戦略を考える力と通す力が、同時に身につく「1枚のメモ」
石井賢介さんの「【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書」を、実務経験を踏まえて読み直すシリーズ。
第2章のテーマは、
「戦略の重要性を理解せよ!」
である。
この章で説明されている戦略の考え方には、私は全面的に同意している。
そのうえで、実際に戦略を考え、社内で承認を得てきた経験から、一つ追加したいことがある。
戦略を考え、他者に理解してもらうためのツールとして、
ワンページメモが非常に役に立った
ということだ。
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【戦略とは、限られた資源の使い道を選ぶこと】
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元記事では、戦略を、
「目的達成のために、リソースを何に使うかという選択」
と説明している。
達成したい目的がある。
しかし、使える人、予算、時間は限られている。
だから、何に資源を使うかを選ばなければならない。
この考え方には、まったく異論がない。
売上を伸ばす施策だけを考えれば、いくらでも思いつく。
広告を出す。
新商品を作る。
価格を変える。
販売チャネルを増やす。
Webサイトを改善する。
しかし、すべてを同時に高い水準で実行できる企業はほとんどない。
何かを選べば、何かを諦める必要がある。
戦略とは、やることを増やす作業ではない。
限られた資源を集中させるために、
何をやらないかを決める作業
でもある。
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【戦略は、考えただけでは通らない】
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ただし、実務では戦略を考えただけでは何も変わらない。
予算を承認する人。
商品を作る人。
営業する人。
現場で実行する人。
戦略を実現するには、多くの関係者に、
「なぜ今、この選択をする必要があるのか」
を理解してもらう必要がある。
正しい戦略を考えることと、その戦略を通すことは別の仕事である。
結論だけを伝えても、相手は判断できない。
何を目的としているのか。
現在どのような状況なのか。
なぜ別の選択肢ではなく、この戦略なのか。
戦略を実行すると、具体的に何をするのか。
これらを相手が判断できる形に整理して初めて、戦略は実行に近づく。
そのために役に立ったのが、ワンページメモだった。
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【P&Gで使われてきたワンページメモ】
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ワンページメモとは、目的、背景、提案、戦略、具体的な行動などを、一枚の資料にまとめる方法である。
P&Gでは、複雑な問題や提案を一枚に整理するワンページメモの文化が知られている。単に文章を短くするのではなく、目的や背景、戦略、実行内容を簡潔に整理し、相手が短時間で理解、判断できる状態をつくるための型である。
私が実務で使っていたものも、基本的な考え方は同じだった。
主に一枚の中に、
目的
背景・現状
戦略
具体的な行動
やらないこと
意思決定してほしいこと
をまとめていた。
特に優れていると感じたのは、目的と背景から説明する点である。
戦略だけを示されても、意思決定者は、
「なぜ、それを選ぶ必要があるのか」
を判断できない。
目的と背景を共有することで、現在どのような問題があり、なぜその戦略が重要なのかを理解してもらいやすくなる。
さらに、戦略と戦術をセットで示す。
戦略だけでは抽象的すぎる。
行動だけでは、なぜそれを実行するのか分からない。
何を選ぶかという戦略と、具体的に何をするかという戦術が一枚につながっていることで、意思決定者は判断しやすくなる。
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【ディズニーランドの例を一枚にする】
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元記事では、After5で恋人とディズニーランドに行く例が紹介されている。
使える時間は17時から閉園まで。
目的が「多くのアトラクションを楽しむこと」なら、絶叫系を優先する。
目的が「ロマンティックな時間を過ごし、仲を深めること」なら、パレードを優先する。
時間が限られているため、両方は選べない。
これをワンページメモにすると、次のようになる。
■目的
恋人と特別な時間を過ごし、仲を深める。
■背景
入園は17時で、閉園までの時間は限られている。
人気アトラクションとパレードの両立は難しい。
■戦略
アトラクションの数ではなく、二人で共有する特別な体験を優先する。
■具体的な行動
早い時間からパレードの鑑賞場所を確保する。
待ち時間は会話や食事に使う。
■やらないこと
人気アトラクションを何個も回る。
■意思決定
限られた時間を、アトラクションではなくパレード中心に使う。
一枚にすると、目的、戦略、行動、捨てるものの関係が明確になる。
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【一枚に収めること自体が、戦略的思考になる】
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ワンページメモは、他者を説得するためだけのツールではない。
自分の思考を整理するうえでも役に立つ。
一枚に収めようとすると、すべての情報を書くことはできない。
何が目的達成に必要なのか。
何が意思決定に影響するのか。
何は削っても問題ないのか。
を選ばなければならない。
削れないのは、重要な情報を自分でも判断できていないからである。
ワンページという限られた紙面の中で、何を残し、何を捨てるかを決める。
これは、限られた資源を何に使うかを決める戦略と同じ構造である。
戦略を考えるのが難しいと感じたら、まず一枚にまとめてみるといい。
ワンページメモは、戦略を考えやすくする。
他者にも説明しやすくする。
そして、何を残し、何を捨てるかを考えることで、
戦略的に考える力そのものを鍛えてくれる。
