移動遊び。佐賀→東京→長野→陸路佐賀④『さらば信濃、北陸から山陰へ』
昨夜は安曇野にある両親の家に宿をとった。実家ではなく「両親の家」という呼び方をするのは、両親は先祖から継ぐ家も土地もなく、出自とは関係のない所での暮らしが長く、安曇野の家もまた賃貸であるため。
土着性のない両親から生まれた俺も当然のことながら土着性は皆無である。首都圏の賃貸マンションで育った根無し草は、こうしてフラフラと旅をする。
もっとも、同じ様に首都圏の賃貸マンションで育った同級生達が皆フラフラしているかというと、そんなこともないので、俺のフーテン癖はやはり遺伝的要因が大きいのだろう。
さて、埼玉・東京でのソフトボールとスピッツライブを経て長野県へ戻ったのは、愛車と引っ越し便に乗らなかった荷物を運ぶため。これを完了してこそ、俺は引っ越したと言える。
引っ越すにあたって、結果として両親から孫(俺の息子)を遠ざけてしまったことに大きな呵責がある。息子も両親に完全に懐いていたから。
ただ、俺はもう長野県暮らしは無理だ。およそ9年も住んだのは長過ぎた。寒いだの山に閉塞感を覚えるだのそれらしい理由は言ってきたが、要は同じ所に住んだ時間が長くて飽きたのだと思う。それが一番なんじゃないかな。とはいえ、真の感情なんてわからんけどな。
長野県から佐賀県へのルートについて、色々と考察したが、結局「日本海を通りたい」というKジロー君の強い要望を叶えることにした。日本全国いろんな所を旅をしたが、日本海側の少し暗く、静かで落ち着いていて歴史に裏打ちされた文化のありそうな雰囲気が特に好きなんだよね。曇天雨天は苦手なんだけどね。
移動は3日間。初日は安曇野からおなじみの上高地方面へ進み、安房峠を越え高山を通過し、福井県へ抜けて舞鶴まで到達する。

両親に別れを告げ8時頃に出発。その時点で車の総走行距離数は44545km。この旅でどこまで伸びるか。
波田に出て、野麦街道をみんな大好き上高地方向へ。上高地にも数度行ったが、こちら方面では野麦峠スキー場とMt.乗鞍スノーリゾートにも楽しませてもらった。
さらば信州。ありがとう、お世話になりました。

安房峠トンネルを抜けて平湯温泉に着いたところで、丁度出発してから1時間になったので、足湯で休憩。今回の旅では1時間運転したら休憩を取る方針にしている。
平湯温泉は安曇野よりよっぽど標高が高いらしく、肌寒かった。俺だけかもしれないけど、長野県で長く暮らしていると、「日本で一番標高が高い県に暮らしている」というのと、「日本アルプスは全て長野県にある」という、驕りの様なものが出来上がる。で、他県の寒さとか標高をナメちゃうんだけど、北アルプスはそもそも“飛騨”山脈であり、長野県の反対側は岐阜県と富山県なのですな。ナメてすいません。
岐阜県側を走っていても感じるのは、やっぱり寒い所は緑が綺麗だな。木が可憐なんだよな。これから住まう九州だと、この緑は見られないだろうな。それが少し残念ではある。まあしかし、寒さから逃れられることは、可憐な木々を見られないことを補って余りある。
魑魅魍魎たちが暮らすという噂の高山市丹生川(にゅうかわ)を内心ニヤニヤしながら下り(知人がここに移住して酷い目に遭ったらしい)、中部縦貫道の無料区間を飛騨清見まで。
そこからまた下道で福井県方面へ山道を快調に下っていると、オレンジのフェアレディZが後ろにつけて来た。すごい速度でぶっ飛んで来た模様。直線部分まで待ってもらってから、左へ寄せて道を譲った。多分時速110kmくらいで下って行った。悔しいけど全然敵わないや。あんな速度でコーナーへ突っ込めない。
フェアレディってすごいんだなあと思った矢先、今度はもっと速いバイクが後ろに来たので、またすぐに道を譲った。ぶっ飛んでいった。時速150kmくらいか?みんな運転うまいなあ。動体視力と情報処理能力と反射神経と度胸がすごい。俺ももっと上手くなりたいな。
道の駅『桜の郷荘川』で休憩して、東海北陸自動車道と中部縦貫自動車道で郡上市の白鳥まで進み、岐阜と福井の県境を越えた。
そして九頭竜湖畔の下道を西進して大野市へ下りた。以前仕事で大野市に住んでいる人に関わったことがあり、どんな所なのか気になっていたのだが、大変美しい所だった。
あちこちの田んぼの畔に芝桜が植えられていて、春爛漫。汚い看板や農地転用された安っぽい住宅街がない、美しき里。農村風景の美しさでいったら、安曇野市は完敗だ。安曇野市は北アルプスを除いたら、中途半端にベッドタウン化・工業化した元農村だからな。
車を運転していたので写真は撮れなかったが、心に焼き付いた。北陸の重たい冬があってこその萌ゆる春なんだろうな。

大野市の道の駅『越前おおの荒島の郷』に行き当たったので、昼食を取ることにする。大変新しそうな施設であり、北陸だから良い物がたくさんあるに決まっていると思ったら、やっぱりそうだった。旬の野菜はもちろん、鯛の笹漬け(今まで食べた物で一番旨かった)もあるし、米、酒、餅、和菓子、洋菓子なんでもござれ。断言しよう。内陸県にはこんなに魅力的な道の駅は存在し得ない!

でも、思い出した。俺は最早内陸の民ではない。二つの海を持つ佐賀県民なのである。食べ物のおいしい地域を旅行した時にヨダレ垂らして羨ましがる必要はもうないのである。感涙。東日本の内陸にしか住んだことがないから、よその豊かな食文化を見て卑屈になるのが板についてしまった。もういいんだ。十分に苦しんだ。美味しい物を率直に愛でる心を今から解放しよう。
大野市から一乗谷を通って鯖江に着いた。めがねフレーム好きとしては鯖江でフレームを見てみたかった。『めがねミュージアム』という鯖江のフレームが集まった施設を訪問。
店員さんが色々と説明をしてくれた。セルフレームを横から見た時にヒンジ部分が見えないようになってたり、セルフレームの鼻当て部分にも模様がついていたり、俺は今まで全く気にしたことがなかった細部まで、極めて精巧に作られている物があるそうだ。
いかにも日本の男っぽい凝り様だなあと感じた。良い意味で変態的とも言えるだろう。そういうフレームを買える身分になりたいものだね。
時間があれば市内の工房直営の店にも訪れてみたかったが、いつかの楽しみにしておく。

鯖江からは三方五湖まで舞鶴若狭自動車道に乗った。そこからは下道で舞鶴へ向かう。やっと日本海がちゃんと見える。自転車で旅した15年半前もおそらく通った道だ。小浜の辺りはとにかくアップダウンだらけで辛かった思い出しかない。
車で通ってみると、非常に複雑な地形をしているんだなあと思った。地図を見ると半島だらけ。岩手・宮城の海側もそうだけど、複雑な地形に美味しい魚介類ありと見た。

18時頃舞鶴の宿に着いた。走行距離は369km。海の見える部屋を取ったものの、疲労困憊で旅情に浸れない。遊び過ぎだ、俺。魚介類の晩御飯を食べに行く気力もなく、ウーバーイーツでお好み焼きを取った。不味かった。関西でこの味でやっていけるのか?1000円だったけど、これで1000円なら、俺が作るお好み焼きは5000円とれるわ。

いいなと思ったら応援しよう!
埼玉十万石饅頭1個、ご馳走待ってます★