テイスティングは「習う」「記憶」「場数」
コーヒーのテイスティングを上達させるうえで大切なことは何か——。よく受けるこの質問ですが、私の経験から振り返ってみると、大きく3つのキーワードに集約されます。
それが「習う」「記憶」「場数」。今回は、私が実際に学んできた過程をもとに、それぞれのポイントをお伝えします。
1. 最も早いのは「習う」
やはりいちばん早いのは、「わかっている人に教えてもらいながら、実際に一緒に飲む」ことです。
テイスティングは味覚や嗅覚を使った行為なので、本やネットでの情報収集も有益ではありますが、どうしても限界があります。実際にコーヒーを飲みながら体験しないと、身になりにくいのです。
もちろん、ひとりでじっくりコーヒーを味わう時間も必要です。しかし、初心者のうちは特に「何をどう感じ取ればいいのかわからない」という状態になりがち。そこで頼りになるのが、経験豊富な人と一緒に飲んで意見を交わすことです。

「最初に酸味を強く感じるけど、これをどう表現する?」
「今、飲み込んだあと、後味に何を感じたか教えて?」
「液体の触感に集中して、もう一度飲んで表現して」
こうした具体的な問いかけ、質問、アドバイスをリアルタイムで受けながら体験していくと、自分では気づかなかった味わいや香りの特徴に気づきやすくなります。これはまさに「習う」という行為そのものなのです。
2. 「記憶」の引き出しを増やす
テイスティングは「センス」よりも「記憶」が大切——。スペシャルティコーヒーを学び始めた頃、私が熟練者から何度も言われたことです。

たとえば、あるコーヒーを飲んで「酸味は感じるけど、言葉にできない…」というとき、上級者が「甘みもしっかりあるのに、はじけるようなフレッシュな酸味がある。これはパッションフルーツみたいだね」と表現してくれたとします。
その瞬間、「あ、これがパッションフルーツのフレーバーなのか!」と脳内にイメージが焼き付くわけです。そして次に似た感覚を得たとき、「これはあのとき教えてもらったパッションフルーツのフレーバーだ」と思い出せるようになる。
つまり、テイスティングは自分の味覚と香りの“記憶データベース”を、何度も呼び起こして参照する作業だといえます。味を言葉にする引き出しを少しずつ増やしていくイメージですね。
3. 「場数」を踏む
テイスティングにおいて記憶が重要ならば、自然と“場数”を踏むことも欠かせません。
コーヒーの種類は無数にあり、1回飲めばわかるというわけではありません。私自身も、JBC(ジャパン バリスタ チャンピオンシップ)のジャッジや、長年のコーチ経験を通じて、さまざまなコーヒーを実際に飲み、比べる機会を多く得てきました。その積み重ねが、いまのベースになっていると感じています。

味わいの引き出しを増やすには、とにかく多様なコーヒーに触れることです。カッピング会やテイスティング会、さらには競技会の審査など、コーヒーを幅広く飲める場に積極的に足を運んでみましょう。場所を選ばず、いろいろな場数をこなすことで、自分の中に蓄積されていく“記憶”もより豊かになっていきます。
まとめ
テイスティングを上達させるうえで、大切なのは「習う」「記憶」「場数」の3つ。経験豊富な人のそばで実践的に学び、覚えた味わいの記憶データベースを積み重ね、さらに多様なコーヒーに触れて味の引き出しを増やすことが近道です。
皆さんも、ぜひこの3つを意識しながらコーヒーを味わってみてください。すると、同じ一杯のコーヒーでも、いままでとは違う発見や気づきがきっとあるはずです。
