【自作詩】フォークとナイフ
なにを切り分けようとおもったのか
左手にフォーク 右手にナイフを
もって出かけた
ラザニアを食べかけていたから
赤いソースがついている
すれ違う人がちらっと目をやり
奇妙な持ちものに驚いた素ぶり
それでも結局のところ無関心だ
オープンカフェでマイクを握り
歌っているあの青年は
かつて内気だった
秘めていたエネルギーが
伸びやかな歌声に乗って
通りを抜けていく
声に押されながら道を行く
小高い丘を取り巻く道に出ると
丘の主みたいなおじさんに出会う
"ここは街灯がないから
ほんとうの闇夜になるよ
なんにも見えない道を
歩きたくなったらここにおいで"
街を徘徊しているうちフォークとナイフが
手の一部になったかのようになじんできた
切り分けるものが
見つからないまま
家に帰ると食べかけの
ラザニアが待っていて
左手のフォークと右手のナイフで
冷めたラザニアを切り分ける
ラザニアはさっきよりラザニアだし
フォークはさっきよりフォークで
ナイフはさっきよりもナイフで
切り分けるのはさっきよりも
「切り分ける」だ
いま、
ラザニアを、
フォークとナイフで、
切り分け、
ている
暗くなったらまた
丘へ行ってみようか
