創作2︰ 雀の涙/創作昔話
むかぁし、むかし。
ある街道を、一人の旅人が急いで歩いておりました。
「急がねば、日が暮れてしまう……」
すると、道の脇から声がします。
「おーい、そこの旅人!」
振り向けば、そこには一匹の鬼。
「なんじゃ、鬼か! わしは急いでおる。構っている暇はない!」
旅人が行こうとすると、鬼は笑って言いました。
「そう急ぐな。ほんの二分ばかり、ここで休んでいけ」
「二分だと? そんな暇は……」
「二分も休めぬほど、何を急いでおる?」
そう言われ、旅人は仕方なく、道端の石に腰を下ろしました。
鬼は茶を一杯すすめ、二人は旅の話や、故郷の話をしながら、しばし時を過ごしました。
やがて――
「……そろそろ、じゃな」
鬼がそう言った、その時。
旅人の足元へ、
ころん……
と、小さな石が転がりました。
「これは……?」
旅人が拾い上げると、鬼はにっこり笑いました。
「それは――雀の涙」
「その名の通り、お主のもとへ訪れた、わずかばかりの福の雫じゃ」
旅人は、小さな石を手のひらで転がしました。
「こんな小さなものが、福なのか?」
「小さくとも福は福じゃ」
鬼はそう言って続けます。
「その雀の涙は、この先、お主が気に入ったところへ、そっと分け与えてやるがよい」
旅人は石を大切に懐へしまいました。
「なるほど……福は、もらって終わりではないのだな」
そして立ち上がります。
「さて、もう行かねば」
鬼は街道の先を指差しました。
「うむ。行くもよし」
「このまま、ここで休んでいくもよし」
「どちらを選ぶも、お主の自由じゃ」
旅人は少し考えて――
「……では、またここへ来てもよいか?」
鬼は、にっこり笑いました。
「もちろんじゃ」
「ただし、二度目に来たときは、もう雀の涙は与えられんぞ」
そして、こう続けました。
「じゃがな――」
「福は一度きりでも、この縁は一生、繋がるかもしれん」
「また休みたくなったら、いつでもおいで」
旅人は鬼に頭を下げ、福の石を懐に、再び街道を歩き始めました。
その背中を見送りながら、鬼はぽつり。
「……さて、次はどんな旅人が来るかのぉ」
……そらはれた
