仕掛けてくる訳ではなく早い遅いがあるので、先に打ちかかる者から相手せよとのこと。


こんな感じ。

こんな感じで勝負の心構えを主に説いた精神論に近い。それも勝つこと生き残ることに特化した哲学。
およそ二年の歳月を費やして書き上げた「五輪書」ですが、もっとも読んで欲しかった人物は既にいませんでした。
武蔵が執筆を始める前に細川忠利は死去。晩年になって得た、自分を理解してくれる主君というべき人物を武蔵は失っていました。
その霊に手向けるという意味合いも「五輪書」には込められている気がする。

武蔵自筆の原本は現存せず。
完成後、幕府に献上されましたが、江戸は火事が多い所。大火によって江戸城が焼けた時に失われた。
宮本武蔵が幕府にも名前が知られた有名人だったことを示しています。


焼きりん五輪書

火が通った林檎がいい味と食感。林檎にはビタミンCや食物繊維、カリウムが豊富に含まれる。よって便秘予防、老廃物排出の促進、疲労回復効果といいこと多し。


割って溶けたバターや蜂蜜を塗して頂く。

当たり前ですが、シナモンスティックは香付けなので食べられません。ただシナモンにも血糖値の上昇を抑える効果。酸味と甘味が混然一体となった素晴らしい自然派スイーツ。

オリンピックのことを五輪と呼びますが、これは「五輪書」から付けられた呼び名。マークが五つの輪からの連想でしょう。
宮本武蔵と言えば、多くの人がイメージするのは吉川英治の小説だと思いますが、五輪書も外国語に訳されて海外のビジネスマンにも読まれている。
勝負の達人が勝つ極意、生き残る心構えを記した五輪書を妄想しながら、焼きりん五輪書をご馳走様でした。

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