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腎臓は壊したが、生活は壊さず生きている【39】

【戦略的撤退】「高嶺の花」を振り向かせたいという50年越しの野望、来世へ持ち越します。

1. 鏡という名の「不採用通知」

あれは小学生の頃でした。クラスの女子たちが「〇〇君の目が好き」なんて話しているのを聞き、私は自宅の鏡の前で、自分の顔面という名の戦場をパトロールし始めました。

「どこか一箇所くらい、戦えるパーツがあるはずだ」

鼻、目、口、輪郭……。一つひとつ厳密に審査しましたが、結果は「全パーツ、書類選考落ち」。唯一、合格点を出せたのは、人並外れて肉厚で立派な**「福耳」**だけでした。

当時の私は「これならいける!」と鼻息を荒くしましたが、冷静に考えてみてください。
放課後の女子たちが「ねえ、彼の耳たぶの肉厚、マジ尊くない?」なんて盛り上がるわけがないのです。
福耳は、近所のおばあちゃんには拝まれますが、モテという戦場では「耳かき」ほどの戦力にもなりませんでした。

2. 「高嶺の花」を振り向かせたかった

もちろん、50年の人生、全く縁がなかったわけではありません。
片手で数えるほどの交際経験はあります。
しかし、私の中の「少年の野望」は、それでは満足しなかったのです。

私が求めていたのは、綺麗な女性をただ遠くから眺めることではありません。
**「誰もが振り返るような高嶺の花を、この手で振り向かせたい」**という、あまりにも純粋で、あまりにも無謀な願望でした。

「大人になれば落ち着くよ」なんて周囲は言いますが、あれは嘘ですね。
50代になっても、街でハッとするような美女を見かければ、脳の0.1秒は「どうすれば彼女を振り向かせられるか」という戦略を練り始めてしまう。
代謝は落ちても、この「狩猟本能」だけは、冬の北海道の暖房器具のように赤々と燃え続けているのです。

3. 来世への「徳積み積立」

しかし、この鏡の審査結果(と福耳)で、あの方々を振り向かせるには、今世は少し時間が足りなすぎました。
そこで私は、潔く**「来世への全振(フルコミット)」**を決意したのです。

50年間、理想を捨てきれずに、悶々としながらも真面目に生きてきたこの「エネルギー」は、宇宙のバランスシートに従えば、来世では凄まじいスペックとして還元されるはず。

私は今、来世のキャラクターメイキングのために「徳」を積んでいます。

道のゴミを拾うのは、来世の鼻筋を1ミリ高くするため。

嫌な上司に笑顔で返すのは、来世の髪の毛の密度を上げるため。

今世で理想を追い求めて散った「切実な渇望」は、来世では「圧倒的なカリスマ性」に換金される。そう信じて疑いません。

4. 未来の俺へ

50代になった今、私は鏡の中の自分に語りかけます。
「今世は、最高に贅沢な下積みだった」と。

もし来世、私が街を歩くだけで「高嶺の花」たちが次々と振り返るような男に転生していたら、どうか一瞬だけ空を見上げて、今の私に感謝してほしい。

君が手にするその「美貌」も「運命」も、すべては50代の私が、理想に届かない現実に歯を食いしばり、立派な福耳を揺らしながらコツコツと徳を積んだ成果なのだから。

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