大野(海苔)治長
「暑い。夏だからというだけではござりませぬ。城の彼方此方は燃えている。熱だけではない。木や人が焦げる臭い、何を言っているのかわからない叫びや銃声どころか砲弾が何かを砕く音も暑さを倍増させているのでございましょう。殿下は戰場どころか、この大坂城からも殆ど出たことがございませぬ故」
「拙者のことを聞きたいですと?恐れながら話す程のことは我が人生にはありませぬ」
「最後になるかも知れないから?烏滸なことを申されますな。我等いや殿下とお袋様は必ず生きて此処から出るのです」
「無聊を慰めるため?そういうことならば、殿下のお退屈凌ぎに我が生きてきた道を些かお話し致しましょう」

大野海苔 好きなだけ
ジャガイモ 2個
卵 2個
葱 好きなだけ
枝豆 好きなだけ
醤油 大匙2
豆乳 50cc
塩 少々
オリーブ油 少々
「我が弟が拙者を殺そうとしたのは眞かですと?埓もない噂に過ぎませぬ。確かに我が弟の治房や道犬は牢人衆と考えが近く、あくまでも戰で決着を望むという点では德川方と和睦して生き残りを図ろうとする拙者と考えは異なる。それでも我等、大野の兄弟は力を合わせて生き延びてきたのでござります」
「大野家の出自でござりますか。我が祖父は石清水八幡宮の祠官。当時の都は戰乱で荒れ果て、このままでは生計が成り立たぬということから尾張へ下向。織田家に仕官。信長公の妹君が近江の淺井家に嫁ぐ時、我が父は共に近江へ。そこで拙者は生まれ申した」
「左様にござります。信長公の妹君と淺井の殿様との間に生まれたのがお袋様であり、拙者も同年に誕生。我が母はお袋様の乳母でありました。即ち我等は乳兄妹」

「城が落ちるということを最初に経験したのは淺井家に於いてでございました。親戚同士となった筈の織田家に攻められて小谷城は風前の灯。生き延びよと淺井の殿様は命じられました。生き延びて我が娘達を守れとの仰せ。それに従い、お袋様と二人の妹御を連れて我等は当時、羽柴様と名乗っておられた太閤殿下の陣に迎えられ申した」
「太閤殿下がどんな人だったかですと?覚えておられませぬのも無理もございませぬ。殿下がまだ幼少の頃に薨去なされたのですから。笑顔が魅力的な御方でございました。生きていてくれてよかったと我等にかけて下されたお言葉は今でも耳に焼き付いておりまする」

「織田家に保護された我等でしたが、信長公があっけなく世を去るとまたも我等の命運は転変。殿下の祖母に当たられるお市の方様は柴田勝家様に再嫁なされ、我等も北庄城へ」
「左様。そこでも我らは落城の場に居合わせた。そして又も同じ頼みを今度はお市様から。娘達を守れとの仰せ」
「その通りにござります。我等は再度、太閤殿下の元に。侍奉公を始めるには良い年廻りとなっていた拙者は馬廻衆に加わり申した」
「仰せの通り、お袋様も太閤殿下のご寵愛を受けられる身になり、ようやく我らは生き延びるという目的を達して、安息を得た」

「大恩ある太閤殿下が亡くなられた後、拙者は窮地に立たされたことがございました。こともあろうに拙者が当時は内府様と呼ばれていた徳川家康様を殺そうとしていると根も葉もない噂が流れ申した。昔から拙者はよくそんな噂を撒かれる者でございます。余程、権勢を思うままにしている横着者と人から思われる性分なのでございましょう。されど拙者が大事にしてきたことは淺井の殿様や殿下のお祖母様から命じられた生き延びよ、そして娘達を守れというということのみ」
「左様でござります。そんなことがあった後、暫く拙者はこの大坂城から離れており申した。太閤殿下亡き後、世を纏めるために不可欠な内府様を亡き者にしようとしたとして狙われる身となった拙者に救いの手を差し伸べたのはその内府様。ほとぼりが冷めたら戻れるように手配すると密かに言われ、城から退去。御次男、結城秀康様の下に匿われ申した。生き延びよという命令を守るためには致し方ござりませなんだ」

「關ヶ原で戰があった時、拙者は内府様の覺えをよくするために先鋒であった福島正則様の陣に加わり、些かの戰功。内府様の書簡を大坂城に届ける使者を仰せつかり、そのまま歸還することを許され申した」
「誠に。その後、征夷大将軍を拝命、役目をお譲りなされて大御所となられた嘗ての内府様、徳川家康様の軍勢が今、この大坂城を囲んでいるのは戰の世の習いとはいえ、残念なことでございます」
「豊臣の世を奪った?権勢など、拘るべきことではございませぬ。この世は力ある者が纏めればよい。何より大事なことは生き延びること」

「その後は殿下もよくご存知のこと。家康様の孫娘が殿下に嫁ぎ、豊臣家と徳川家は縁続きとなり、共に和していける筈でございました」
「御台様でございますか。仰せの通りにこの山里丸から落ち延びさせました。祖父、家康様へのお取りなしも頼んでおきました」
「余計なことですと。何を仰られる。もはや我等が生きて此処から出る道は家康様と交渉する以外にはございませぬ」
「勝手なこととお怒りか。されば我が身に切腹を申し付けられよ。そして我が首と引き換えに生き延びられよ」

「最も氣になっていることを訊きたいですと?何でございましょうか」
「戯けたことを。いやこれは言葉が過ぎ申した。申し訳ございませぬ」
「恐れ多くも拙者と殿下が似ている?大柄な偉丈夫であり、美男である所が?拙者は自分が美男だなどと思うたことはございませぬ」
「確かに亡き太閤殿下は小男で、誠に無礼ではありますが、猿に似ているなどと口さがないことを申す者がいたことは確かでございます」

「お袋様は織田家の血筋。織田家は代々、色白で美男美女の家系。それにお祖父様に当たられる淺井の殿様は大柄であらせられた。殿下は祖父母の血統を見事に体現しておられる」
「それでも、顔もよく覺えておられぬ太閤殿下よりも拙者が父であった方が良かったですと?滅多なことを仰られますな。されど一人の男としては身に余るお言葉にござります」

「どうしても本当のことを知りたい?されば、」
砲弾が炸裂する轟音。
徳島県から來た名物、大野海苔を使ってケチャップよりも醤油が似合う和風トルティージャを作りながら、徳島とも海苔とも全く關係ない大野治長を妄想してみた記録でした。
しかし、これではトルティージャというよりも卵焼き?
卵と枝豆から動物性と植物性の蛋白質をダブルで頂ける。焦がし葱の風味が食欲増進。
混ぜただけではなくトッピングにも大野海苔を使用。
海苔等、海藻類を消化出來るのは日本人だけ。
日本人に生まれた喜びを噛み締めながら、ご馳走様でした。
