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さけさとコロッ釼禅一如

きたるべき食料危機や災害に備えるには優れた保存食である缶詰が有効。
鮭缶を里芋と合わせて美味しく頂く料理を作りながら、優れた釼豪だが、時代劇では惡役として扱われることが多い人物を妄想した記録。


材料

里芋    大き目5個
鮭缶    1缶
米粉    大匙2
片栗粉   大匙1
卵     1個
粒状大豆肉 適量
塩     小匙1
胡椒    適量

元亀二年(1571)大和國(奈良県)に柳生宗厳の五男として誕生した柳生又右衛門宗矩。
柳生家は山間の柳生庄に土着。父の宗厳が上泉信綱から新陰流の印可を受けて釼豪として名を馳せる。
父の許で宗矩も新陰流を修行。
天下人になった秀吉が太閤検地を行った際、柳生家は隠し田を摘発されて領地没収。以後、どうやって暮らしていたのか?
釼術指南などで糊口をしのいでいたのか?


里芋を茹でる。

人生の転機となったのは文禄三年(1594)黑田長政の仲介で父と共に徳川家康に謁見。
父、宗厳が家康に無刀取りの妙義を披露。
これは一般的に言われる眞剣白刃取りのような曲藝めいたことではなく、むしろ抑えるのは刀を持った相手の手首等。
どちらにしろ素手で刀を持った相手を制する技。
自身も釼術好きな家康はその場で宗厳に弟子入り志願。
しかし高齢を理由に宗厳はそれを断り、息子の宗矩を推挙。
こうした経緯で徳川家にまずは二百石で仕官。


卵に米粉を混ぜてバッター液を作る。

秀吉死後に起こった關ヶ原。
わかりやすい戦功がないのに二千石の身代を戰後に賜り、柳生の旧領を回復。
あまり表沙汰に出來ない仕事、東軍の戰力増強や西軍につくかもしれない大名の説得を陰で行ったということではないか。
石田三成の家老である㠀左近にも説得を試みたという。失敗したけどね。
釼術という武士の表藝を通じて、宗矩はかなりの人脈を築いていたと思われる。
これまでに名前を挙げた黑田長政や㠀左近以外にも伊達政宗とも交流があった。
大名だけではなく、その家臣にも新陰流の弟子がいたことが後々、大きな意味を持って來る。


茹で上がった里芋に片栗粉と塩胡椒、鮭を混ぜる。

家康が将軍位を秀忠に譲ると、宗矩は秀忠の釼術指南役に。
やがて起こった大坂の陣。
秀忠の本陣に豊臣方の武士達が七人乱入。
「徳川秀忠、お覺悟召されよ」
襲い掛かってきた武士達を、宗矩は一氣に瞬殺。
宗矩が人を斬った記録はこれだけ。

戰後、大坂城から脱出した千姫を救出した坂崎出羽守。
巷説では千姫を救出したら嫁に与えると言われていたが、それを反故にされて謀反。
幕府に叛意を示した出羽守を宗矩は説得。
出羽守が切腹することで坂崎家を存続させると請け負った。


丸めてバッター液に付けてから、粒状大豆肉を塗す。

残念ながら幕府の裁定で坂崎家は取り潰し。
宗矩は出羽守の遺児を保護して、坂崎家の家紋『二蓋笠』(ふたおいがさ)を柳生家の家紋にした。
義理堅い人物だったことを思わせる。

宮本武蔵が映像化される時には宗矩は、武蔵の邪魔をする人物として描かれる。しかし吉川英治の原作では寧ろ武蔵の仕官を手助け。
分かり易い悪役がドラマには必要なので、そういう扱いになってしまうのか。


油で揚げる。

釼の達人だが、社交性に富んだ人物だったようで、禅僧の澤庵とも親交。↓

澤庵が宗矩に贈った書物が『不動智神妙録』
釼と禅の一致や精神の在り方を説いた本であり、そこに出て來る言葉が『釼禅一如』
平和になった江戸時代では釼術の必要性は次第に低下していく。そのことに危機感を抱いた宗矩は釼と禅を結び付け、精神性を持たせて、釼術は心を鍛えるものという位置づけを作った。
武士としての心構えというだけではなく、釼の家である柳生家の求心力を維持するためでもあった。
折角、再興した家を潰す訳にはいかないという智慧。


揚がったら油を切る。

釼豪でありながらも、宗矩には決闘などの血生臭い話がない。人斬りの話も秀忠を守るために豊臣家の武者を斬ったことしか聞かない。
それどころか無闇に人を斬らない『活人釼』を標榜。それを感じさせる逸話は多い。
荒っぽく人の命が軽い時代。お忍びで夜陰に紛れて辻斬りをする大名。
三代将軍となった家光もそんな一人。
通りかった男に刀を振り下ろしたら、男に素手で取り押さえられた。
「無益な殺生はおよしなされ」
変装した宗矩だった。正に無刀取り。
家光が平伏している宗矩に打ちかかろうとすると、宗矩はすかさず敷物の端を引っ張って家光を後ろに引っ繰り返らせた。
乗馬の達人と試合。まず相手の馬を打って、動きを制してから相手を倒した。正に『将を射んと欲すればまず馬を射よ』を実践。


さけさとコロっ釼禅一如

里芋のねっとり感に鮭がよく合う。
大豆肉の衣は歯応えがあり、植物性タンパク質も同時に摂取。
鮭缶と書いてあったのですが、よく見ると中身はカラフトマス。それでも鮭と同じくアスタキサンチンを含み、良質なタンパク質。里芋からは腸内環境を整える食物繊維であるガラクタンやカリウム、ビタミンCも。
塩胡椒のみの味付け。これだけでも美味しく頂ける。物足りなければケチャップやソースもいい。


柳生新陰流は将軍家の御流儀となり、大名達もそれに倣った。
指南するために柳生家から大名家に達人を送り、多くの門弟が全國の大名家中に生まれた。こうした師弟關係のネットワークを通じて宗矩は全國の情報を熟知出來る立場となり、惣目付という大名達の監視という役割を得た。
身代も一万石。大名の格式。
監視や情報収集というと陰険な惡人っぽい印象なので、武蔵のドラマのみならず、映画『柳生一族の陰謀』や『魔界転生』、隆慶一郎の小説でも惡役。

実際の宗矩には人間味を感じさせる逸話も多い。
かなりな愛煙家で、澤庵から喫煙を遠ざけた方がいいと忠告されると、長大な煙管を使った。
「これなら煙が遠い」
頓智話みたい。

能や踊りが好きで、立ち眩みを起こすまで踊ったとか、他の大名家にまで押しかけて踊ったという話。
これまた澤庵に窘められている。
釼の達人であった宗矩だが新陰流の正統な印可は、父の宗厳から甥の兵庫助が受け継いだ。
尾張徳川家に仕えた兵庫助の家系が柳生新陰流の釼を傳え、宗矩の家系は江戸で大名としての柳生家を傳えた。
惡名が強くなり過ぎた柳生宗矩をあれこれと妄想しながら、さけさとコロッ釼禅一如をご馳走様でした。

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