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【短編小説】 まるいしるし

有料記事を書くなら、小説にしたいと思って
少しずつ育ててきました。

私の書いた物語が、誰かの元へ巣立っていく…
なんだかとても感慨深い気持ちです。

願わくば、私の言葉が、手に取ってくれたあなたの心にそっと寄り添える、そんな物語になりますように…

【小説の内容】
早期退職をして、これまで貯めた貯金と
退職金をベースに、飼い猫まるとひっそり暮らす50代の理子さん。
贅沢はできないけれど、その代わり手に入れた自由という名の幸せ…
誰の心にもきっとある、その人にとっての人生の正解を軸に、なんてことはない日常を優しいタッチで描いた癒し系小説です。



今日はきっと、いいお天気になりそう…


朝の光が、昨夜の雨に濡れた木の葉を照らして
キラキラと輝いている。


雨のしずくが、ベランダの手すりに連なって
まるで、ガラス玉のよう…


洗濯物を干すついでに、水滴を拭き取りながら
ベランダのお掃除をしようかな。


理子は、レースのカーテンを開けて
窓から入ってくる
朝の少しだけ冷たい空気を吸いながら
白い湯気の立つマグカップを両手で包み込んだ。


珈琲の香りが、ゆっくりと身体の奥へ沈んでいく。

時計はまだ、8時前。



会社に通っていた頃なら
もう電車の中で押しつぶされている時間だ。

あの頃は、本当に、車内でいつも気分が悪くなっていた…

人の匂い…それに、密接な空間…
本当に息苦しくなる。


涙が自然に滲んでいく自分をなだめながら
流れゆく窓の外を一生懸命に眺めて
頭の中を物理的に外へと連れ出していた。


……だけど、今は違う。


それだけで、胸の奥がふっと緩む。
そして、ほっと安心感がやって来る…

これは…この選択は
『逃げ…』ではなく、私は私を守ったのだ。
そう思うようにしている。

……かなり遅くなってしまったけれど

私の中の『否…』を
大切に掬いとることが出来たから
今はこうして
前だと思う方を向けているのだろう。

「……?」

「まるくん、おはよう」


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