…青の余白 青の残酷な終焉に
青を切り落とすのではなく、青に残していく。

今、切り離そうと思ったからだ。
空の青も。
海の青も。
立ち止まったままの、夏の青も。
そして、心の奥にいまも佇む、あの日々の青も。
青は、いつだって優しかった。
遠くにあるものを、遠くのまま許してくれる色。
届かないものも、戻れない時間も、
青のなかに沈めておけば、少しだけ美しく見えたから。
だからこそ、そう思った。
青という名をつけて閉じ込めていた、すべてを。
あきらめきれなかった期待も。
拭えない寂しさも。
今にも消えそうな、いくつもの残り香も。
青く残酷に、それらをひとつずつ切り離していく。
刃が落ちる。
音は、なかった。
ただ胸の奥で、かすかな糸が静かに途切れた。
「さよなら」と告げるほど、大げさではない。
「忘れた」と笑うほど、強くもない。
ただ、そこにあったものを、
そこにあったままにしておくのをやめただけだ。
切り落としたのは、過去そのものではなかった。
過去を何度も振り返り、留まろうとしていた、
自分自身のほうだった。
そう気づいたとき、
それはもう、恐ろしい場所ではなくなっていた。
そこには、何も置かれていない。
ただの空っぽの台が、眩しい青の下に残されている。
ふと、見上げる。
空は、いまも青かった。
海も、変わらず青かった。
切り離したはずなのに、青は消えていない。
……いや。
消す必要など、最初からなかったのだ。
青は、記憶そのものではない。
青は、記憶をそっと置いていくための余白だったのだから。
だから今日、僕は青を切り離した。
青を失うためではなく、
その青の向こう側へ、一歩を踏み出すために。
そして、最後に残された透明な未来には、
何も書き足さなかった。
ただ、青だけを渡しておいた。

見つけてくれてありがとうございました
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