「日本の経済学史」橘木俊詔著
「日本の経済学史」橘木俊詔著・法律文化社
著者は米、英、仏で経済学を学び、米国ジョンズ・ホプキンズ大学でph,D博士号取得、公共経済学専攻の元・日本経済学会長でもある。最初に日本の格差社会突入を論じた経済学者である。
江戸時代の熊沢蕃山、石田梅岩、横井小楠の経済思想から経済学の流れをたどる。明治に入り、輸入学問としての経済思想、大正時代の東京大学中心のマルクス経済学の流れを解説する。
戦前マルクス経済学全盛時代における経済学者と軍部との関係、近代経済学との対立と意見交流の無さが日本経済学史の特徴であると言う。
戦後、ケインズを中心とした近代経済学の進展、冷戦終了と社会主義国家衰退から新古典派経済学を中心とした反ケインズ派経済学拡大の歴史を具体的な個々の経済学者を挙げながら解説する。
マルクス経済、ケインズ経済競合の時代に学生時代を送った者としては、懐かしい名前が列挙され、知識の再確認に役立つ。
著者は近代経済学の立場に立つ経済学者である。近代経済学の目的の一つは経済効率性の追求であり、それゆえ自由経済と競争の存在が前提となる。
一方で、経済効率追求は分配の公平性、平等性を犠牲とする。効率性と公平性の両者を統合する新しい経済理論が必要と主張する。
近代経済学者としては森嶋通夫、宇沢弘文、根岸隆の三人を高く評価する。戦後マルクス経済学者としては、有沢広巳、宇野理論の大内力、大河内一男、井汲卓一を評価する。
2018年中央公論特集「平成時代の100人」にある4人の経済学者を列挙、評価する。加藤寛、浜田宏一、自身の橘木俊詔、竹中平蔵である。
自身の評価は別として、竹中平蔵を経済学者と見なさず、政治の場における政策策定担当者と見なしている点は面白い。
著者が教授時代、雲の上の人・都留重人に話しかけられ、自己の研究課題に関心があると言われ、感激した思いなど良く理解できる。
経済学者の政策での貢献の方法、個々経済学者の業績の学問的評価も参考となる。経済学の在り方を問う意味でも楽しく読める本である。
