2025/10/17 インスタグラムへ投稿した「あなたの生活」全文
今夜もなんだか忙しく過ぎて、後片付けの最中に思い出してました。先日の休みの日のこと。
所用で近所をほっつき歩く中、小さな公園を突っ切ろうと、すると右手側に植えられた広葉樹の、背丈より高いところの葉が変なふうにゆさゆさと揺れました。目を凝らすと深緑の葉に隠れてどうも子供が二人木に登っているのでした。立ち止まりなんとはなしにその様子を見ていたら、突然葉っぱの隙間から大量のシャボン玉が僕を目がけて飛んできたのです。ひとりの子が水鉄砲の一回りでかいようなものを操作していました。僕が昔膨らましていたそれとはまるで趣の違う、速攻シャボン玉量産タイプです。更にそれを続けて僕に向かって発射してきます。するともうひとりの子が「よーへーのかたきだ!」と叫びました。
「やられたー!」僕は声を上げ、その場に寝そべりながら、きっとどこかに居るよーへー君のことを考えました。僕の周りで七色の陽の光が弾けては落ち、僕はなんだかとてもいい気分で大の字になっていました。
よーへー君のことは身に覚えがありませんが、彼らとの戦いは放棄です。
ベンチに腰掛け、次にえじきになる者を暫く待っていました。
あそこに隠れている二人を眺め、幼い頃、原っぱに放置され傾いた物置や廃工場に忍び込んでは、勝手に秘密基地を創っていた自分を重ねると、あの頃の思い出はみな白黒で浮かんでくることに気付いたのです。
僕はいまだ飽きもせず秘密基地製作を繰り返し、見えないシャボン玉を四階の窓から飛ばしているのでしょう。
子供たちが木から降りてきて、佇む僕の前をギャハハと通り過ぎてゆきました。
僕はここ十日ばかり、毎日チョコレートケーキを作っていました。一見なんの変哲もないよくありそうなチョコレートのケーキ、実はなかなかにやっかいなつわもので、かなりの慎重さと手ぎわが求められる品です。そこにバーよかぜの「らしさ」をぎゅっと詰めてました。
これをお通しとしてお客さんにお出ししていたのですが、なぜかこの十日間は忙しく、沢山のお客さんにそのチョコレートケーキを召し上がってもらいました。僕もですけど、やっぱり皆さんもチョコレートは大好きなようです。
チョコクリームを最後までフォークできれいに拭ってもらった皿を何枚も洗いながら、たまたま来ちゃったのかもしれないけれど、こうして訪れてくれたお客さんの時間の中で僕の仕事は生きてくこと、改めてひとつ深呼吸して点検作業をするのです。
「このケーキにはどんなラムが合うの?」と訊かれたら、「あ、このグアテマラのラムを試してみませんか」と勧めます。それは穏やかに、それでも濃く香り立つラム酒です。
この時期は新宿通りに面した大きな窓を開け放ち夜を過ごします。通りが少し静かになる頃、こんな都会の中でも時折心地のよい風がひゅーっと入ってきては、そんなラム酒の香りをさらってゆきます。
In your life.
さて、後片付けもようやくやっつけ、そろそろ帰りましょっ。明日も仕込みがたっぷりです。
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